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夏のシニフィアン(詩作)


ベランダに焼きつく蟻の影
真夏の空に蝉の抜け殻を当てがって
縁側の木陰の果て
宛先を失った手紙の上で
シニフィエを失ったシニフィアンが彷徨う

熱を帯びたコンクリートの連なりが
この胸に焦燥を懐かせて
憂いを忘れた酔っ払いが
吸い殻をジッと見つめている

例えばあの日は正午を回っていて
オレンジ色の自転車を軽やかに鳴らしていた
例えばあの日に回帰して
酔っ払いは灰皿を思い出で満たしたので
タバコをそこに押し当てて
煙と一緒に消してみせたのだ

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