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#ドラマ感想文 2024年4月期

今期は5本ものドラマを完走しました。
久しぶりに、何度も見返してしまうほどハマったドラマにも出会えました。


アンチヒーロー

「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます」
正しいことが正義かー
間違ったことが悪かー

型破りな弁護士・明墨正樹は犯罪者である証拠が揃っていても無罪を勝ち取る。明墨法律事務所に入所した正義感の強い若手弁護士・赤峰柊斗は、当初彼のやり方に反発するが、同僚弁護士・紫ノ宮飛鳥やパラリーガルの白木凛、青山憲治とともに裁判に取り組むうちに、明墨には真の目的があるのではないかと疑うようになる。

https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/

事前情報の段階から「絶対これ面白いやつ!」と確信していました。実際に視聴してみて、「こういうドラマを見たかったんだ!」のど真中を貫通されました。
見ごたえのある法廷バトル。360度隙のない最強無敵の主人公。ドラマの雰囲気にパーフェクトに合っている、胸をかきむしられるような切ない主題歌。
何よりも良いのは、主人公の明墨弁護士がちゃんと「悪」なところです。
Ep.2のラスト、明墨たちが無罪を勝ち取った元・被告人が実は本当に殺人犯だった、と明らかになる場面にはゾクゾクしました。
出し抜かれたと見せかけて巨悪を罠に嵌めるEp.3も痛快でした。

讃美歌を思わせる、宗教的な雰囲気のあるBGM。
劇中、明墨は何度も天を仰ぎます。
まるで天に在る何者か(神? それとも…)に許しを乞うているかのように。

重い宿命を背負ったトリックスター明墨。Ep.3までで、つかみはばっちりです。複雑な内面を持つ魅力的な主人公がしっかり確立されています。
もしこれがアメリカのドラマなら。
20話×2~3シーズンぐらいで、明墨のトリッキーな法廷バトルを楽しみつつ少しずつ本筋が進んで、最後にラスボス・伊達原検事正との激突、となるところですが。
あいにく日本のドラマは10話でストーリーを畳まなければならないので、Ep.4ぐらいから早くも、「明墨は見かけほど悪い人間ではないかもしれない」という匂わせが始まります。「彼には真の目的があるのだ」と。
ダークヒーローが「本当は良い人だったのだ」という展開ほど興醒めなものはありません。いや、ラストはそれでも構いませんが。それまでにヒーローの容赦ないワルぶりをもうちょっと堪能させてほしかった。
明墨の手練手管も、キレッキレだったのはEp.3までで、Ep.4以降は若干無理やり感が漂うものになります。

明墨の真の目的は、検事だった頃に自ら有罪に陥れた死刑囚・志水の冤罪を晴らすことでした。
若き日の明墨が志水を激しく追い込む回想シーン。現在の明墨の後悔の深さが想像できて、胸が痛くなります。

EP.10で、このドラマは感動的な結末を迎えます。志水は釈放され、一人娘と数年ぶりの再会を果たします。
その場面の美しさに、うっかりごまかされそうになりますが――よく考えてみると明墨は最後まで、「正義」なんかではありませんでした。
伊達原検事正を追い落とした最後の一手も、正当とはほど遠いものです。
汚い手を使って、美しい結末をもぎ取ったのです。

EP.2かEp.3あたりで、明墨は部下の赤峰弁護士に告げます。
「君は君の正義を貫けばいい。私は私の道を行く」
自分が正義であるとは、ひとことも言っていません。
それどころか、終盤で伊達原に「ヒーローにでもなりたかったのか」と問われ、明確に否定します。

明墨の望みは、盟友・桃瀬の残した願いをつなぐこと。
犯してしまった途方もない過ちを正すこと。
そしておそらく、伊達原と「共に地獄に落ちる」こと、だったのでしょう。二人が似た者同士であることは、明墨も伊達原も認めています。

