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パンドーラーの箱

人々は怨念や悪事

恨み辛みなどの事象達を

パンドーラーの箱に押し詰めた

その箱を保つ男が一人

荒波の打つ岬に立っていた

その箱の真実を知るその男は

箱と共に海へと堕ちるつもりだった

いずれ来るであろう全ての災いを

その手で終わらせようと考えたのだ

何処にでもあるようなその木箱からは

並々成らぬ禍々しい気配を漂わせている

男はじりじりと岬の先端へと向かう

後一歩で海へと向かう時に

一人の女の声が聞こえた

その男の付き合っている女性だ

その女もその箱の意味を知っている

女は何故そんな事をするのか

私一人を置いていくつもりかと聞いた

男は弱く仕方ないんだと応えた

これ以上に被害を出せない

ここで終わらせるしかない

そう応えまた海を見る

その箱の意味は知っていると女が言う

この世の全ての人類の災いが収められた箱

持つ者に巨万の富と栄光を与え

その代わり周囲の人々に不幸をもたらす

その箱を手に入れるのに必死だった

男を女はずっと見ていた

夢は叶ったじゃない

怖くなったんだ男は食い気味に言う

開ける度に自分はこんなに裕福になるのに

周りの人々はどんどん不幸になって行く

私はただ幸せに成りたかっただけなんだ

自分だけ幸せでは仕方がない

皆と幸せを分かち合いたかった

そう言うと男は海の中へと消えた

女はただ見ていた

何故か男が持っていたはずの

箱を抱いている

また駄目だったかと

女は呟くと森の中へと

箱と共に消えて行った



-完-

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