ギターは膝で弾け―極悪「膝ギター」列伝―
「ギターは膝で弾け」このタイトルから想像することはなんだろうか。
「なるほど、あらゆるスポーツは膝が大事っていうしな」「確かにギター弾きながらみんなよく動くしな」「膝を柔軟に使うとギターもうまくなるんだろうか」
もしかしたら、そうなのかもしれない。だけど僕はそんなことが分かるほどギターがうまくないし、僕にそんな難しい話はできるわけがない。この記事で言いたいのは、もっとバカなことだ。
「ギターの位置が低いと、かっこいい!!」
例えば、かつての三大ギタリストの一人、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ先生の写真を見てもらおう。
ギターの位置、ひっく!!ストラップなっが!!!!
同じく三大ギタリストに挙げられる、エリック・クラプトンやジェフ・ベックと比べてみよう。
その差は歴然である。クラプトンもジェフ・ベックも、ギターの位置は腰のあたり。対してペイジのギターは下がりに下がって、膝のあたりだ。
なんとくだらない観点だ、という人もいるだろう。ギターの話をしようって言ってたのに、ギターの位置って、と。しかしこのことは、実は他の2人と比べた際に、ペイジがどういうギタリストとして評価されたのかにもつながってくるものなのだ。
クラプトンの異名は「スローハンド」。当時のクラプトンのギターソロがあまりに速く正確だったため、「逆に指が遅く見える」ということからついた名前だ。またジェフ・ベックも、テクニックに関してはお墨付きで、僕程度のギタリストにはよくわからない、なんか…フュージョン的な?そういうギターを弾く人だ。つまり、2人とも当時「バカテク」系ギタリストとして人気を集めた人だった、といえるだろう。
これに対してペイジという人は、実はテクニック的にはめちゃくちゃうまいわけではない。そのかわりペイジは、ギターやバンド演奏に対して斬新なアプローチを思いつくことがうまい、いわゆる「アイデアマン」だった。クラプトンやジェフ・ベックだったら見向きもしないだろうツインネックのギターを使ったり、バイオリンの弓でギターをひいちゃったりと、かなり奔放なアイデアで見る人の脳裏にその姿を焼き付けたのが、ジミー・ペイジというギタリストなのだ。
基本的に、ギターというのは高い位置で構えれば構えるほど弾きやすくなるものだ。それをめちゃくちゃ下げるということはどういうことか。「俺はテクニックで勝負してるわけじゃないよ」「どうだ、悪そうでかっこいいだろう」「ギターを弾く俺の姿に酔いしれな!!」そういうギタリストの姿勢を表すのが、「膝ギター」なのだ。
僕が知る限り、この「膝ギター」の祖はジミー・ペイジなのだが、この系譜は今でも脈々と受け継がれている。例えば、The Yellow MonkeyのEMMA氏をみてみよう。
レスポールの膝ギター、そしてこの長髪。なんといっても、その耽美な立ち姿!日本でペイジの姿勢を最も正統的に受け継ぐスター、といってもいいだろう。
そう、膝ギターといえばレスポールだ。そして膝ギターとレスポールのコンビネーションといえば、この人も忘れるわけにはいかない。
横山健だ。レスポールを膝に構え、前傾姿勢で弾く独特のスタイルは、一旦みたら忘れることはできない。
横山健も、メタルやアニソンの速弾きがすでにある程度市民権を得ていた1990年代当時、テクニックが周りと比べて秀でていたわけではない。それがなぜ、日本のインディーズシーンを代表するカリスマとなったのか。
その答えのひとつが「膝ギター」だ。膝ギターは、反骨のアイコンなのだ。
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