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衆院選2021 - ジャイアントキリングの岩手、政治の流れ無視の静岡、安定の京都に注目。

衆院選が終了しました。私は今回もしっかりタイ・バンコクにある日本領事館に訪問して在外投票を行い、大切な一票を投じてきました。

さて衆院選の結果ですが、大物議員の落選はいくつかあったものの、数字の面では自民党の圧勝でしたね。維新の躍進もめざましかったです。

今回の選挙で最もインパクトがあったのが岩手3区における小沢一郎さんの小選挙区敗北でした。あの選挙区は小沢さんが引退するまで負けないだろうと昔は思っていましたが近年、自民党の藤原崇さんに比例復活を許すほど拮抗しはじめており、いつ小沢さんが負けるのかというある種のカウントダウン状態になっている部分はあり注目していた選挙区でした。そして遂にジャイアントキリングが今回発生しました。

ただ小沢さんは比例復活されましたので引き続き「銀バッチ」ではありますが国会に残られます。小沢さんといえば雲隠れした時に必ず大きな政局をもたらす印象があります。銀バッチであっても再び政局を作り出すパワーがあるかどうか。今回の結果から見ても恐らく小沢さんにとっては最後の任期になってしまう可能性が高いので小沢さんのこれからの4年間は田中角栄さんの頃から続いた昭和政治の思い出作り的に見ていこうと思います。

次に印象的だったのは静岡5区の細野豪志さんの圧勝でした。ここは自民党公認の吉川赳さんと無所属で自民党二階派会員の細野さんによる現職の保守分裂選挙となり、そこに立憲民主が小野範和さんを立てていました。与党公認と野党統一候補に無所属の細野さんが挑む構図と言われていましたが蓋をあければ無所属の細野さんが12万票を集めてダブルスコアでの圧勝、吉川さんは6万票、小野さんは5万票とほぼ五分の2位争いでした。ここは岸田新政権、野党統一といった大きな政治の流れが最初からなかったかのような選挙区になりましたね。

なお、本当は細野さんは圧勝で吉川さんの比例復活を阻止し、自民党に入党して現職優先の原則から次回衆院選の公認を確定させたかった所ですが、東海地区の自民党小選挙区が今回勝ちまくった事もあり惜敗率がかなり低いにもかかわらず吉川さんが比例復活でき、再び同選挙区の保守勢力においては二人の現職を抱える異常な状態になりました。甘利幹事長は細野さんの入党を前向きに検討している発言をされていましたが、甘利さんも小選挙区敗北で幹事長辞任、後任と言われている茂木さんがどう判断するか見ものです。茂木さんは旧竹下派の会長代行で恐らく竹下派を引き継ぐ人でしょうし、同派は今回の総選挙で党内第3派閥に落ちてしまいまいたので一人でも新規派閥加入者が欲しい所、細野さんを二階派会員から引く抜いて加入させて頭数を増やしたいと考えているかもしれません。ただ細野さんを入党させれば静岡5区公認の吉川さんは岸田派所属という事もあり問題はややこしくなります。吉川さんも投票日翌日には街頭でお礼演説をし、そこで細野さんの入党を拒否するような発言(自分という公認候補がいるのに細野さんが同じ選挙区から入党したいという異常事態があると発言)をしており注目し続けたいポイントです。

3つ目は京都1区です。ここは自民党の伊吹文明さんが小選挙区で長年勝ち続けてきた選挙区で共産党の穀田恵二さんとライバルでバチバチやりあってきた選挙区です。この選挙区が面白いのは自民党と共産党の得票数が毎回安定して計算できている点です。伊吹さんの得票数が平均的にだいたい7〜8万票で時折上振れするものの、基本的にはこの数字で固定化されていて、もう一方の穀田さんも4〜6万票で固定されています。要は接戦をしながらの固定が続くという事です。この選挙区は自民と共産の両党で明確な地盤を持っているという事がわかりますが、各陣営の選対も比例復活の票読みがしやすくて他の選挙区と比べて気持ちの持ち方が違ったと思います。その証拠に小選挙区で伊吹さんが勝利し、穀田さんが比例復活というのは京都選挙区の風物詩のような感じになっていました。だから伊吹さんと穀田さんは党派を超えてお互い敬意を抱ける仲良しにもなれるのでしょうね。そして今回の総選挙も伊吹さんは引退されましたが後任の勝目康さんがしっかり8万6,000票あまりを獲得して小選挙区を勝ち上がり6万5,000票を獲得した穀田さんが比例で復活しました。勝目さんは前回衆院選で伊吹さんが獲得した票数(8万8,000票)をしっかり引き継いで確保、穀田さんも前回は6万2,000票でしたので前回同様の支持を確保と世代が変わっても自民党と共産党のバランスに変化は発生しないようです。ただし、今回の衆院選は面白い現象がこの京都1区で発生しました。それは候補者全員当選という出来事です。なんと日本維新の会から立候補していた馬場幸子さんまで3位で比例復活という事態になりました。馬場さんは6万2,000票を獲得し穀田さんまであとわずかという所まで迫っていたのです。前回衆院選でこの選挙区に出馬していた希望の党の各得票数は36,000票でしたので今回維新になって2倍に増えています。この現象がなぜ起こったのかを考えますと、この選挙区の最終投票率が前回から7%アップで50%(投票総数が20万票超え)を超えて来たことが大きかったのではないかと思います。京都1区の自民党と共産党は上述した通り、支持者の数はほぼ横ばいの固定ですから投票率が低い場合は17万〜18万票で自民と共産で上位を分け合う傾向にあります。しかし投票率が高くなり投票総数が20万票を超えてきますと第三極に出番が回ってきて20万票を越えたときには3名が当選(小選挙区勝者と比例復活2名)します。しかもその時には伊吹さんが小選挙区で負けるか穀田さんが2位の座を明け渡して3位に沈み比例復活という具合で上位2強が崩されています。京都1区におけるジャイアントキリング発生条件は投票総数20万票以上という事になります。今回の維新の馬場さんはまさに発生条件を満たしていたと言えるでしょう。いずれにしても立候補者3名が全員当選というのは京都1区の有権者にとっては幸せな事ですね。

ちなみに私の祖父が地方自治体の首長をしていた時代に自民党幹部でもあった地元国会議員の後援会長をしていたのですが、そのお孫さんが今回も無事当選されていました。祖父はかなり昔に他界しておりますが、心の中でよかったねとおじいちゃんに思いを馳せました。

今回、多くの政治家が夢破れてバッチを失っていますが政治家は選挙に敗れればただの人と言われます。しかし1度でもバッチを持っていた事は彼らを完全な無職にはなかなかしません。支持者が経営に携わる大学や出身大学で教鞭を振るう事もあれば政治評論家の道もあります。元国会議員というのは人気なのです。負けたと言っても地元では数万票を集めているわけですので、地元の名士であるのも間違いありません。

しかし彼らの多くが政治家であり続けたいと思っています。選挙に負けるという事は勿論党勢という要素も大きいのは間違いありませんが、議員個人の資質による部分も小さくありません。負けてバッチを持たない期間にしっかり学べる人は必ず国会に戻っていきますし学ばなかった人は選挙で連敗して他の仕事に流れていきます。今回敗北した議員の今後を追いかけてみるのも面白いかもしれません。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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