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『光と窓』

2022/11/16
カシワイ,2020,リイド社.

さいきん良い漫画に出逢うな。

・市川春子『虫と歌』
・今日マチ子『cocoon』
・大島弓子『バナナブレッドのプディング』
・カシワイ『光と窓』

全部ひとからの薦めだな。良い友だちに囲まれてるということだな。好みの系列として、漆原友紀『蟲師』、西造・世叛『遠くの日には青く』なども読み返したい気持ちになる。

風と土の匂いがする文学作品7篇を漫画にした本。ひとつひとつ感想つけていく。

・安房直子「夕日の国」
ええ、一作目で泣きそうになった。卒論でいま、行って帰ってくる物語、こちら側とあちら側の境界線、みたいなことをやっていて、どんぴしゃだと思った。その章、発想は面白いと思うのに、ぜんぜんうまく書けない。わたしがなんか論じるよりも、こういう作品があるならもうそれで十分な気がしてくる。

・小川未明「金の輪」
これもあちら側へ行くはなし。行くというか帰ると言ったほうがいいかも。七つまでは神の子と言うし。

・須賀敦子「こうちゃん」
これはちょっと不思議すぎたかも。幽霊てきな存在はすきなんだけど。p. 80の絵が天橋立を自転車で横断したときの景色そっくりで、わぁってなった。

・草野心平「ごびらっふの独白」
ドイツ語?と思ったら蛙語だった。なにを見ているのかわからない蛙の目線の先を見るという終わりが良い。その後「日本語訳」と出てきて、日本語訳!!と思ったけど、これはぜったいにない方がいい。異文化の声が、綺麗に聞き取れてしまってつまらなくなった。時代が違うから仕方ないけど、何も考えずに平凡な幸福を、って言いながら雌蛙とつがいになるのも、メッセージとしてはきわめて保守的だしな。

・安房直子「小さいやさしい右手」
声に合わせて字体を変える工夫がすてき。「人に姿を見せてしまうと一人前の魔物になることができなくなる」(p. 116)ってそういうことか〜!舞台がヨーロッパだし、テーマが「ゆるし」だし、どちらかというと魔物が人間的で、人間の女の子は聖母マリアってかんじだったな。

・新美南吉「ひとつの火」
いちばん言葉少なに語られたけど、良い。すき。

・宮沢賢治「注文の多い料理店序文」
文章が良いなあ。絵は賢治の総集編みたいになってて少し物足りなかったけど、読み終えた。良い本だった。

小川未明、新美南吉、宮沢賢治は前から知ってたけど、安房直子がすきということが新たにわかった。

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