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「ド田舎で都会暮らし」がしたい!

どうもゴイダチグトセです。
前回の記事で、「田舎に住みたいんだけど、田舎の人間になりたいわけでもなく、田舎が好きなわけでもなく、田舎の人たちと仲良くしたいわけでもない人びとは、田舎に受け入れてもらえない」ということを書きましたが、その続編的な内容です。
今、田舎に移住したい若者が増えてきています。いや、そんな若者は昔からずっと存在しましたが、どうも最近、田舎の人たちが戸惑っているようなのです。どうやら価値観の食い違いが起きているみたいです。今回は、その一見なんでもないように見える潮流について書いてみようと思います。


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目次
●スローライフ研究会
●研究会の目的と理念
●研究会設立の背景
●新しい村へ
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●スローライフ研究会
「woodjob!」という、林業をテーマにした僕の大好きな邦画があるんですが、その中に「スローライフ研究会」という、いかにもありそうな、大学サークルのチャラい若者たちが登場するんですね。彼らは、山奥の田舎の暮らしを見学させてほしいとやって来て、本人たちに悪気はまったくないのだけども、田舎の生活の不便さや閉塞感をバカにする発言を不用意に繰り返してしまい、ついに主人公にキレられ追い返されるという、いわば田舎の人たちにとっての悪者として描かれていました。
その一連の描写に、なぜか僕は妙に共感してしまいました。
田舎の人たちのなんともいえない目線も、それに気づかない彼らの無邪気な振る舞いも、そしてその関係性全体も、なんかそのまんま、どこかで見たことあるな、と。
そして気づきました。
ああそうか、僕も含めて、田舎に住みたい若者たちが求めていたものは、「田舎での都会暮らし」だったんだなと。


●研究会の目的と理念
田舎に住みたいんだけど、田舎の人間になりたいわけでもなく、田舎が好きなわけでもなく、田舎の人たちと仲良くしたいわけでもない。じゃあ、彼らの目的はなんなのか?
彼らはいったい何がしたいのか?
と疑問に思うかも知れません。
スローライフ研究会員たちの目的である「田舎での都会暮らし」とはどういうものかというと、「ムダな生活費を使わず、都会にはない自然豊かな環境で健康的に暮らしつつ、のびのびとネットをやりながらアマゾンや楽天で適当に物欲を満たす」生活です。「元の生活スタイルを、よりシンプルにスタイリッシュにして、自分たちの理想に近づけたい」。それが彼らの理念です。
濃い近所づきあいなんてしません。都会では隣人の顔を知らなくても問題ありません。
役員にもならないし、自治体の会合にも参加しません。そういうものは、都会にはないからです。自分の好きな集まりになら、顔を出すかも知れませんが。
あくまでライフスタイルは都会暮らしのまんま、田舎に持ってきたいのです。


●研究会設立の背景
こうしたスローライフ研究会が設立された背景としては、

①ド田舎でもWi-Fiが使えるようになってきた
②住む場所を都会にこだわる必要がなくなってきた
③仕事に住む場所を縛られなくなってきた

の3つが考えられると思います。

①は、体感でしかないかもしれませんが、ほんの4、5年前はお話にもならなかったような場所で3Gや4G回線が使えるようになっています。また田舎に多いセブンやローソンでフリーWi-Fiが使えたり、WiMAXもエリア拡大中だったりと、徐々に「田舎ではネットつながらない」という常識が薄れてきています。

②は、都会の家賃が不当に高すぎることに気づきはじめた人たちがいるということです。服もマンガもシャンプーもお菓子も、物欲を満たす行為のほとんどをネットでやるようになって、都会じゃないとできないことが相対的に減ってきました。流行の最先端も、現実の都会の風景を見るよりスマホの画面を見て把握する割合が増え、都会の価値が相対的に下落しています。
そんな中、実際に田舎に住み始めた人たちから「田舎いいよ!」という声や、「ド田舎ならバカでかい古民家に月5000円で住めるよ!」といった声が出始めました。
だとしたら、こんな狭苦しくて壁も薄い、ゲーム実況も歌も踊りもやりづらい不便な環境に7万も8万も支払うくらいなら、いっそ田舎でいいから家賃が安くて広々とした環境でのんびり暮らしたい。そう思う人たちが増えてきたのです。
つまり、別に田舎がいいというわけではなくて、ただ日本全国どこでも自分の住みたい場所に住みたい、ということなのです。

※バカでかい古民家が月5000円は本当か?
本当です。長野はわかりませんが、大分の山奥と兵庫の山奥には実際にありました。相場は月5000円~10000円といったところです。不動産屋には出まわっていないので、地元の人に直談判する必要があります。信頼を勝ち取る粘り強さと交渉力が必要です。得意な人に頼みましょう。物件は、ボロボロの廃屋からお屋敷のような立派な古民家までさまざまです。ただし、家の中にあるものはそのままにしておいてほしいとか、家具の配置も変えないでほしいとか、毎日綺麗に掃除して住んでほしいとか、いろいろな条件が付いているものがほとんどでした。

③は、ほとんどネット上で完結する仕事の種類やニーズが増えてきたということです。
ネット上で完結する仕事の代表は、ブロガーやノマドワーカーのほか、ユーチューバーやオンラインショップの運営、アウトソーシングなどがあります。これらの仕事はWi-Fiさえ飛んでいればどこでもできるため、都会に住む必要はありません。むしろ飽きたら次々住む場所を変えてもいいのです。というか、新しいコンテンツを発信する要素が含まれる仕事なら、そうして定期的に特色のある環境に移り住むことも必要かもしれません。
「お金のかからない田舎で野菜でも育ててSNSにUPして、気ままにユーチューバーやって稼ぐ」。それって、たぶんイマ的にはサイコーの生き方なんじゃないでしょうか。


●新しい村へ
ところが、前回の記事でも書いたとおり、スローライフ研究会員を快く受け入れてくれる田舎は、日本にはまだ存在しません。早すぎたんですね。
現段階では、自分たちで新しく村でも作ってしまうほうが、いっそ早い気がします。
もちろん、生活インフラなど物理的地盤に関してほぼ0から作り上げなければならないのは、相当な時間がかかると思います。しかし、田舎の人たちにこれらの価値観が理解され、受け入れてもらえるようになるまでにはそれと同じか、それ以上の時間がかかると思います。
今若い人たちの間で、新しい村を立ち上げるプロジェクトが各所で勃興し(ては消滅し)ていますよね。きっとそのような活動の背景には、上記のようなものが含まれているのでしょうね。

そんなわけで、今後の若者たちの動向が個人的にはとても興味深いです。
新しい村のようなものをどんなふうに作って、どうやって運営していくのか、そういうの考えるのはとても楽しそうだなと思いました。

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