見出し画像

オンラインツアーの可能性について

私、外国人向けのツアー会社で働いてるんですね。

非常事態宣言は解除されましたが、引き続きインバウンド 業界には厳しい状況が続きます。外国人が来ない。ツアーができない。そんな状況の中で、やはり、考えるべき時期ではないかと。オンラインツアー。

結論としては、オンラインツアーはライブコマース化します。そしてツアーガイドはお笑い芸人でなくてはなりません。

何を意味しているかこれだけはわかりませんよね。では、お付き合いいただければと。3000字超えです。長いです。

直感的には無理だと思った

画像1

この数ヶ月の間に休業を余儀なくされた仕事がたくさんありました。その中で、オンライン授業、オンラインヨガ、オンラインキャバクラなど、オンラインで事業を代替しようという試みが各地でされました。

インバウンド業界では、事態の沈静化を待つのが大勢ではありました。しかし、インバウンド旅行者の回復には一年以上時間がかかると言われ、ここにきてオンラインツアーの動きが盛り上がっています。

数週間前、初めてSNS上などでオンラインツアーの話を聞いた時、直感的に無理じゃないかと思いました。非常に懐疑的でした。

旅行の楽しみは現地の観光地に行き、現地の人と会い、現地の物を食べる。これが旅の醍醐味。現地に行けないオンラインでの旅行など絶対に無理だ。

そして、こんな考えが浮かびました。

・コロナが収まれば必要ない
・旅番組の方が面白い
・YouTubeと変わらないのでは?
・お金を払う人はいるのか?
・お金を払ったとしても、通常のツアーよりお金は取れない
・海外だと時差はどうするんだ? 

できない理由を並べていました。思考停止ですね。

私はこれまで、新しいものには懐疑的な意見から入る癖がありまして。仕事上の必要もあるかもなので、やるとすればどうやるのか、そんな前提で考えてみました。

ライブコマースが面白そう

画像2

オンラインツアーをするためには何が必要でしょうか?これは割とわかりやすい話。ツアープランとガイドが必要です。では、まずツアープランついて。

今までやっていたリアルでのツアーでは、行き先は全世界。国内は東京、京都、北海道など。外国でいえば、アメリカ、ヨーロッパ、中国。
ツアー期間は日帰りもあれば二泊三日、数週間だって可能です。

対してオンラインツアー。行き先はパソコンの前。移動は必要ありません。ただ、ツアー期間は1時間〜2時間、長くても3時間でしょう。理由は、ずっとパソコンの前に張り付いているのは負担だからです。

調べてみて、4時間を超えるのもありましたけど、だいたい1時間〜2時間が多いですね。限られた時間の中でツアーを提供する必要があります。

「数時間の旅って、もはや旅ではないのでは?」と疑問がわきます。なので、こう考えました。オンラインツアーは旅行体験の一部を切り出したもの。

そうなると既存の体験と似てくる。逆にいえば、それらのノウハウを活用できます。具体的には、三つに分けられます。

・ライブコマース
・カルチャースクール
・ウェブセミナー

それぞれ例を挙げながら話します。

まずライブコマース。私もよく知らないんですが、簡単にいうと、テレビショッピングのインターネット配信。女性だとインスタライブやYouTubeでの化粧品の紹介がイメージしやすいのかなと。

オンラインツアーだと、酒蔵の紹介が相性良さそうですね。日本酒の作り方や味のこだわりを紹介する。大吟醸や純米酒の違いなど旅行者(参加者)の質問に答える。気に入ってもらえばとECサイトを通じて購入してもらう。というのがイメージしやすいですね。

日本国内だと配送がしやすく親和性が高い一方、外国人の場合は配送費用が高くなるのが問題。現地に販売網があると良いのですが。

日本酒の例を出しましたが、魚、野菜のような生鮮食品から陶器や民芸品まで地域のあらゆる産品が対象になります。漁業だと釣っている様子や刀鍛冶の作業など、オンラインならではコンテンツを提供すれば参加者も獲得できるでしょうね。

二番目、カルチャースクール。形としては講師がいて、生徒がいるオンラインヨガのイメージが近いです。コンテンツとしては茶道、俳句、書道など近所の公民館でやってそうな文化体験をオンラインで提供します。

