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【CLE】Claseか、Clase以外か。【WBC選出外】

 読者の皆さま、いつも読んでいただきありがとうございます。Windiansです。サムネイルは、WBCのメンバーが発表されたときに作りました(製作時間10秒)。何とも頼りない文字が、私の残念さ加減をよく表せたと思います。はぁ…

 さて、今回はガーディアンズのクローザー、Emmanuel Claseを紹介する記事です。私はWBCのドミニカ共和国代表に選ばれるものだと思い込み、嬉々として執筆していましたが、なんと選出外に…😩
 昨年はア・リーグのセーブ王を獲得し、メジャーで登板した3シーズン連続で防御率1点台と、屈指のリリーバーに成長しました。このnoteを機に、ドミニカ共和国の代表候補にはこんな選手もいるんだよ、ということを覚えていただけたらなと思います。

 今回は投球スタイル、彼の人間性、もう少し詳しく、の3点に分けて進めます。

分かりやすい投球スタイル

① うなる爆速カッター!

 Claseの投球を説明をするのに一番わかりやすいのは、何といっても平均で99.5マイル(≒160キロ)のカッターでしょう。全投球の60%を占めており、これが投球の軸となっています。昨年は僅かに100マイルに届きませんでしたが、2021年は平均でも100マイルを越えていました。
 化け物揃いのメジャーリーグでも、球種を問わず100マイルを投げられる投手は多くありません。しかもそれがカッターである投手は、他にジャイアンツのCamilo Doval(平均99.4マイル)くらいしかいません。これだけで希少価値が爆上がりです。

データは以下より引用


② 速く鋭いスライダー!

 メインピッチのカッターが目立ちますが、全投球の40%弱投げているスライダーもなかなかの球です。平均球速は91.9マイル(≒148キロ)で、昨年だとメッツのJacob deGromに次いで2位、リリーフでは1位になります。近年のメジャーリーグでは、スライダーは変化量を抑える代わりに高速化させたものや、球速はそのままに横変化だけを多くしたスイーパーがトレンドになっていますが、彼はどちらにも当てはまらない「速く、よく曲がる」スライダーを作り上げることに成功しました。
 また、昨年奪った77三振のうち、半分以上の44個はスライダーを決め球にしていました。空振り率も42.7%と納得の数字が出ており、実は決め球としてならカッターよりも有効な球種です。

空振り率は以下より引用


③ 脅威のストライク率!

 これだけ異次元の球種が2つもあれば、遊び球なんて必要ありません。昨年はとにかくストライクを取り続け、ストライク率がなんと約75%でした。これは昨年10イニング以上投げた投手の中で、2位のBrusdar Graterolに3ポイント以上離してトップです。なんならここ35年でもトップだそうです。書いている私もドン引きしています。
 この高いストライク率を可能にしているのが、コマンド能力の高さです。ガーディアンズのコーチ独自の計測になりますが、昨シーズンのClaseは全投球の65%をキャッチャーの構えた場所に投げ込めており、これはチームのエース、Shane Bieberに次ぐ数値だったそうです。豪速球ピッチャーは制球力が多少悪くても球威で抑えることが可能ですが、精密なコントロールと両立できるなら、恐れるものは何もありません。

④ 三振は狙ってない!?

 近年のメジャーリーグでは、打球が飛んででヒットになる可能性を排除できる三振の評価が高く、三振を多く奪える投手は高く評価されるようになりました。ところがClaseは、どうやら三振を奪うこととインプレーをでアウトを取ることは同じくらいの重きを置いているようです。

The nice thing with him is we don’t have to strike guys out to get outs. We get a lot of weak contact. Weak contact for me is as good as a strikeout.
 
