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【アーセナル】PremierLeague/第30節/vsLiverpool(A)【ごとこの備忘録】

試合前展望

 シーズン終了まで残り9試合。その中でも優勝を争うシティとの直接対決と肩を並べるほど重要な意味合いを持つのが今節、アンフィールドでのリバプールとの対戦である。

 振り返れば10年以上アウェイリバプールに勝てておらずプレミアリーグの中でもトップクラスに苦手意識が拭えない対戦カード。しかし今季のアーセナルは近年では頭抜けて絶好調、対するリバプールは逆に低迷中と両者を取り巻く状況は大きく変化している。

 アーセナルはサリバ、エンケティアの怪我離脱こそあれどジェズス、トロサール、サカ、マルティネッリ4人が率いるフロント3が特に好調で誰を抜擢するか非常に悩ましい所。今季リバプールに挙げた劇的勝利をもう一度再現し、シーズンの命運を大きく分ける分水嶺となるこのゲームをものにして欲しい。

試合結果

LIV 2-2 ARS
LIV:サラー 42' フィルミーノ 87'(Aアーノルド)
ARS:マルティネッリ 8' ジェズス 28'(Aマルティネッリ)
PL公式MOTM:マルティネッリ
https://www.premierleague.com/match/75206

スターティングメンバー

左リバプール、右アーセナル

試合展開

 versatility溢れる前線の選手陣からは結局マルティネッリ×ジェズス×サカの3枚を起用したアルテタ。トロサールには試合途中からの出場でimpactorとしての活躍を期待。対するリバプールは直近の中盤のパフォーマンスに不安こそ残るものの、コナテダイクの双璧にジョタ×ガクポ×サラーの揃い踏みとなった。

 攻撃の組み立てとしては似た土台の上で各々の選手の個性を生かしたものを互いに展開。SBが絞りピッチ上の動きに変数をプラスするという点では共通しているが、アーセナルは絞ったサラーが居る左サイド側からガブリエル起点でビルドアップを開始することが多く、リバプールは絞ったアーノルドが守備基準をずらしスペースを与えられたサラーが自由に受けて攻撃の中心になるといったもの。

 こうしてシュートこそないものの双方ゴールの匂いを感じる立ち上がりに。時間と共にゴール前でのプレー時間が増え乱打戦の様相を呈し始め、どちらに先制点がもたらされるのかという展開。そこから先に得点を獲得したのはアーセナルであった。

8' 絞ったサカがドリブルとマルティネッリとの連携を織り交ぜ前進、ダイクのパスカットのこぼれを拾ったマルティネッリが足先でコースをずらす落ち着いたシュートでアーセナル先制

 試合開始から10分経たずして理想的な先制パンチが炸裂。絶好調サカが起点となった素晴らしい受けから得点に結びついた。

 得点後は今季何度も見られた選手達が入れ代わり立ち代わりながら展開するポゼッションサッカーを披露していくアーセナル。アタッキングモメンタム的に色濃く表れるほど圧倒しアンフィールドの重圧をものともしないゲームを演出して見せた。

 特に大きく攻撃関与していたのは、ミドルサードのジンチェンコからサカへの大きなサイドチェンジであったりトーマス&ウーデゴールの落ち着き払った捌き力、更にホールディングの中遠距離レンジの配給技術であった。選手それぞれが多角的に試合へ貢献しアーセナルの優勢を保つことに成功する。

 更にこの優勢はリバプール側の攻撃停滞をも演出した。失点の焦りからか低い位置から組み立てる意識が時間と共に薄れ、代わりに左サイドへのロングボール戦法が中心に。ガクポ×ジョタのポジションチェンジから左サイドの2レーンを抜け出す形でサリバ不在CBに入ったホールディング×イエローが提示されたホワイトとの2on2で上手いこと出し抜く作戦に舵を切りなおしたように見えた。

 ただそれでも何とか対応し、ものともしないアーセナルが依然攻勢をかけ続ける。そして少々突拍子もない所から追加点を奪うことに成功する。

28' ファールでプレーが止まったところからジンチェンコ→ジャカと即座にリスタート、ジャカのスルーパスに反応しアーノルドの背後に抜け出したマルティネッリが送ったクロスはジェズスが頭でピンポイントに合わせゴールへ、アーセナル2点目

 リバプールの攻撃に徐々に迫力が増してきた中での追加点。今季の勢いを体現する値千金の追加点をこれまた早い時間帯にゲットすることに。

 この追加点を契機に更に会場はアーセナルムードへ。ただ数少ない被カウンターからリバプールが1点を返すことに。

42' 大外をジョーンズとジョタの連携で深くえぐり、エリア内へ送り込んだ素早いボールを最後はサラーが押し込みリバプール1点目

 得点直前に勃発した、両者にイエローが提示されたジャカとアーノルドのやり合いでアンフィールドがヒートアップした所から生まれてしまったとも言える失点。火が付いたKOP達が作り出す異様な空気にレフェリーが完全に当てられジャッジ基準が曖昧になってしまうなど、失点まで良い試合運びを行えていただけに非常に不安定な前半の締めくくりとなってしまった。

