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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2022年4月の記事一覧

修験の山としての日光「修験道入門」より

「修験道入門」では日本各地の霊山についての詳細が紹介されています。なかでも興味深いのは日光。 日光とはいえば「東照宮があって江戸幕府の創始者徳川家康=東照大権現を祀る土地」という印象ですが、それでは江戸幕府がやってくる前の日光は、どうだったのか? それは山伏の跋扈する修験信仰の山=霊山だったのです。 著者は、 とし、宗教は政治や経済などの俗に染まると、宗教本来の価値が失われてしまうとの考え。 政治とは権力であり、経済とは金儲け。したがって神道のように国教化されたり、

修験道とは?「修験道入門」五来重著 書評

<概要>国土の八割が山の日本において生まれ、山岳宗教に陰陽道や仏教を融合させて誕生した「修験道」は、「日本人のあらゆる宗教や文化の原点をなし、庶民信仰を包含した宗教である」ということを紹介した、修験道に関する詳細な著作。 <コメント>「入門」というタイトルとはいえ、これを読めば、修験道のほぼすべてがわかるのでは、と思うぐらい詳しい。著者「五来重」曰く、 このように著者の考えによれば、神道や仏教よりもずっと古い庶民の信仰がまず土着的なベースにあって、そこに神道(神祇信仰)だ

「木を見る西洋人 森を見る東洋人」 書評

<概要>関係性を重視する東洋人。個別の概念の本質を重視する西洋人。論理による対立よりも良好な関係性を重視する東洋人。討論を重視して論理の整合性を追求する西洋人。討論は避け、お互いの妥協点を探る東洋人。このように東洋人と西洋人の認知方法の違いについて社会心理学的見地から紹介した著作。 <コメント>社会心理学(文化心理学)の手法に基づき、アメリカ南部人は「名誉の文化」を重視するとし、生まれ育った社会文化によって個人は規定されるという仮説をさらに発展させて、東洋と西洋の違いについ

「終わりなき日常を生きろ」宮台真司著 書評

<概要>サリン事件を引き起こしたオウム真理教などのカルトや自己啓発セミナーなどを題材に、今に生きる我々は「終わりなき日常」という普遍的真理のない複雑な世界を生きているが「オウム真理教」などの特定の価値観に染まることで自分の存在不安を解消するのではなく、浮遊する存在そのものを受け入れ「まったり」生きていけばよいと指南した著作。 <コメント>若い頃、宮台真司や鶴見済(「完全自殺マニュアル」著者)、岡田斗司夫(「オタク学入門」著者)などの著作にハマっていた時期があったのですが、受

「熊野詣」五来重著 書評

<概要>まだ熊野古道が世界遺産になるずっと前の1967年出版と半世紀以上前に書かれたものとは思えないほど、神仏習合・修験道・そして原始宗教の織りなす、総合文化たる熊野を多面的に味わえる名著。 <コメント>「熊野は謎の国、神秘の国である」から始まる本書は、古い本ではあるものの、ちっとも内容が古びていないことにまず感心します。以下興味深い三つのエピソードを紹介。 ⒈「熊野別当」という専制君主熊野三山を支配したのは「熊野別当」という専制君主。「自由の命運」著者アセモグル風に言