【筆者意訳】
彼(Clase)が素晴らしいのは、アウトを取るのに打者を三振させる必要がないことだね。俺たちはたくさん弱い打球を打たせられる。俺には、弱い打球は三振と同じくらいいいことなんだ。

Austin Hedgesのコメント, Cleveland.comより引用
記事内にClase本人のコメントもあり

 その究極形として③のスタイルに辿り着いたと考えています。厳しいコースを狙ってストライクを取り続けていれば、打てそうな球を待つ打者は三振に終わるのを待つしかありません。そこで無理に手を出すとカッターが牙を剥き、去年の正捕手だったHedgesも言う通り、弱々しい打球を打たせられてアウトを取ることができます。
 打球がフェアゾーンに飛べばヒットになる可能性は生まれますが、打球速度が遅くなるほどその確率は低くなります。ましてや彼のメインピッチであるカッターは、バットの芯を外して打たせる球種です。

人間性

⑤ 成長した野球への姿勢

 ご存知の方もいると思いますが、Claseは2020年に禁止薬物の検査でボルデノン(筋肉増強剤の一種)の陽性反応を出し、80日間の出場停止処分を受けています。2019年オフにトレードで加入した時からチームは彼の精神的な未熟さを把握していたものの、パンデミックで開幕が延期になっている間にチームが十分なコンタクトを取れていなかったことが一因とされています。
 処分を受けている間、彼は故郷に戻ってトレーニングを行っていました。シーズン中にもかかわらずRuben Niebla投手コーチが協力してくれたこともあり、映像の共有や通話を用いてコンディションを維持することができていました。ミスを犯してしまったものの、野球に対しては向上心の高さを窺うことができます。

もう少し詳しく

⑥ どうやったら攻略できるのか

 メジャーで圧巻の成績しか残していない彼ですが、なんとかして攻略法を考えてみます。先に述べておくと、かなり無理な内容となっております。

 クローザーなので基本的にはセーブシチュエーションでの登板しかしませんが、何らかの事情でそれ以外の場面で登板することもあります。以下のデータは、昨年各バッターと対峙したときのシチュエーション別成績です。

 打率と出塁率は2アウトでランナーが得点圏にいるときと同点時、長打率とOPSはそれらに加えて5点以上リード時が、他のシチュエーションと比べて成績が悪いです。5点以上リードしていても、点差が詰まると結局抑えられているので、同点時の登板を強いるのが得策でしょう。
 また、昨シーズンの開幕直後と9月上旬の一瞬だけ不安定な投球を見せていました。当時の私は心配になって原因を考えていたのですが、以下のツイートの通り、カッターがど真ん中orボール球になっていたようです。これだけストライクとボールがはっきりしていると、打者も狙いを絞りやすかったと思われます。

(この章はもし日本がドミニカ共和国と当たった時のために書いたんだけどなぁ…)

データ、写真は以下より引用


⑦ 外れ値に位置するスライダー

 ②で端的に「速く、よく曲がる」と説明しましたが、どれほどのものなのかを詳しく見ていきます。

左:横変化と球速のグラフ、右:縦変化バージョン

 上の写真は、2022年にスライダーを投げた投手の変化量と球速を表したグラフです。このグラフから、スライダーは一般的に、球速の増加と変化量の減少が比例関係にあるといえるでしょう。ところが彼のスライダーは、縦変化は6マイル(≒9キロ)、横変化は7マイル(≒11キロ)遅い投手と同じくらいの変化量を維持しています。
 スライダーの
球速は球界屈指ですが、それだけでいえば他にも近い投手は存在します。変化量も、それだけでみれば同じかそれ以上の選手は多数存在します。しかし、これらを両立している選手はいないからこそ、唯一無二の球と言えるわけです。

データは以下より引用


おわりに

 日本人選手がいる、初めて観戦した、親が見ていたなど、メジャーリーグを見始めるきっかけは多種多様だと思います。私はBieberのピッチングに惚れ、その流れでガーディアンズを応援するようになりました。チームを箱推しするか、選手個人を単推しするかも人それぞれですが、このnoteがメジャーリーグを知るきっかけになれば幸いです。
 自分なりに詳しく書きましたが、ここまで文章にしなくても、映像を見るだけで分かりやすく「すごい!」「エグい!」と感じられる選手です。今年は皆さんも是非ガーディアンズを追って、Claseのピッチングを楽しみましょう!


参照記事

(↑有料記事)

https://www.si.com/mlb/guardians/opinion/emmanuel-clase-mariano-rivera-kenley-jansen-100-mph-g

(↑代表的なカッターのMariano RiveraKenley Jansenとの比較もあるので、興味のある方はご覧下さい)

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