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「大切なひと」#映画にまつわる思い出

映画館という非日常空間、そこにさらに非日常的な時間、つまり夜中に行く楽しさがもっと広まると良いと思っている。

自分は神奈川県出身なので、映画を見るときはほぼ必ず海老名駅周辺に行っていた。
幼い頃はワーナーマイカルシネマズがあり、夏休みの度にポケモンだのドラえもんだのを見に行った。もちろん親に連れて行ってもらって。

子供向けの映画であっても熱中して鑑賞する母の顔を、上映中たまに見上げていたことを思い出す。

自分が小学校高学年になるころ、ビナウォークがオープンし、TOHOシネマズという映画館がオープンした。
駅からコンコース直結というのもあり、そっちに映画を見に行くことが多くなった。
当時は友人とだったり、はたまた女性とのデートだったりと「誰かを伴って」行っていたが、大学生の卒業前の春休みに初めて一人で行くことにした。
免許取り立てだったので、平日の夜という交通量が少なそうな時間を狙って家を出た。

実家の軽自動車を借り、夜道をそろそろ運転しながら海老名市街地へ。
レイトショーの時間帯ともなると、駅前も駐車場もビナウォークもほとんど人気は無く、「普段は来ないような時間」であることに少しワクワクした。
ほとんどの店は閉まっているのに、TOHOシネマスだけは営業しており、もちろん客入りも数人見かける程度なのだが館内は通常営業をしていた。

シアターの中も自分と他2~3人がバラバラに座っている程度。
それでも、映画館というシステム自体は休日の賑やかな時間帯と何も変わりなく動作しており、そのギャップがたまらなかった。

開演時間となり、画面が暗転し、TOHOシネマズのロゴと同時にあるピアノ音楽が流れる。
その瞬間、「俺は映画を見に来たんだな」と少しだけ鳥肌が立ち、スイッチが入る。
自分の中ではその感覚自身を味わうことへの楽しみと、映画の中身そのものに対する期待が同じくらいの比重を占めている。

もちろん昼間・休日に行っても開演前の流れは変わらない。
しかし、平日夜中に行くとその感覚を全て独り占めしている気分に浸れる。
自分の周囲に人の気配がほぼないから。

「今から、自分だけのために映画が上映されるんだな」という錯覚すら覚える。

当然は曲名なんて知らなかったから、「TOHOシネマズ BGM」なんてググって探したりもした。
企業オリジナルBGMだと手に入れようもないが、購入できるサイトを探し当てることができた。

部屋を暗くしてこの曲を聴くと、初めてレイトショーを見に行ったときのあの感動を今でも思い出すことができる。

金曜ロードショーの「Friday Night Fantasy」よろしく、この曲も映画を見る前のエンジン点火にはもってこいである。

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