拘留されている明墨を赤峰が訪ねるラストシーンは秀逸です。初めは明墨のやり方に疑問を抱き、反発していた正義感の強い赤峰が、いつしか明墨に似てきて、最後には、ドラマのオープニングで明墨が発したのとまったく同じセリフを吐きます。
「私が、あなたを無罪にしてさしあげます」と。
そのセリフを聞いたときの、明墨の〈闇の道化師〉的な歪んだ笑みが印象的でした。
ウェルカム・トゥ・ザ・ダークサイド、とでも言わんばかりの。

「君の大切な人が、武器を持った賊に殺されそうになっている。君の手にはナイフがある。君は、その賊を殺すか?」

作品中で二回繰り返された、その問い。
正義を信じていた(たとえ誤った正義であっても)、検事時代の明墨には答えられませんでした。しかし赤峰は初めからYesと即答します。なんの迷いもなく。
正当防衛が認められれば違法性が阻却され、賊を殺す行為は犯罪ではなくなります。しかし、一個人が「自分にとってどちらの命が大切か」という選別を行い、恣意的にひとつの命を奪う行為は、正しいといえるでしょうか?
その選別をためらわない。赤峰はそういう男として描かれています。

だからこの物語は、赤峰の「アンチヒーロー」としての覚醒の物語だったのかもしれません。明墨の背中を見て学び、やがて明墨を超えていく存在としての。


続編を見たい気もしますが、ない方がいいような気もします。光と闇の狭間に立っていた明墨のように、すべて曖昧なままのほうがいい。


ダブルチート 偽りの警官 SEASON 1

交番勤務の警察官・多家良啓介は、とある商店街の交番に勤める真面目で頼られる存在。しかし、多家良には誰も知らない過去と裏の顔が…。それは法では裁けない相手ばかりを狙う“詐欺師K”―!かつての多家良はとある大物詐欺師を追う捜査二課の刑事だった。彼は、なぜ警察官でありながら詐欺師の仮面をかぶることになったのか⁉その裏に隠された過去とは?法を超えて悪人を欺き、身内となる警察をも欺く多家良の真の目的とは…。

テレ東

詐欺師ばかりを専門に狙う超・凄腕の詐欺師。だまし取ったお金は被害者に返してやる……とくれば、もはや完全に『クロサギ』ですね。しかし、たとえ既視感のある設定であっても、この設定で面白くならないはずがありません。
そこへもってきて、主人公・多家良は颯爽としていてなかなかカッコいい。詐欺の手口もスマートだし、中国語をペラペラ喋ってみせるなど見せ場もある。
それなのに――このドラマを見るたびに、なぜか毎回寝落ちしてしまい、最後まで見るのが大変でした。

何がいけないのでしょう?

①演出やBGMが古臭い。まるでお年寄り向けの番組のよう。
まあ、好みの問題、と言われればそうなのですが。
レストランの話など、人情ベタベタのエピソードには閉口しました。そこへ、詐欺の本筋とは関係のない、女刑事の別の人情エピソードまで加わるので、さらに眠気をそそります。
コンゲームはもっとドライ&スマートにやってほしかった……。
多家良と相棒がしゃれた軽口を叩きながら作戦を進めてくれたりしたら最高だったのですが。

②主人公が警官であるという設定がまったく生かされていない。
正体がバレるかも、というドキドキをうまく生かせば、いくらでも面白くできたはずなのですが。単に「交番勤務の合間を縫って詐欺にいそしむ詐欺師」ぐらいになってしまっていて、サスペンス感がほとんどありませんでした。
そもそも、刑事をやめた主人公がなぜ詐欺師になったのかも、きちんと説明されていません。宿敵・ヤマガミの情報を集めやすくするため、ということかもしれませんが……説明は欲しかったです。

③ヒロインの女刑事は不要では?
このドラマでは、キャラが立っているのが主人公と相棒、ヤマガミと麻美ぐらいで、それ以外のレギュラー脇役にはあまり人間味を感じませんでした。個性が乏しく、まるで記号です。
ヒロイン(?)である女刑事・ひかりには「元銀行員で計算が速い」「正義感が強い」という設定がありますが、いかにも類型的で、記号の域を出ていません。彼女にキャラクターとしての魅力がないので、彼女の登場場面がすべて無駄だと感じられてしまいます。
このキャラは、別にいなくてもよかったんじゃないのかな……。
どうしても女性キャラを出したかったのなら、麻美の出番を増やせばよかったのに、と思います。麻美は良いキャラですし、ヤマガミとの関係にもそそるものがありますので、その描写をもっと深めてほしかったと思います。彼らの扱いが軽かったのはもったいなかったです。


