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アナハイムエレクトロニクス のブランディングについて学ぶ

機動戦士ガンダムは、文芸的には初代を頂点にしていながら、近年になって目覚ましくエンターテイメントとして成熟していると感じています。

シリーズの中でもメジャーな作品は、当時のアニメ映像の最先端であるという視覚的な魅力もさておきながら、細やかな設定があるからこそできる魅力的な演出の数々が楽しみです。設定も初代からして、当時のアニメ業界からみても群を抜いた細かさ、リアリティーです。リアリティーがあるから、そしてリアリティーを追求した映像作品だからこそ、いろいろ気になっちゃいますね。あなたはどんなところがきになりますか?

自分は某メーカー勤務のインハウスデザイナーでもあることから、機動戦士ガンダムにおいて気になるのはやはり、誰がモビルスーツを生産しているのか、ということですね。
もちろん、ガンダム生産の中心はアナハイムエレクトロニクスという複合企業。
戦争を題材にしつつ、アナハイムエレクトロニクスという民間企業を描くことによって、劇中に嫌という程語られる、若者が打ち破るべき「地球の引力」を具体的に想起させるという必殺技。痺れますね。

その話はさておき、この会社のすごいところは、スプーンから戦艦まで、という幅広い生産を請け負う巨大メーカーであるということ。コロニー公社から受注をしてコロニーの外装部品とかソーラーパネルなどを製造しているので、契約が長期の巨額になり、経営が山のように動かない巨大コングロマリットになっているわけです。なるほど、兵器も受注しようと思うわけです。
もちろん、コロニー部品は祖業ではなく、エレクトロニクスの名の通り、家電製品を生産しているわけであり、その著しい成果から一般市民からの強烈な支持があったと思われます。
そう、優れたブランディング行為の存在が匂ってきます。

そして、どんなブランディングを行なっていたか、類推すべく資料を探すときに、まず目につくものといえばこちら。

アナハイムエレクトロニクスのロゴアップ

ブランディングの要、ロゴ。
AとEを平行四辺形に押し込んだ意匠。わかる。わかるよ!
しかしこのクオリティで、巨大エレクトロニクス企業になれるのかい..
なれないよね。エアコンやテレビに、携帯電話にヘッドホンに入れられるのかい?正直に言うと性能悪そうだぞ。

こういう頭文字を使ったロゴは、家電製品などではあまり見られないので、読者様におきましては大真面目に取らないでいただきたいと思いつつ、
AとEの構成で、ロゴを改善できないのか、スタディーをしてみます。


ひとまず模写

模写をしてみると、きれいな平行四辺形ではなく、歪んだ台形になっています。そこまで不安定な形ではないのですが、一般的にコーポレートロゴはこういう不安定さは嫌われます。兵器に乗せるのにもちょっと懸念があるくらいには不安定な形かな、とおもいます。

ツッコんでみて、気になったところを単純に直してみるテスト

ジオメトリーに正直に書くと、Aの頂点部分は黒い領域が大きすぎるので、視覚補正を入れることが多いです。上の図のようにテストをしてみましたが、平行四辺形の右側の辺の角度を浅くした理由もよくわかります。Eでっかくみえるものね。それを気にして外型を崩すのは、なんというか本末転倒で勿体無い。
そこは避けたいよね、で、この原因はAとEが接している部分のギャップにあるのかな、と考えるわけです。視覚的にも強いので、相当な意図がないとこのギャップは使いたくない。
ので、このギャップを避ける図案を考えるわけです。

トライアル1

ふむ、まあ、そんなかんじだよね、と思う。悪くないけど、進歩も小さい。アップルやソニーみたいな強いブランドをもつ巨大家電メーカーにはまだ遠い。

トライアル2

ギャップを逆手にとった案になっていく。ギャップを作っていくと紋様みたいに見えてくるのが、癖があってユニークに見えてくる。
https://www.legendary.com/
レジェンダリーフィルムのロゴとかそうですね。好きなロゴです。
トライアル2も悪くないけど、巨大エレ(ry

 

トライアル3

AとEを接続のギャップをなくす代わりに
傾斜をインサートしていく案。垂直線の左にちょっとだけ斜めのオーナメントを入れると、全体の形状がまとまって見えてくる。だいぶいい感じだけど垂直線がキツい..かな。
一番右の案、アナハイム鉄道だったら結構いい感じの上手な構成だな、と思った。

トライアル3-3

右上の平行四辺形に色を挿して..おお、なんかそれっぽい。
80年代くらいの鉄道会社のロゴみたいだね。しかしこれで巨大エレ(ry

いったんシミュレーションをして、俯瞰的な視点で振り返りたい。
アナハイムエレクトロニクス史に残る、脅威のロングライフデザイン、ジェガンに来てもらう。

トライアル2-2
トライアル3-1
トライアル3-3

どれもだいたい悪くないけど、ギャップや垂直線はやっぱり避けた方がいいな、と思うわけです。斜め、横、縦、と線の方向が増えてしまうと、視覚的に複雑性が増してしまう。欲しいのは、垂直線をなくせるアイデア。

トライアル4

トライアル4-1のただの三角、みたいな方向性、好きなんだけど流石にこれでブランディングするのかと思うと、どうなるのかな、と思う。いまから遠い未来の宇宙世紀の時代で図形商標取れるのかな。
トライアル4-3で、ようやく一番ミニマムなAとEの合体の仕方が見えた。
この案をすこしやらかくしたものがこちら

トライアル4-3の調整案
トライアル4-3の調整案のシミュレーション

シンプルな平行四辺形の中に、上向の三角と下向きの三角が組み合って
地上と宇宙で活躍するアナハイム社のビジョンにもあってそう。
スプーンから戦艦まで、このロゴなら載せられるとおもいますが、どうでしょうか?もっといいアイデアがあったらぜひコメントしてください。
もっと細かな調整については、気が向いたら書きますね。

スプーンを製造するのにどういう優位性があって家電メーカーが食器製造に手を出しているのか、と毎回思いますが、この時代のスプーンの製造方法は、エレクトロニカルなんでしょうね。
宇宙世紀に詳しい方、ぜひおしえてください。

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