角松敏生 7thアルバム「BEFORE THE DAYLIGHT」(1988)レビュー
●約2年ぶりのオリジナルアルバム
大傑作だった6thアルバム「TOUCH AND GO」から約2年、そしてインストアルバム「SEA IS A LADY」を挟みオリジナルアルバムとしては過去最高のインターバルで発表されたのが今作だ。その年の日本レコード大賞で優秀アルバム賞受賞!更にオリコンアルバムランキングでも同時期発売された角松プロデュースによる中山美穂のアルバム「CATCH THE NITE」が1位、今作が2位で1・2フィニッシュを記録したとの事。中々にすごい。売上的には完全に全盛期である。しかし・・・個人的には悪い意味で衝撃だった!良いと思える曲が全く無く、何度聞いても自分には良さが分からなかった。1~6枚目までのアルバムはほぼ捨て曲無しで全ての曲が好きだったのに対し、今回一気に全曲捨て曲になってしまった!さすがに極端過ぎるぞ!何が起きた?自分でも分からぬ。あまりに受け入れ難く我慢して100回は聞いた(笑)がやはり良さが分からぬ。以下に考えられる要因を並べてみた。
・編曲、プロデュースが外人のため
ここが過去作との一番の違いかと思う。とにかくどの曲にも今まで好きだった角松のグルーヴ、リズムが感じられない。まるで別のアーティストの曲を聴いているかの様だぞ。アップデートされたように感じず、急に別のセンスに変化したように感じられた。あまり音楽的な事は詳しく無いので分析は出来ないが、リズムが直線的?以前のような揺れが無い、ロックっぽいリズムに感じた。ソリッド過ぎるような・・・メリハリもあまり無い、平坦な印象を受けた。これは・・・良いのか?洋楽聴かないので分からないけどダンスミュージックとして何かノレない。
この時代はリスナーもミュージシャンも洋楽コンプが尋常では無かったらしく、外人に丸投げすりゃクオリティ上がるに決まってる理論がまかり通ってたぽい気がするんだよな。小比類巻かほるのデビューアルバムとか飯島真理の4thアルバムとか本田美奈子の中期以降とか。後追いで聞いている自分のような若い世代からすると日本人の方がセンス良くね?と感じる事が多い。今のシティポップ再評価とか見てるとアメリカに負けてるってのは幻想だった事が分かるぜ。てか勝っても負けてもいないんだよ。種類、美意識が違うだけ。品質は劣ってない(はず)。日本人が日本人向けに作ったタイプの作品の方が自分には良さが分かりやすいなぁ。当たり前っちゃ当たり前だけど。要するに俺は外人凄腕ミュージシャン達よりヤマタツを崇拝する角松グルーヴが好きなんじゃ~。
・制作期間が短い?
これは完全に憶測に過ぎないが、中山美穂のアルバムとインストアルバムも挟んでいるので普段ほど時間がかけられなかったのだろうか?とか思ってしまった。
・時間の経過
やはり年月が経てば人間性と同時に音楽性も変わっていくのが自然な事だと思う。今回は今までで一番間が空いたので変化に気づきやすかったのかもしれない。
●曲ごとの感想(ほぼディスりだが個人的な感想なので勘弁してくれい)
01 I Can Give You My Love
直線的でロックなビートが最後まで続く曲。初っ端からバキバキの電子音だ。フュージョン、ハードロック然としたギターソロがたっぷり鳴る。終始どっしりとした真っすぐなビート。個人的には角松に求めるものがこの曲には無い。ライブではもっとリズムが細かく16ビートが強調されたアレンジで披露されており、こちらは良さが十分に分かった!やはりアレンジの問題か。
02 Lost My Heart in the Dark
特に言う事が無い…それぐらい引っかからない。こんな事は角松曲では初めてで、自分でも驚く。たぶんJ-POPナイズされて無さ過ぎるんだと思う。メロディーにしろアレンジにしろ。本格的過ぎてJポッパーな自分には聴けない。体が動かない。聴き所はフェイク歌唱が後半ヤマタツのごとく浪曲的うねりグルーヴでパワー爆発になるぐらいか。ダメだ、良さが分からぬ、100回は聴いたが分からん。
03 Thinking of You
いったんアッパーな流れを断ち切ってのミディアムテンポのバラード。この曲に関しては従来のメロディーの良さが出ているハズなのに、何故か良いと思えない。やはりアレンジかなぁ。リズムが何かノリづらい。原因が分からん。やはり洋楽過ぎるのか?自分が洋楽も聴くリスナーだったらもう少し分かるのかもしれない。
04 Get Your Feelin'
これまたヘヴィグルーヴな一曲。でも今までの角松のリズムじゃない。何か80sアメリカン過ぎるというかとにかくノレない。引っ掛かる感じ。何か全体的に和風?な感触。お琴みたいなオリエンタルなフレーズが目立つがどういう意図なんだろうか?日本人だから合わせたのだろうか。メロディが馴染み無さ過ぎる。サビの何とも言えない盛り上がらなさが説明しづらい。これは何なんだ…?自分には理解できない。モワモワ~っとしてる。
05 Can't You See
このアルバムの中では一番良さが分かる曲かもしれん。他の曲より音が少ないからか?ちょっといつものアーバン感を多少感じる。このモヤモヤしたダークな雰囲気が良い。良いといっても普段の10分の1も良さはない。
06 Remember You
リズムが何か微妙に感じる…何故なんだぁ分からん。踊れねえ。ずっと同じリズムで展開が無いせいなのか…何か重苦しい。ダンスミュージックでは無いな。ボーカルはいつになく暑苦しいボーカルでパワー全開だ。熱唱が目的に聞こえてくる。うぅ~良いと感じる部分が無い。やはり俺がほぼ洋楽聞かないせいなのか・・・ついていけん。
07 Lady in the Night
段々言うことも無くなってくる。サビが奇妙だ。J-POPナイズ、歌謡曲ナイズされていなさ過ぎる。聴きなじめない。純粋日本人の邦楽専門リスナーの自分には理解できない世界なのか…。これもライブバージョンだとラテン?っぽくて中々カッコ良くて結構聴けるんだが・・・音源はダメだぁさっぱり分からん。
08 I'd Like to Be Your Fantasy
何か80s過ぎる。80sは好きなんだけど、嫌な方の80sだ(笑)。80年代末期の感じなんだろうか。メロディーは良い気がしないでもないけど、良さが見いだせない。角松編曲だったらもうちょい良かったのかもしれん。この参加してる外人は何のジャンルの人達なんだぁ?全く角松とは美意識が違い過ぎるように感じる。角松ファンの自分としては理解不能だ・・・。