 そしてロバートソンの執拗な抗議にイエローが提示されたハーフタイムが明け後半。前半終了間際の空気を依然保ち追い風を受けたリバプールが前半とは打って変わってボールを保持する展開となる。

 リバプールの特徴ともいえるスピーディでダイナミックな攻撃は前半こそ鳴りを潜めていたものの後半はそれを発揮。アンフィールドの熱気に包まれ中々落ち着かない展開からリバプールが何度もアーセナルゴールに迫り続けることとなった。加えて、コナテ中心に深いタックルを食らい続けるも不透明なレフェリングによりお咎めなし。色んな意味で苦しい展開になっていった。

 そんな劣勢の代表的ともいえる53分のPK。ただコーナーの競り合いからホールディングがPK献上を犯すもサラーが枠外へ外すなど、攻勢をかける中でも今季の不調っぷりが垣間見えたのもまた事実であった。

 そうしてなんとかリードを守り切りたいアーセナルとどうにか流れの中で得点を奪いたいリバプールが残り時間互いにワンチャンスを掴みに行く激戦に。リバプールは60分にチアゴとヌニェス、78分にはファビーニョに代えてフィルミーノを投入。アーセナルはトロサールに加え大一番でキヴィオルを投入。伝家の宝刀5バック作戦を敢行する。

 試合はそのまま推移しインテンシティの高いゲーム展開が続き両者疲労が蓄積する終盤。アーセナルとしてもただ防戦一方ではなく散発的にだがビッグチャンスを作り出す。ただ悉くゴール前での精度が足りずロングカウンターを誘発、ラムズデールのビッグセーブ連発でなんとか難を逃れ続け熾烈な撃ち合いを繰り広げた。

 それでも最終的に勝負を分ける得点を生み出したのはホームのリバプールであった。

87' アーノルドのふんわりとしたクロスにファーで待ち構えていたフィルミーノが頭で合わせリバプール同点

 失点に絡んでしまったジンチェンコに代えティアニーを投入するも、勝ちに行きたいのか勝ち点1ptでも良いので持って帰りたいのか分からない采配ミス(?)とも呼べるアルテタの交代策を挟みつつ、ラムズデールの神セーブ2連発で最終的に幸運にもドローを維持したと言えるアーセナルがアンフィールドで引き分ける形となった。

ピックアップ選手

ガブリエル・マルティネッリ

 今季トップクラスのパフォーマンスを披露。圧倒的なドリブル力でリバプール右サイドを試合を通して蹂躙し続けた。試合終了間際の大きな決定機はパス精度が低く逃してしまったがG1A1の大活躍でアーセナルの中で最も脅威的な選手であった。

アーロン・ラムズデール

 前半も含め、後半のリバプールの猛攻を徹底的にストップし続けた。前半のvsサラー&80分頃の交代直後浮ついた中訪れたvsヌニェスとの1vs1をどちらも完璧な読みでセーブし、試合終了間際のサラーのディフレクトしたコントロールシュートとセットプレーからのコナテの至近距離弾と超絶難易度のシュートも防いでみせ、その他多くのピンチからチームを救った。xG的にリバプールは4.0以上と算出されたスタッツも多くある中で、引き分けで終わることが出来たのはこの男の影響がとてつもなく大きいだろう。

トーマス・パーティ

 目立った数字こそ残さなかったものの、トーマスの経験と技術が遺憾なく発揮された試合だったように思う。特に後半、アンフィールドの空気に当てられリバプールのゲーゲンプレスにハマる選手が多くいる中、一切意に介さず淡々とボールを捌き続け落ち着き払ったプレーに終始していた。

全体雑感・次戦に向けて

 前半こそ勝ち筋が見え快勝のチャンスがあったが、終わってみれば引き分けで終わることが出来て良かった、というのがとりあえずの感想だろうか。

 それもアーセナル側の停滞が原因ではなく、現在8位に沈みながらもホーム戦績ではリーグトップクラスのものを収めているリバプールの執念と自信がもたらした部分によるところが大きい。腐ってもリバプール、サポーター達の熱狂的な声援も合わせかなりの強敵であったことは間違いなかった。

 ただあまり悲観的になってはいけない。結局今季リバプール相手には1勝1分と負けず辛うじて首位争いを維持することが出来たのもまた事実である。シティやニューカッスルなど難敵がまだ多く残っているが、勝ち点を極力取りこぼさずこのまま走り抜けて欲しい。悲願のPL優勝まであと少しだ。

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