例えば座禅する場合。座禅の組み方や呼吸方法を説明し、実際に体験をしながら、仏教の歴史や宗派に関するウンチクを話すイメージですね。茶道や寿司づくりも人気が出そう。

最後にウェブセミナー。形としてはオンライン授業の派生版。神道と仏教の違い、ラーメンの歴史と地域による味の違いなど、ガイドをする時に説明する内容を授業形式でまとめて提供します。情報量や専門性が試されるでしょう。

オンラインツアーは、この三つの既存の枠組みを活用したものになるでしょう。ツアーとしての可能性はライブコマース形式が一番高いと考えます。理由は、ローカル感が一番出しやすいからです。

カルチャースクール形式だと極端な話、ロサンゼルスにいるアメリカ人の寿司職人が、南アフリカにいる日本人に寿司の作り方を教えることができます。ウェブセミナー形式がローカル感が低いのは理解しやすいかと。

いずれにしても、オンラインツアーで非常に重要なのがガイドです。ガイドが良ければツアーはなんでもいいとすら私は思ってます。

ガイドが目指すべきはお笑い芸人

画像3

旅行の面白さってなんだと思いますか?人それぞれ好みはあるでしょうが、こういう分け方ができるでしょう。

・観光(世界遺産、景勝地など)
・文化体験
・食事
・気心の知れた仲間との会話
・人との出会い

なぜこんなことを突然言ったかというと、オンラインツアーの価値に関わってくるからです。ビデオ通話によって提供できるコンテンツには限りがあります。観光、文化体験はできるものの現地にいない分、価値は半減します。

食事も配送によって実現ができるとはいえ、物足りなさは否めません。仲間との会話に関しては、オンラインツアーである必要がなくオンライン飲み会に代替されるでしょう。

ということもあり、人との出会いが前面に出てきます。もちろん対面での会話には劣ります。しかしほかの要素と比べると、ビデオ通話はもともと会話をするためのツールですから、オンラインツアーではコミュニケーションの比重が高まります。

リアルでのツアーのように、素晴らしい景色にうっとりするとか、神社の荘厳な雰囲気に圧倒されるとか、ローカルグルメに舌鼓を打つとか、そういうことができない分、ガイドのコミュニケーション能力にツアーの価値が依存します。

オンラインツアーは見方を変えると、1時間〜2時間の生放送・生配信です。もともと良いガイドをするためにはエンタテイナーの要素は必要でしたが、これまでの以上に重要です。

というわけで、ガイドが目指すべきはお笑い芸人なんです。観光名所の説明は参加者の反応をみながら説明内容を変えたり、質問に答えたり、飽きないための仕掛けを用意したり。

観客の反応次第で、ボケの数を増やしたり、ツッコミの間を変える漫才コンビのように笑いを取る必要があります。あるいは、番組を仕切るテレビの司会者や新製品のプレゼンをしている社長のような要素もあるのかなと。

オンラインツアーのガイドには、場を温め、聴衆を引き込み、その土地にしかないストーリーを語る。そんなコミュニケーション能力が求められるでしょう。

オンラインツアーのライバルはYouTuber

画像4

といろいろ言いましたが、オンラインツアー界は始まったばかりです。この話もちょっと調べただけで机上の空論感は否めないのです。

私たちがやるべきは、旅行の面白さやガイド付きツアーの価値を分析して、オンラインツアーに合ったものに再構成すること。そして実際にツアーをして、反省をして、試行錯誤を繰り返すことでしょう。

これまでのリアルでのツアーと比べると、フォーマットがビデオ通話に変わりましたが、参加者にとって楽しいツアーを提供するというのは変わらないです。

インバウンド業界から見れば、ツアーガイドがオンラインでツアーを提供するという視点になります。しかし見方を変えると、日本の歴史や文化をもとにしたライブコマース、カルチャースクール、ウェブセミナーの要素を持ったライブ配信です。

そういった事情もあって、オンラインツアー市場が拡大した場合には、コミュニケーション能力の高いYouTuberやインフルエンサーとの戦いが待っているでしょう。ガイドが優位に立てるローカル性や専門性が強いツアーを提供していく必要があります。

まずは自分でもオンラインツアー参加してみようと思います。大変な長文になりました。お付き合いいただきありがとうございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?