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蜜月の刻(とき)

ようやく『初体験』の3文字が現れたかと思いきや・・・・

「今でこそ、浮気性の主人の所業が私を小説にかりたてているけれど、あの頃のことを思い出すと、頭の中が真っ白になって書けなくなるのよ!」

彼女はまるで自分の首を絞めるかのようなしぐさをして、気持ちを落ち着かせているようだった。

官能小説家:朴木える

(しょっぱなからヤバイひと選んでくれたな~編集長…)

「私たち20歳だったけれど、男女の精神年齢には差があるでしょう? 中途半端に聞きかじった知識で8mmなんかに夢中になるくらいですからね、子どもっぽいひとでね。いつも友だちを優先するひとだった」

「あぁ、いますね、そういう人」

「友だちばかりでなく、だれかになにか言われたら、すぐ影響される人だったの。その時誰かになにか言われたのかは知らないけれど・・・・」


「初めて付き合った人に、そんな風に笑われたら『もう二度と抱かれるもんか!』って思わない?」

「思いますね」

「今ならね…」

そう言って彼女は自分は「うぶだった」と付け加え、

「笑われないようにダイエットしたのよ。急に食べなくなった私を見て彼、機嫌が悪くなったの。『なんでそんなことするんだ』って。男の人ってなにげないひとことや、悪気がないことに関しては一切忘れられる生き物でしょう?」

「はぁ…。そう、なんですか…?」

「だから自分が笑ったことなんてまるで覚えてなくてね」

「え、ひど…」

「ちょっとしたことでケンカするようになったの。私の中には納得のいかないわだかまりがあったから。でも言えなくてね、それからなんとなく、彼を拒否するようになっていって、終わり」

初体験は、重い記憶を残すだけとなった・・・・

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです