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祝辞
船出の朝。
あなたたちはこの3年間で作った立派な舟を携え、この広い海へ出ていく。
舟に乗るあなたたちは今様々な思いを抱えていることでしょう。
これからへの期待、不安、別れへの寂しさ、開放感、高揚感、はたまたその全て。
それぞれの思いを抱え、あなたたちはこの広い海に漕ぎ出す。
これからはこの海で様々なことを自分自身で考え、選択していかなければならない。
海は流れを止めてくれない。
波に乗り、風に乗り、どこまでも遠くに進めることもあれば、全てが凪いだ海の真ん中で途方もなく空を見上げるだけの日々もあるだろう。
吹き荒れる風雨の中、それでも前に進まないといけない時だってきっとある。
あなたたちが作った舟は、その都度ささくれ、色褪せながら、それでもあなたたちを乗せて進んでいく。
あなたたちはその中で舟の乗り方を学ぶ。時に笑い、時に怒り、時に泣きながら、それでも前に進む方法を知っていく。
残念ながら世界はそこまで美しくない。
私があなたたちぐらいの頃、きっと世界には確固たる正義があって、世界は選択を間違えることなく、正しく存在するものだと信じていた。
だが実際の世界は、あなたたちがまっさらな希望を持って生きていけるような、できたものではない。
私もそれに気づいたのはつい最近のことだ。
これは私たち大人の責任だ。
あなたたちが手放しに希望を抱いていけない世界を変えられていないことを申し訳なく思う。
でもそんな世界で、あなたたちは選択し、生きていく。
だから知らなくてはならない。世界では何が起きていて、自分にとってなにが大切か。
知識や経験は、世界を知るための道具となる。
それはまた、あなたたちの助けとなる。
世界は必ずしも美しくはない。
だけど美しいと思える瞬間はたくさんある。
その瞬間を逃さないために、自分を大丈夫にさせてくれるものに触れてほしい。
人でもいい、ものでもいい、なんでもいい。
あなたたちが愛すことができ、またあなたたちを愛してくれるものたちにたくさん出会ってほしい。
それはまた、あなたたちを救ってくれる。
苦しい時、顔も上げられない、もうこれ以上前に進むことができない、そんな時も、時間をかけてでもきっとあなたたちを大丈夫にしてくれる。
あなたたちの傍から離れたこの1年間、あなたたちとの思い出やあなたたちがくれたたくさんの言葉が、何度も私を大丈夫にしてくれた。
あなたたちは希望だ。
私にとっての希望だ。
もしもこの瞬間、心が絶望に満ち、これから先のことも考えられずに蹲ることしかできなくなっていたとしても。
あなたたちは希望だ。
波に乗って、風に乗って、これからどこまでも進んでいけ。
この3年間のことなんて過去にして、どこまでもどこまでも進んでいけ。
いくら思い出さなくなろうと、いくら記憶が色褪せようと、この3年間で得たものは消えない。無駄なことなんて一つもない。
それは確かにあなたたちの舟を頑丈にし、色を添えた。
それは確かにあなたたちの中に残り続ける。
あなたたちはどこまでも行ける。
波がなかろうが風がなかろうが、前に進む力があることを私は知っている。
先が見えない夜に閉じ込められても、光を見つけることができる力があなたたちにはある。
夜の闇は絶望ではない。夜だからこそ感じる光もある。
届かなくていい。忘れてくれていい。
でもあなたたちの力を信じる人間がここにいる。
あなたたちと出会い、その旅立ちを祝えることを私は心から幸せに思う。
卒業おめでとう。
あなたたちの行く先が希望に満ち溢れていますように。
愛すべき教え子たちの新たな船出の朝に
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