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「限られたリソースから結果の最大化」vs.Spurs【24/25PremierLeague 第4節】


試合前展望・キーポイント

 ライスを不可解な判定で失った前節。シーズン序盤からいきなり幸先がかなり不安だと予想されたが、この2週間の代表ウィークでアーセナルにとっては更なる逆風が吹いた。

 まず一番の痛手ははウーデゴールの負傷離脱。力強い守備の船頭とプレスのかけ方、ボールを自在に操り攻撃のタクトを振るうキャプテンが回復の見込みに少なくとも3週間以上と予想される怪我を負ってしまい、今節のNLD、そしてアウェイシティ戦の出場が不可能に。

 また、カラフィオーリも同様に負傷。スミスロウやネルソン、エンケティアらを断腸の思いで放出した矢先に選手層がかなり薄くなる非常事態が起こってしまった。

 それでも、近年の対スパーズはかなり良い成績を残しているのも事実。ウーデゴール×ライス不在という飛車角落ち、メリーノ、冨安、ティアニー、ジンチェンコらが居ない状態でも、ライバルに勝てる程のチーム全体としての地力は付いているはず。今後に不安は残るものの、まずは目先の一戦を取りこぼさないよう選手たちには奮闘して欲しい。

キーポイント:トーマス×ジョルジーニョの中盤がどれ程機能するか

試合情報

スターティングイレブン

4-4-2?4-2-3-1? ベンチは半数以上がユース組(中盤は控えがユース組のみ)

ハイライト

試合内容・所感

・トロサールとハヴァーツ横並びの4-4-2でリトリート気味な固い守備から入る。心無しか覇気がないように見える。

・10分頃にようやく自分達の時間。落ち着いて繋げない現状、マルティネッリを筆頭にシンプルなラン、長いボールを使うスタイルが良さそうか。

・ゴール前でのビルドアップを拾われあわや大ピンチもサリバの対人性能で何とかカバー。しかし直後少しの遅延行為にイエローとまたも不可解な匂い。

・スパーズにボールを持たれる時間が依然続くも、ショート/ロングカウンターでチャンスを創出。やはりマルティネッリがキーか、彼の抜け出しから惜しいシーンがいくつも。

・前プレスに懸念要素があればすぐかっちりとリトリートに切り替える割り切り。我慢強くクロスを跳ね返すことで攻撃をシャットダウン。スパーズは押し込んでからのアイディア力に乏しいため守り切れている。

・逆にトランジションの場面がかなり怖い。ボールが行き交う状況はスパーズ得意の展開でかなり不安。またいつもより低い位置で守っているためカウンター時人数が足りないこともしばしば。

・ボールを回収したあと、サリバ→ラヤで必ずと言っていいほどロングボールを選択。繋ぐよりもCFハヴァーツの回収力を取ったか。

・主力を欠き特に繋ぎの面で普段通りの動きが出来ていないが選手個々人のパフォーマンスは良い。特にハヴァーツのフレキシブルさ、ティンバーの対人性能、マルティネッリの突破力には目を見張るものがある。

・両チームカード入り乱れる乱戦。またアーセナル逆贔屓かと思ったが、スパーズは前半だけで5枚のイエロー。守備も攻守切り替わりの局面以外ではあまり危ない場面も無く、意外とやれてる?

・前半に続き、ここぞという場面では高い位置から相手のミスを狙うような圧縮守備を披露しコーナーを数本獲得。両SBが特に狙いどころ。

 何度も何度もカウンターで惜しい場面を作ってきた中、ここまで存在感が薄かったサカからガブリエルがロメロとの攻防を制しコーナーを沈め先制。
 サカはPL史上4人目となる開幕4試合で4連続アシストを達成。

64' ガブリエル(サカ)

・スターリングデビュー。無理くり追加点を狙うとひっくり返されそうだが、かと言って守りに入ると追いつかれそうな難しい展開。ジェズスも同様にフレッシュな働きを期待も、両者不用意なロストや守備がはまらない場面が。

・後のないスパーズの猛攻を、前半から続く整備されたリトリート+個々人の守備力で踏ん張り続ける。

・ノーロンで1点を守り切るという緊張感MAXの状況でも、途中交代に動じず余裕のあるボール運びを出来ている神童ヌワネリ。交代組は何故か最年少ヌワネリが一番落ち着きどのプレーをすればよいか試合状況が俯瞰出来ている。

個人的MOTM:Jurriën Timber

 スパーズがボールを持つ時間が長い中、我慢強く辛抱し続けセットプレーで一刺ししたガブリエルと迷ったが、ここはティンバー。これまでは「守備力のあるジンチェンコ」といったように中での組み立てがメインロールであったが、今節はディフェンダーとして対面のブレナンジョンソンをシンプルな走力と簡単に足を出さない粘り強さでほぼ完封していたと言っていいだろう。

 クロスの跳ね返し、前線へのサポートも怠らず、ヴィカーリオと衝突したシーンでは今まで見た事のない熱さで胸ぐらをつかむ瞬間もあり、ノースロンドンダービーとはなんたるやをプレー・メンタル両面で表現していた彼がMOTMにふさわしいかなと感じた。

試合総括・今後の展望

 主力を複数人欠き、相手は新戦力を交えたほぼ盤石の布陣のライバルでアウェイ戦。今までのアーセナルなら勝ち点を落としていたであろうこの状況で、試合を通しリスクリターンを天秤にかけ、各局面でその時出せる出力を維持し、そこに選手個人のプレーを添えるという強豪らしい戦い方が出来ていた。

 特にスパーズにボールを持たれている時間帯の動きが素晴らしかった。トロサールがウーデゴール役でハヴァーツと横並び、ジョルジーニョとトーマスが中央を締める4-4-2ブロックは前衛守備とリトリートのバランス感覚が絶妙で、スパーズ側からすると楔を打ち込みずらく、仮に一本良いパスが通っても4-4ラインが素早く上下に圧縮し比較的容易にボールを掻き出せていた。そしてひとたびカウンターとなると、マルティネッリ、トロサール、ハヴァーツらが躍動する為、ロストからピンチを招いてしまう事を考えると迂闊にアーセナル陣内へチャレンジするのも難しかっただろう。

 試合前はどうなる事かと思い、実際いくつも危ない場面を作られはしたが結果は勝利。苦しい台所事情でも戦える地力を感じた良い試合であった。そして次節アタランタ戦はライスも戻ってくる。キャプテンは依然不在だが今のアーセナルなら十分試合をコントロールしながら戦える相手だろう。メンバーが欠けた時に出来る事・出来ない事を区別しその時出せる100%で臨みたい。

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