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蜜月の刻(とき)

最初のインタビュイーは全身黒づくめの、黒いポッキーのような人だった。

「主人は、作家にとっての原稿の価値をまったく理解していないくせに、私が稼ぐことを疑わない。でもなくした原稿に対してなんの罪悪感ももたないということは、最初から私の才能など信じちゃいない」

がっかりしたわ…と彼女は言った。

官能小説家:朴木える

「初体験? キレイなものではないわね」
そう言って彼女は語りだした・・・・

「今でこそ官能小説なんて書いているけれど、昔の私は男の人の前で裸になるなんて『とんでもない』って思っていたのよ。だってそうじゃない? なにも知らないうちから家族く以外に見せたこともない裸を晒すなんて」

「確かにそうですね…」

「それに私、とにかく太っていたから」

「え、そうなんですか? 今はそんなに細いのに…!」

「拒食症のまねごとをしたの」
そう言って彼女は人差し指と中指を口元に当て微笑んだ。

指突っ込んで、吐いたってこと!?

「初めてお付き合いした人は映画が趣味のひとだったの…。自分でも8mmを撮ったりしてね。私も何度か撮ってもらったけれど…夏の終わりに友達同士で海に行ったことがあって、その時も彼はカメラを回してた」

急に遠い目を見せたかと思うと、彼女の表情はみるみるうちに真っ赤になり、怒りをあらわにした。

「帰ってからみんなが見る前に映像をチェックしようということになって、ふたりで観ていたら彼、急に笑い出してね。水着姿のわたしを指して『この腹』って言いながら手を叩いて笑ったのよ!」

言うなりキッと、こちらを睨みつけた。

「え?」

なにやら話が違う方向に・・・・


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