#ドラマ感想文 2024年1月期
惹きつけられたドラマが1本もなかった冬枯れの2023年10月期を越えて。
今年の冬ドラマには、久しぶりにワクワクさせてもらえました。
グレイトギフト
病院が舞台で、登場人物の大部分が医療従事者なのに、やっていることはまさかの殺し合い。「ギフトを贈ろう」という軽やかなセリフと共に、院内を飛び交う殺人球菌(笑)。
きちんとセリフもあってキャラも設定されているネームドキャラが、ざくざくと使い捨てられ、毎週のように死んでいきます。誰も死なない週の方が珍しいぐらいです。この感じ、まるであの『鎌倉殿』中盤のようです。
おまけに、登場する人物がどいつもこいつも曲者揃い。出世欲や金銭欲や色欲。誰もが気持ちいいほど己の欲望に正直です。そんな人たちが次々と現れては、自分のルールに従ってつき進むので、物語は二転三転し、先が読めません。
主人公とヒロインしかまともな人間がいません。イカれた人たちが気軽に邪魔者の命を奪おうとする、バトルロワイヤル展開のどぎつさをやわらげようとするのか、ところどころ軽いお笑い要素が差し込まれます。「私は間違っていますか?」という理事長のセリフに対し、いい年した大人たちが「白鳥理事長のおっしゃる通りです」と唱和するところとか。「真の皇帝」というパワーワードとか。
殺人球菌「ギフト」を使って大勢の人を殺してきた理事長が、逮捕される直前、難病の少女を救うためにメスをふるいます(最終回にして初めて登場する、医療ドラマらしい手術シーンです)。手術後、礼を言う少女の親(刑事)に対して、「ありがとうって言ってもらえるだけで、昔は十分だったんですけどね」と理事長が返します。
いつの間にかそれだけでは足りなくなってしまった。志を持って医療に従事していたはずの、一流の技術を持つ医師が。人の道を踏み外してでも、高みへ登りたいと願ってしまった。
人を欲望に狂わせてしまうのが「ギフト」の恐ろしさなのだ、ということなのかもしれませんが。敗北したラスボスの最後のセリフとして秀逸だと思いました。
主人公とヒロインとの恋愛要素が「ほんのり」程度で終わり、二人がバディとして別れたのも、とても良かったです。
消せない「私」-復讐の連鎖-
非力な普通の少女が、工夫して敵を追いつめ、破滅させていく――という展開は大好物なので(昔、自分でもそういう感じの小説を書いたことがあります)、このドラマはどストライクでした。
ヒロインの復讐ぶりが実に見事! 「いったん幸福の絶頂にまで持ち上げてからどん底へ叩き落す。それが私の復讐」と宣言し、その言葉通り、三人の元同級生を着実に仕留めていきます。婚活やホストなど現代的な要素が盛り込まれた復讐の道程は、華やかで見ごたえがあります。
ヒロインがこの同級生たちにされたことを考えれば、彼女の復讐には十分な正当性があります。「これはオーバーキルでは?」と首をひねることなく、素直にヒロインを応援することができます。
最後の敵である、本当にゲスな動画配信者との対決。ヒロインはどうするのかな?と思っていたら、まったく手をゆるめることなく、ばっちり仕留めました。元同級生たちは破滅させるだけで終わったのに、動画配信者については実際に手を下して殺害したのです。
ヒロインに殺しをさせるなんて、すごいなこのドラマ……。深夜枠だからできるのかな……。まあ、全然嫌いじゃありませんが。
ヒロインは、決して消えることのないデジタルタトゥーに苦しんでいました。ネットにばらまかれた無残な動画、根も葉もない噂は、年月がたっても消えることはありません。
PCやスマホの画面の向こうで、他人の不幸を無責任に面白がっている「おまえたち」もみんな加害者だ、とヒロインは糾弾します。
――そんな連中をみんな私が殺しに行く。
ネット上で誹謗中傷などしていたら「灰原硝子が殺しに来るぞ」。そんな風に囁かれる都市伝説的な存在として、永遠に人の記憶に残り続けることを、ヒロインは選択します。どうせデジタルタトゥーが消せないのであれば。
予想の斜め上を行く落としどころでしたが、きれいな終わり方だと思いました。
正直不動産2
超イケメンアイドルとしての気負いや気取りなど欠片もなく、山下智久がコミカルへ振り切って演じているのが立派だなーと感じました。
このシリーズの物語の基本は「何か事情があって困りごとを抱えている人が登場する」→「色々あって、その困りごとが解決する」というパターンです。たいていは、主人公とその仲間たちの活躍によって困りごとが解決します。
そのはずです。
シーズン1は未視聴なのでわかりませんが、このシーズン2について言えば、ときどき脚本が破綻していると感じました。カギとなるシチュエーションが後付けで出てきたり、説明不足だったり、「何か良い感じにまとめてるけど、その提案では、けっきょく問題の解決になってないよね?」とツッコまずにいられないことが多々ありました。
不動産取引についていろいろ知ることができ、ためになるドラマではありましたが、それはそれとしてストーリーは結構ぐだぐだでした。
それでも楽しく視聴することができたのは。
レギュラーキャラがみんな、しっかりキャラ立ちしており、魅力的だったからというのもあります。エキセントリックなライバルや面倒くさい後輩が良いアクセントになっており、人間模様を見ているだけでも楽しめました。
また、「問題解決」という点では筋が通っていなかったり、おかしなところがたくさんありましたが、「人間ドラマ」としてはきちんとしていました。クライマックスへ至る心情の流れがスムーズで、文句なしに感動できました。
シーズン3を待ちたいと思います!
院内警察
たぶん私が『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』のイメージを引きずっていたのがいけなかったのだと思います。桐谷健太が刑事、というだけで、「難しいことを考えるのが苦手な野獣系の熱血刑事に違いない」と思い込んでしまいました(いや、実を言うと、『ケイジと~』もちゃんと見たわけではないのですが)。この『院内警察』も、どうせ、年配の視聴者のウケを狙った、人情物語に重きを置いたライトミステリーなのではないか、と。
実際、最初の方は、そんな感じのエピソードが続きました。病院内で起きる、事件ともいえないようなマイナートラブルを解決する、というものです(このへんで、あやうく視聴を切りかけました)。
まさか、そこに伏線が仕込んであったとは、思いもしなかったのです。
細部まで注意を払って観ないといけないようなドラマだとは思っていませんでした。
後から振り返ってみると、最初の頃のぐだぐだなエピソードにもちゃんと意味があったのです。
しかし、私もいけませんが、ドラマのシリーズ構成も良くなかったと思います。視聴者の真剣な考察を促すような造りにはなっていませんでした。
シリーズ全体のストーリーの進行がもたもたしていて、無駄が多かったと思います。
武良井刑事と榊原医師の過去や、秘めた思いが明らかになり始めるシリーズ中盤から、面白味がぐっと増します。この面白味をもっと序盤から見せてほしかったです。
たとえ必要な伏線・エピソードであったとしても、「病院で幽霊を見た」だの「わがままな患者に振り回される医師」だの、日常回に尺を取り過ぎでした。このあたりはさくっとまとめて、メインキャラ二人の対立やラスボスへの道筋に時間をかけてほしかったです。
難病の少女のエピソードにも時間をかけ過ぎでした。中だるみを感じました。
対立していた二人が手を組んで共通の敵に立ち向かう、という展開はお約束ですが、それでもやっぱり胸アツでした。
二人を取り囲む周囲の人々のキャラクターも良く、楽しく視聴することができました。続編があったら見ます。
おまけ・春クールについて
ずっと忙しかったので、じっくりテレビを見ている時間がとれず、「面白そうだな~」と思うドラマはすべて後回しにしています。『アンチヒーロー』とか『ダブルチート』とか『Re: リベンジ』とか。
この連休に、動画配信サイトでまとめてチェックする予定です。
流し見する程度でいいかな、というドラマはいくつか見始めましたが。
▶『イップス』>倒叙ミステリーなのに、肝心のミステリー部分が弱すぎる。
▶『Believe-君にかける橋-』>主人公夫婦のキャラ設定とキャラの立て方が気持ち悪い。
というわけで、いずれも1話で離脱決定です。
『岸辺露伴は動かない』の新作が楽しみです!
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