Re:リベンジ

週刊紙記者の天堂海斗は日本有数の大病院「天堂記念病院」の理事長の息子だった。しかし父・智信とは不仲であり、医師を継がず週刊誌の記者になった。
ある日、恋人にプロポーズをしようとした際、父が事件に遭遇したことを知り、天堂記念病院に赴くことに。海斗はこの事件をきっかけに父の真意を知り、昔の大切な約束を思い出す。しかし、天堂記念病院は問題山積であり、ポスト理事長を巡る権力争いなども発生していた。
海斗は父が築いた大切なモノを天堂記念病院から救い出すため、権力争いと対峙し、奮闘する。

Wikipedia

かなりの意欲作でした! びっくり!

前半は、大病院・天堂記念病院の理事長の座をめぐるドロドロの争い。後半は、理事長の座に就いた主人公が保身のために次々と手を汚し、闇堕ちしていく展開。
終盤の主人公は、同情すべきところが全然なく、かと言って振り切った悪の魅力もなくて、実に共感しづらいクソ野郎です。
ところが最終話で、主人公は、それまでずっと対立していたエリート心臓外科医・大友と手を組んで、真の悪である会長を病院から追放します。ライバル同士の突然の共闘はなかなか胸アツです。憑きものが落ちたかのように元の好青年に戻った主人公は、病院を手放し、再び記者として働き始める――という、なんか良い感じの終わり方でした。

視聴していて、ツッコみたい箇所は多々あったのです。

「リベンジ(復讐)」というタイトルの割に、主人公の父親を殺した犯人の件が、さらっと流されすぎている気がしました。主人公は犯人よりも、ライバルの大友医師にばかり敵愾心を燃やしているように見えたので。「リベンジ」なら、父親を殺した下手人との対決をもっと盛り上げるべきなのでは?

また、ヒロインに全然好感が持てないという問題がありました。難病の妹を救うためだとしても、ヒロインは自分の目的のために平気で「女」を利用する人物です。
Ep.1で、主人公が婚約者である自分を家族に紹介してくれないことを、彼女がなじるシーンがあります。その怒りは唐突であり、彼女が大病院のオーナー一族に食い込みたがっているようにしか見えません。また、主人公が失踪すると、さっさと見切りをつけて大友医師に乗り換えます。どう言い訳しようとも、明らかに打算的な振舞いです。
彼女が妹の死について主人公を責め立てる展開は、どちらにも共感できず、見ていて困惑しました。

しかし、胸にくすぶっていた様々な不満も。
ラストシーンですべて吹き飛びました。

本当に、見事などんでん返し。完全にだまされました!

いやぁ……そりゃそうだよな。盛り上げるために無理やりこじつけた結末ではなく、それまでの各人物の動きからして、完全に納得のいくエンディング。
この物語はつまり、主人公の「リベンジ」ではなかった、ということです。


Destiny

大学時代に起きたある事件と対峙し、父親の死の真相や大学時代の仲間の秘密の顔などさまざまな過去と向き合っていく女性検事の姿を描く、20年の時をかけたサスペンスラブストーリー。

物語が丁寧に紡がれていくし、ヒロインの造形にも好感が持てる。それなのに不思議なほど、第一話から、続きが気にならなかったドラマでした。最後まで完走できたのは単に、同居人が見ていたからです。
まあ、私が「ラブサスペンスをそれほど好きじゃない」というだけの理由なのですが。

【良かったところ】
・大学時代の「軽々しい恋愛」の雰囲気がリアルに再現されていると感じました。そう、大学生の頃ってこんな感じだよな、みたいな。
・脚本家の方が、この作品で描きたかった場面は、放火犯として逮捕されたヒーローと担当検事のヒロインが対峙するシーンだ、と語っておられるのをどこかで読みましたが。確かにそのシーンはドラマチックで見ごたえがありました。相手への想いを断ち切れない二人の探り合い、揺さぶり合い。揺れる心の吐露。とつぜん検事としての顔に戻って鋭い質問を投げ込むヒロイン。緊迫感あふれる駆け引きが、「知り合いであると周囲にバレてはいけない」という制約の中で行われ、スリリングです。このシーンのためのドラマだったとさえ言えるかもしれません。

