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石像の魔法~南インド、聖地の岩山はパワースポット

 ガイドブックによると、石段は何と614段もあるという。そして頂上には巨大な聖なる裸像が待っているはずである。

 ここシュラヴァナベルゴラのジャイナ教寺院は、他のヒンドゥー寺院などとは、規模が違った。巨大な岩山に不ぞろいな階段が延々と続く。
 インドの寺院はどこでも、裸足にならないと入れてもらえない。
 影のない石段が続くこの寺院では「日差しで石が熱くなるので、やけどに注意」との警告がガイドブックにあったが、僕らが登ったときは、石がひんやりしていて、汗ばむ上半身を気持ち良く抑えてくれた。

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 このジャイナ教寺院は、南インドカルナータカ州の古都マイソールから、コーヒーとスパイスの地方都市チクマガルールへ行く途中にある。『地球の歩き方』によると「南インド最大のジャイナ教の聖地」とのことだ。
 岩山のてっぺんに高さ18メートルのゴマテーシュワラ像があり、「一枚岩からの石像としては世界最大級」とされていて、何とも興味深い。

 ジャイナ教はインド人口の1%にも満たない少数派だが、有力な商人が多くインド社会に独自の影響力を持っている。不殺生、禁欲、無所有を重んじる。
 石段は石組みを積み重ねたものから、岩肌を削ったものもあり、幅も高さもほぼ成り行きだ。体力に自信のある若者なら何の問題もないが、僕のようなシニアは、登る前に上を仰ぎ見ない方がいいだろう。
 空に吸い込まれていく階段の下で「やーめた」ということになりかねない。
 それでもサリーの裾を押さえた女性や黒いターバンを巻いた男性、遠足の子どもたちが黙々と登っていく。息を切らして座り込んでいるような人は、一人もいない。みんなスタスタ、軽々と歩いて行く。

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