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遊びの社会学・実践記録No.3 -おもちゃとは何か-後編

結局1週間経ってしまった。
すぐに書かないと、あっという間に時間が経ってしまう。
反省。

おもちゃの二重性

「遊んでいる」という現象は何に支えられているのかというお話し。

作田啓一『三次元の人間』行路社 1995年
(この本紹介しようと思ったら絶版だった…)

「同じものを見ているにもかかわらず、それが違ったふうに見える。
つまりわれわれはそのときに二つの視覚の動きをもって同じ風景を見ている。
その二重性が感動を引き起こすのではないか」

ちょうどこの講義の前日に息子とお風呂で100まで数えるということをやってみたが、正直ただ空で数えるだけでは飽きる。
というか、私が飽きた。
飽きたところで、世界のナベアツが3がつく時と3の倍数の時だけアホになって数を数えるというネタを思い出し、お風呂から出てyoutubeで見てみた。
本当に本当に単純な仕掛けなのだが、30の位の時は爆笑。

久しぶりに見ながら、いつも見えている数字が別の視点を持ったときにこんなに面白い!ってまさにコレだなと思った。

と、学生にこの話をしたのだが
誰も世界のナベアツを知らなかったので、「ふーん」という感じで流れてしまった。
動画を用意しておけばよかった。
お笑いとはまさに、この視点がズレることで面白さが生まれているということもまた話したい。
色々問題があったコンビだがアンジャッシュのネタはまさにこの2つの視点が同時進行している良い例だと思う。

というような話から、
息子が石を食べ物に見立てて、口に入れようとするが入れないビデオを見せた。
1歳の時の動画だが、この二重性を1歳の頃から獲得して人は遊んでいるということがわかり、
泥団子を泥団子とする世界と、これを食事とする世界があるということや
別の世界を入れるとおかしなことになるよねと話すと笑いが起きた。
つまり、おかしなことなのだけれど、すごく無意識に遊んでいるということが伝わったようだった。

所有するということ

これまではおもちゃで遊ぶということがメインだったが、少し話を広げておもちゃを「所有する」ということについて考えてみた。
まずは「所有している」という状況はどういうことか、本当に短く1分ぐらい考えてもらった。
本当はグループになって考える時間を持ちたかったが、今後の講義のことを考えると、おもちゃのことはここで一度終わりにしておきたい。すると、今日は時間がない!…
ここの時間配分は、今後要検討。

「所有」という出来事は、「内と外」「自と他」、これ以上侵入されない境界線を引く作業
つまり、世界の中に自分を位置付ける作業であるということ。

さらに、この話を聞いて、自我が芽生えてきた幼児に対して
一生懸命遊んでいるものや大事にしているおもちゃを

「貸してあげなさい」

という躾はどう思うかということを投げかけてみた。
そうすると顔から「うーん、それはちょっと良くないかも」という表情が出てきたように思う。

ここも要時間配分で、これから親になるであろう学生にぜひ深く考えてもらいたい。
そもそも自我が定まらないのに「『私のものを』貸してあげる」という行為が、優しさや他人の気持ちを思いやるというところから出てくる行為とは結びつかないわけで、それを機械的に「躾」という形で教え込むというのは本当に躾と言えるのか。
そんなことを議論できたら良いなと思ったりした。

イメージの消費

所有するというときに、「このおもちゃで遊びたい」というものと
私とあなたは違うというイメージを買うという場合の違いの話。
多くの人が持っているiPhoneケース。
同じ機能を持っているが、大量に並べられていて自分のイメージあったものを選ぶ。
LINEのスタンプも自分のキャラにあったキャラクターを選んで、無味無臭のものを自分らしくカスタマイズしようとして消費・所有する。
これは機能を所有したいのではなく、イメージが消費されている。
しかし、これは商品の選択の余地を出ていない。
最後に東浩紀の

「コピーをコピーのままでオリジナルにすること、これがキャラクター文化の核にある欲望」

というのを紹介してTime UP。

所感

予定を気にして、一気に90分喋ってという感じだったので、
あぁここはもう少し学生同士で考えて欲しいのに、というポイントが何箇所もあり、ちょっと勿体無いなというのが正直なところ。

しかし、「おもちゃを貸してあげなさい」と自我の発達の関係の話はノートにメモをする人が多く、心に留めておきたいと思ってくれた学生が多かったようでよかった。

子どもが遊ぶということと、大人がどうやってそれを見るかということを投げかけておくということは、これからの将来を考えると大事な種まきだと思って大事にやっていきたい。

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