見出し画像

サークル“じぶん綴り方“今月のお題「わたしの好きな店」リアルのお約束

参加しているサークル「じぶん綴り方」は、毎月2つのテーマが出ます。今月のその一つ「わたしの好きな店」は、既に投稿していますが、サークルでは、リアルなお店も、と書いてのそれだったので、その記事です。
ただ、これも、過去にリアルなお店で、これから、こういうお店を、お客の立場で作っていくのかな、という感じのそれに落ち着きました。

ザ・昭和の居酒屋〜店主を助け合って成り立つ店

食べ歩きレポ、みたいな記事は、いつの時代も雑誌にあったりする。

20代の頃に購読していた雑誌にも、そんなのがあった。

そして、その連載に限らず、当時の食べ歩きレポには、必ずと言っていいほど、小さなお店を高齢の店主がマイペースで回している。そして、不足は常連さんが勝手に手伝っているような(注文が追いつかないと、勝手に冷蔵庫からビールを出して、お客さまにもっていったりetc.)。そんなお店の紹介が時々現れていたような気がする。

最近、めっきり雑誌を見る機会が減ったこともあるかもしれないが、そういうお店自体がなくなってしまったのだろうか。そういう記事を見なくなったように思う。

学生時代に通ったおばちゃんの店

好きなお店は、そんな一つ。だから、好き「だった」お店、という方が正確だろう。
私自身も学生時代、そして、知る範囲の先輩方も、知る範囲の後輩もそのお店は愛用し、愛していた。

記憶では、カウンターで5−6席。それと、ボックス席というにはちょっと抵抗もあるような空間に、テーブルなのだか、廃材の板なのかわからないようなものが置いてある4人席。いや、頑張って6人座ることもあった。決して装飾ではなく、単に片付けられないだけのゴミか荷物か区別できないものが壁際に山積みになっていた。そんなお店だった。

食べ盛りの男子大学生がかなり呑んで、食べても2000円を超えることはほとんどない、という価格帯。
大体、私は、友人や先輩とここを訪れて、上記のボックス席にいた。なので、カウンターの中のおばちゃんとじっくり話すことはほとんどなかったが、カウンターにいる常連さんとの会話などを時々聞いて楽しんでもいた。

おばちゃん手書きのメニューが壁に飾らずに貼ってある。なんといってもここにきて微笑ましく思うのは「サンマノシラキ」だろう。シャキシャキ‥だったのだろう(^^)が、江戸っ子のおばちゃん。発音だけでなく、文字にしても、“ヒ”と“シ”があべこべになっている。「これ、おばちゃん、サンマの開きでしょ?」と尋ねると、「そうだよ、サンマのシラキ」と、シを強調して帰ってきたり。

ジュースを注文すると、おばちゃんは「あいあい」と言いながら店の外に出ていく。ボックス席は壁際にある。木造の淋しい壁だ。だから、外の音も良く聞こえるのだが、ゴトゴトと、音が聞こえてくる。ボックス席と壁を挟んで設置されている自動販売機の商品の落ちる音。まあ、そういうお店もあるだろうが、このおばちゃんは、グラスにうつしもしないし、グラスを添えるわけでもない。ジュースをもって店の中に入ると、カウンターに戻る前に、そのままボックス席に来て、「あいよ」と置いていく。ちなみに当時は自販機は100円だったが、お店には150円。しかしおばちゃんの労力と、古の江戸っ子の名残りからときどき感じられる、“粋”に対する対価なのかは分からないが、50円もピンハネして、とは思う発想すらなかった。

まだ、流しがいた頃だった。ギターの方と、アコーディオンの方を見かけたことがある。歌ってもらったことはなかったが、いかがですか、とお店を覗いていく。おばちゃんと同世代だと思われるが、こういうのが昔の昭和の飲み屋なんだな、と、当時も昭和なのにそう感じていたりした(それだけ、昭和は長かった。大体、60年代の話だが、流しが居酒屋を巡って、というのは、3−40年代が全盛だと思う)。

おばちゃんと一度でも再開して

卒業後、大学の近くに行ったら寄ってみよう。そう思っていたが、ついに叶わず。しかし、偶然に街を歩いているおばちゃんに遭遇。体を痛めて、近く閉店する、というお話を伺うことができた。もう一度行けなかったけれど、ばったりお会いして、そんな話を聞けたのは、何かの縁かもしれない。

このお店での思い出がいろいろあるからか、そういうお店を好む傾向がある。

現在の自宅近くにも、2件ほどあった。しかし1件は店主のおばちゃんの母の介護の都合で閉店(ちなみに99歳のお母様と聞いている。店主も80過ぎだった)。もう1件は、完全にコロナ禍の影響で閉店してしまった。

ザ・昭和の居酒屋は行く店ではなく育てる世代なのかなぁ

別に、最初から、衰えを隠せない店主が店をやって、常連が手伝ったりしているわけではない。長く通っているうちに、双方が年齢を重ねていった結果を私は見ていただけ、のはず。そうだとすれば、普通の小さなお店を見つけて、その店主と共に年齢を重ねていく段階なのでしょうか。

冒頭画像は、みんなのフォトギャラリーで、サンマで検索して、気に入ったものを使わせていただきました。シラキの画像は見つかりませんでした(^^)。作者の方、ありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?