【イマイチだったところ】
・登場シーンでいきなり「(カンニングをしたいから)おまえの答案を見せてくれ」と囁いてくるヒーローに好感が持てません。大学時代の彼は、チャラくて軽い、不真面目な遊び人。20年たって再会しても、ほとんど大人になっておらず、身勝手で短絡的な男のままです。「ヒロインはこの男のどこが良かったの?(顔以外に)」という重大な疑問が、物語への没入を妨げます。
・意味ありげな雰囲気で、さまざまな謎が提示されますが。明らかになる真相がどれもショボく、想定の範囲内で、「え、それだけのことだったの?」とがっかりさせられるものだったので、見終えた後の期待外れ感がすごかったです。視聴者の予想を上回る驚きの結末を、きちんと説得力と整合性をもって提示してほしかったです。


Believe -君にかける橋-

橋づくりに情熱を燃やす大手ゼネコン「帝和建設」の土木設計部長・狩山陸は、東京都が心血を注ぐ一大プロジェクトに従事。多くの人の夢を乗せた「龍神大橋」を完成させるため、数年にわたる奮闘の日々を送ってきた。ところがある日、龍神大橋の建設現場で、大人数を巻き込む事故が発生してしまう!一体なぜ、こんな大惨事が起こってしまったのか…。万全の注意を払って橋を設計した狩山が言葉を失う中、事態はさらに予期せぬ方向へと舵を切り始める。謎多き事故の真相を追い求め、すさまじい執念で捜査を開始する警視庁捜査一課の刑事・黒木正興。さらに、狩山と妻・玲子--すれ違い、距離が生まれてしまっていた夫婦にも、想像を絶する非情な運命が襲いかかり…!各所で得体の知れない“何か”がうごめき出し、激動の渦に飲み込まれていく狩山。そんな中、彼が見つけ出す希望と再生の道、最終的にたどりつく場所とは一体…!?

TELASA

第1話で主人公の好感度がゼロを通り越してマイナスまで落ちたので、このドラマは視聴を切るつもりだったのです。

『Believe』第1話は何がいけなかったのか(私見です。Believeは好きだったよ、という方はこの先を読まないことをお勧めします)

冒頭の妻とのやり取りで「器のちっちゃなクソ野郎」感が強く印象づけられました。スーツケースに荷物を詰めている妻に向かって、旅行だなんて良い身分だな、俺は仕事が大変なのに、みたいなイヤミとグチを言い放つ。二人は歯磨きも別々に使うほど関係が冷えていて、主人公は「俺の歯磨きを勝手に使っただろう」と妻をなじるほどセコい奴です(「細かいわね」と言われて「緻密なんだ」と主人公は言い返しますが。細かい点にまで目が行く主人公を描写するにしても、このやり方はまずかったと思います。この場面だけでもう、嫌な男にしか見えなくなったので)。
しかも、このときの妻の荷造りは検査入院のためであったことが後で明かされますので――本当に、主人公の浅はかさが際立ちます。彼のいきなりのイヤミのせいで、妻は自分の病を打ち明けるタイミングを失ったのですから。
そして、この場面に続く「主人公のお仕事」シーンで、いきなり現場の責任者と腕相撲を始めてしまう主人公。周囲の作業員たちもはやし立てていますが。見ていてイタすぎてしんどくなりました。現代の建築現場って本当にこんな雰囲気なんですか? 「腕力がすべて」みたいな? あまり説得力のある場面だとは感じなかったのですが?
その後のオフィスのシーンで、若い男女の部下とのカラみ方、軽口の応酬もキモチ悪く感じました。「フランクで、部下にも慕われている主人公」を表現したかったのかもしれませんが、もうちょっとナチュラルに演出してほしかったです。

主人公を「橋オタク」に設定するのは良いです。「橋のことになると周囲が見えなくなる」も悪くはありません。しかし主人公が50歳の会社員設定である以上、「それ以外の点ではまとも」でなければならないと思います。だからこそオタクぶりが映えるのですから。
見せ場としてどうしても腕相撲のシーンを入れたかったのなら、勝負を挑むのは現場監督からにすべきでした。率先して「腕相撲しましょう」と言い出す主人公は、ただの痛い人にしか見えません。わざと負けて盛り上げ、現場の雰囲気を良くするという深慮遠謀があったのだ、という描き方をされていますが――そもそも彼は「計算づくで動く」「先のことまで見通す」などという芸当ができるキャラではありませんよね、後の展開を見ても? ここにだけ無理やり深慮遠謀描写を入れても、不自然なだけです。

刑務所内でも。木工作業で、緻密な設計と建築の技を発揮してすばらしい模型を作り上げ、他の受刑者の称賛を浴びる、という辺りは良かったです。手先の器用な建築士ならそういうこともあるだろう、という納得感があります。いじめられている他の受刑者を守るため、知恵を発揮する場面も良かったです。しかし、違和感を覚えずに見ていられた主人公アゲはここまででした。
ダメだったのは、余計なことをするなと凄む他の受刑者に向かって「そちらこそ気をつけてください。あなたたちに怪我をさせたくないんです」と言い放つところです。
いくら鍛えていたとしても主人公は50歳のホワイトカラーです。暴力のプロたちを相手に、それはないでしょう?
その後の展開で「主人公は腕力も強い」設定はほとんど使われていないので、これは非現実的であるだけでなく無駄な主人公アゲでした。「脅しに屈するつもりはない」みたいなことを言い切るだけでよかったのに。

ところが、見ているうちにだんだん面白くなってきました。

同居人と一緒になんとなく見ていると、刑務所編、脱獄編、逃亡編がとても楽しかったのです。ボケたフリをして脱獄を図るしぶとい老囚人とか、わかりやすく裏切る同房の囚人、なんだかんだ言って主人公を一人で逃がしてくれる同房の囚人などが面白い! 敵と思われた人物が意外とイイ奴だとか、良い人に見えた人物がことごとく裏切ったりとか、二転三転する展開に惹きつけられます。

肩をそびやかしてイキりまくっているサラリーマン姿は見るに堪えませんでしたが、みすぼらしい服装をして逃げ回るキムタクは、年齢なりの味わいがあって、愛せると感じました。

ストーリー自体は、主人公の逃走と共に最初の事件の謎がどんどん深まっていく構成になっていて、悪くありませんでした。途中で刑事と手を組む流れも、なかなかの胸アツ。なんだかんだ言われながら巻き込まれる刑事の相棒の女刑事も良い味を出しています。「脱獄犯」ということで行動に制約が多い主人公に代わって、妻が調査に乗り出し、ストーリーをうまく進めています。

最終話には、大きく広げた風呂敷をあわてて雑に畳んだような物足りなさを感じました。いきなり、再審が終わって刑務所に入れられた社長と主人公の面会シーンまで進むのは、いろいろぶっ飛ばし過ぎです。「なぜ橋を壊したのか」というのが本作の最大の謎であったはずなのに、主人公と社長の会話だけで答え合わせを済ませてしまうのはあんまりだと思いました。

しかし、たぶんこのドラマは、サスペンスが主眼じゃないのです。
サブタイトルが「君にかける橋」ですから。
これは夫婦関係の再生の物語だったのでしょう。全体のバランスを崩してでも、第8話をまるまる夫婦の会話に充てたところからも、そのことがうかがえます。

哀しく、儚く、それでいて未来への希望を感じさせるエンディングは、深い余韻を残しました。
第1話だけで視聴を切ってしまわなくてよかったです。


おまけ・夏クールについて

今の時点では『笑うマトリョーシカ』と『降り積もれ孤独な死よ』を見ています。
『降り積もれ~』はうっかり原作のWeb公開分を読んでしまったのですが。ドラマはオリジナルストーリーだそうですので、予想を裏切られる展開を楽しみにしています。

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