中国 「海南島」は「第二の香港」に
中国の最南端に位置する島、海南島。
九州の9割程度の大きさで、ハワイよりもやや南に位置するこの島は、年間を通し気温22~26度と過ごしやすく、また晴天日数が年間300日以上、島の半分が緑に包まれ、滑らかなビーチと美しい山々の景色を有する海南島は、まさに「中国のハワイ」と呼ぶにふさわしい島と言えます。
2021年 春節旅行傾向報告では1位となり、今中国で最も人気の観光スポットのひとつでしょう。
日本人には、あまり浸透していないように感じる海南島。
しかし現在中国では、海南島での免税品購入が大ブームとなっています。
日本の大手企業も、既にその波を捉えています。
事実、2021年5月に行われた海南島初の高級ブランド品展では、日本の89ブランドが参加し、延べ20万人が訪れる盛況を見せました。
大手化粧品メーカーである資生堂は、既に34ある免税カウンターを2021年内に50まで増やすとしています。※1
では、どうして今、海南島が盛り上がっているのか。
この記事では、海南島で何が起こり、何故絶大な人気スポットへ急成長することができたのかを、簡単にですがまとめていきます。
海南島を「第二の香港」に
香港は、誰もが知る中国の世界都市であり、世界有数の人口密度を誇る大都市です。超高層ビルが立ち並び、様々な業種の大企業が居を構えています。
「世界で最も自由な経済体」に25年連続で選ばれている香港の経済形態は、税率が低い自由経済を特徴としています。
また、自由貿易港であり、ほぼすべての品目がゼロ関税で輸入できます。
※ただし、酒、たばこ等、一部の品目には物品税が課税されます
今、海南島が香港に取って代わろうとしています。
海南自由貿易
2020年6月に、島内全域で関税ゼロとするなど、貿易の自由化を実現する計画「海南自由貿易港建設総体方案」(以下、方案)が発表されました。
以降、島内全域での運用開始に先駆け、一部の輸入商品に対して先行的に輸入関税と輸入増値税、消費税を免除する政策が打ち出され、海南省の貿易額は輸入が牽引する形で大幅に伸びを見せました。
2020年下半期の貿易総額は前年同期比15.2%増と上半期実績を下半期が大幅に上回りました。
そして、2021年6月10日に海南自由貿易港法が可決、即日施行されました。
これは方案をベース制定され、総則、貿易と投資の自由化・利便化、税制・財政、生態環境保護、産業発展と人材育成、総合措置、付則の8章57条からなります。
特筆すべきは、貿易と投資の自由化・利便化の項目です。
貿易の利便化は、自由で利便性の高い輸出入管理制度を確立し、貿易のネガティブリストを制定し、同リストに記載されていない項目は「内外一致(内外資に対して差別せず平等に扱うこと)」の原則によって管理されます。
これは、事実上(ネガティブリスト記載のもの以外は)関税ゼロという事になります。
離島免税制度
2020年7月1日、中国政府は方案のひとつとして、海南島(海南省)における離島免税の新政策を発表、施行しました。
年間免税割当(免税で購入していい)額は、一人あたり3万元から10万元(約170万円)と大幅に増額。免税商品も酒類等が追加され、38種類から45種類へと増えました。
また、驚くべき事に、海南島を出た後でも、180日以内ならオンラインでの免税購入が可能となるなど、大胆な制度改正が行われました。
この改正は中国国内で大きな注目を集め、海南島での免税市場を活気づけました。世界的なCOVID-19パンデミック渦中で、海外旅行に行けなかった事も
大きな追い風となり、多くの中国人が海南島へ訪れました。
2020年9月までの免税店買物金額は55億元にのぼりました。
これは、7月1日の上記新政策の施行から2ヶ月間での金額であり、前年度比221.9%増という驚異的なものでした。
その後も海南島の免税市場は成長を続け、施行から2021年6月30日までの1年間の免税購入金額は前年同期比3倍の468億元、観光客は同2倍の628万人と大幅に増加しています。
かつて、日本でも話題となった「中国人の爆買い」は、現在では海南島で起きています。
減税優遇措置
方案では、所得税や法人税の優遇税制も制定されています。
現在は、海南自由貿易港に登録し、実際に運営を行う奨励類に該当する企業の企業所得税は、通常の25%から軽減され15%となります。
海南自由貿易港に設立された観光業、現代サービス業、ハイテク産業の企業が、2025年までに新規の対外直接投資で得た所得については、企業所得税を免除する事も明記されています。
香港の税率が16.5%(200万香港ドル以下は8.25%)を踏まえても、この優遇税制は大幅な減税となります。
また、2025年までに島内全ての企業の企業所得税が優遇税制対象となる予定です。
金融開放
中国人民銀行(中央銀行)など金融当局は、海南島の金融開放に関する方針を打ち出しました。
特定の外国ファンドに中国の未公開株への投資枠を与え、一定の範囲内で海外との自由な送金も認める方針です。海南島の企業に対し、外国銀行の融資など海外から調達できる資金の限度額を引き上げます。※3
海外への投資についても、中国ファンドは当局から特別枠を得れば、海外の未公開株などに投資できるようになります。全体の限度額は50億ドル(約5500億円)です。
新型コロナウイルス前は、資金流出を警戒して対外投資を規制してきましたが、人民元の国際化もにらみ規制を緩める方針です。
これは、長期・激化する米欧との外交摩擦とは裏腹に、経済的には独立するのを避けたいという側面もありそうです。
娯楽
中国には「金盾(グレートファイアウォール)」と呼ばれる行政によるインターネット検閲システムが存在します。
これは非常に強固な検閲システムであり、アクセスを規制されているサイトが数多く存在します。
例:検索エンジンGoogleやGmail、FacebookやTwitter等のSNS、YouTubeやニコニコ動画等の動画サイト…
しかし、これらの規制についても、中国政府は段階的に緩和していく方針を示しています。これは、外国人が駐在しやすくするためのものと考えられます。
香港やマカオは、一国二制度の遵守により「金盾」の外にあるため(インターネット規制を受けない)、インターネット上の言論および表現に対して、政府によるいかなる規制・統制・監視も行われていません。(最近問題になりましたが…)
将来的に、海南島もそのような行政特区になるかも知れませんね。
また、カジノについても認められる事となり、香港とマカオをかけ合わせたような、魅力溢れる島になることが予想されます。
これにより、海南島へ移住したいと考える人も多くいるでしょう。
以上の「自由貿易」「免税制度」「優遇税制」「金融開放」「娯楽」…ここに挙げた物が全てではありませんが、今後海南島が香港と取って代わり、中国進出の基点となることはほぼ確実でしょう。
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ライター:
株式会社 GTL KYUSHU
営業部 広報担当 河野
※1「中国・海南島の博覧会で資生堂など日本勢がアピール コロナ禍で海外旅行できず日本商品に注目」ー産経新聞
※3「中国、金融開放の拠点に海南島 基本法成立」ー日本経済新聞
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