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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2020年10月の記事一覧

フランスのナショナルアイデンティティ「表現の自由」

フランスの表現の自由は、我々日本人の感覚とだいぶ違うようです。 #日経COMEMO #NIKKEI イスラム教・キリスト教など宗教に関係なく、宗教への冒涜とも思える批判に関しても「積極的表現の自由」が保証されているのです。 我々日本人の場合(アメリカ式表現の自由)、信者への配慮から特定の宗教への冒涜的な表現は控える傾向にありますが、フランスではむしろ冒涜的表現に関してもあえて「表現の自由」を与えることが重要との認識。 フランスの政治学者ファブリス・イベルボワン教授によ

「西田幾多郎」記念哲学館にて

西田幾多郎記念哲学館は、世界中で唯一の哲学ミュージアムらしい。 金沢方面から哲学館のある「かほく市」に車で向かうと、忽然と丘の上に超モダンな建物が現れます。これが「西田幾多郎記念哲学館」。 千里浜の砂丘の丘の上に作られたので、周りを広く見渡せる素晴らしい眺望が楽しめます。 よくもまあ作ったものだと感心してしまいますが、こちら設計は安藤忠雄ということで、むしろこの建築のほうが注目されているかもしれません。 私自身、哲学勉強中ですが、まだ西田幾多郎まで至っていません。自分

禅の館「鈴木大拙館」拝観

週末に2泊3日、GOTOトラベル活用で石川&白川郷に行ってきました。 目的のうちの一つは、石川県に2つの思想ミュージアムがあること。同行した妻に無理をいって寄らせていただきました。 一つは「鈴木大拙館」(金沢市)。もう一つは「西田幾多郎記念哲学館」(かほく市)。 鈴木大拙館は、MoMAの建築でも名を馳せる石川県出身の「谷口吉生」、西田幾多郎記念哲学館は建築の鬼才「安藤忠雄」という日本を代表する稀代の建築家が創造した必見の建築でもあります。 まずは、鈴木大拙館の紹介です

個人の虚構としてのナショナルアイデンティティ

#日経COMEMO #NIKKEI 三島由紀夫に関する社会学者宮台真司さんの記事。本当に考えさせられます。 「空っぽな日本」とはなるほどな、と思いますが、一方で全ての日本人が「個人のよるすべ=個人の虚構」に天皇などのナショナルアイデンティティをおくべきかどうか、は私自身疑念を感じます。 ナショナルアイデンティティの問題と近代市民社会の原理の整合性は、アイデンティティが教条主義に陥らない限り有効ではないかと考えていますが、かといってそれを日本人全員にそうあるべき、ともいえ

人間の本性を考える(中巻):スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 上巻で展開された「人間はブランクスレート(空白の石板)でなく遺伝的な要素も大きい」という考えは、決定論的極論を生みやすいが、むしろ遺伝的影響を正しく見据えることこそが、人間を正しく理解することに繋がり、その可能性を見出すことができると提言した中巻。 <コメント> ◼️「遺伝子」という本体論(※)の展開 進化論や脳科学が明らかにしてきた人間の本性は、そもそもこの世に普遍的真理は存在しないとした相対主義(ポストモダニズム、脱構築主義など)に対抗し、遺伝子=盲目の時計職

人間の本性を考える(上巻)スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 副題の[心は「空白の石板(ブランク・スレート)」か]との問いに対し「違います」とし、進化生物学や脳科学の成果に基づいて、心の先天性の問題について解説した著作。 上巻の内容は、なぜブランク・スレートが主要な学説になったのかについて整理する一方、進化論に端を発した学問&脳科学の「文化」に関連する学説の紹介、及びこの新しい理論を批判するラディカルサイエンスの主張への論駁。 <コメント> 本書出版当時(2002年)のアメリカ学術界は、まだまだ人間は皆、ブランク・スレート