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人を不安にさせるもの

人間は「不安」という感情を抱きます。
この不安は、時間的に「未来」に限られます。
過去に不安を抱く、ということはないですし、「今ここ」に不安を抱くこともないんです。
不安を抱くのはきまって未来、将来に対してです。

山奥に住む、とある少数民族の映像を見たことがあります。
自給自足で暮らし、主食は近くの川で獲れる魚。
網のような罠を仕掛け、それで魚を獲ります。
たくさん獲れても、今日食べる分だけを確保して、残りは川に逃がしてしまうのです。
レポーターは尋ねます。
「どうして逃がしてしまうのか?明日の分として保存食にしたりしないのか?」と。
彼らは今日食べる分だけあれば今日困らないから大丈夫だと答えます。
それは、乱獲により魚の数が減ってしまうという観点ではなく、今日、つまり今のことしか考えていないというのです。
そして、その民族の言語を調査したところ、明日や明後日など、未来を表す言葉が存在しなかったそうです。
彼らは、純粋に「いま」を生きていて、幸福だといいます。
未来を考えないから、心配や不安といった概念も気持ちもないのかもしれません。
計画性がないと言えばそうかもしれませんが、でも彼らは一日一日を助け合いながら楽しく幸せに生きているんです。

計画することと、将来を不安に思うことは違います。
明日のために今日準備が必要なら、当然そうすればいいのです。
それでも明日が不安なら、おそらく「いま準備できること」が不足しているのでしょう。
そして、いま、今日、やるべきことをやったなら、未来のことを不安に感じても仕方ないのです。
不安という「事態」がいま発生しているわけではないのですから。
ただそう「考えている」だけです。

スイスの法学者、文筆家のカール・ヒルティは言いました。
「人を不安にするものは事柄そのものではない。それに対する人の考えである。」

日本人は違う言い方をしました。
「明日は明日の風が吹く。」

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