電車で順番を抜かしてくる人に話しかけてみた話
生きてるうちに一回は聞いてみたいですよね。
電車で順番を抜かす人ってどういう感情で順番を抜かしているのか、
今までも順番を守ったことはないのか、
役所やその他の店でも並ばずに天上天下唯我独尊なのか。
こちとら興味津々なわけっすよ。
そんなわけでね、こないだ電車で順番を抜かしてきたおばちゃんの真横に座って話を聞いてみました。
普段は人から話しかけられまくっているので、たまには人に話しかけてみようかなというささやかな冒険心をお楽しみください。
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移動距離わずか2駅(特急乗車にて1駅)のため
家の最寄りの駅でいつもどおり電車を待ってたわけですよ。
特に混み合うこともない電車なんで正直順番を抜かされようが抜かされまいが全然座れるんすよね。
それでも一定数居るわけです。順番を抜かす人が。
今まで特に気にしてなかったわけなんですが、電車が来た途端どこかから颯爽と現れ、
ドアにベタ付けで、いの一番に乗り込むおばちゃんを見ていると
今どういう気持ちなんだろうな〜
と気になってきたんで、ちょうど良いし聞いてみるかと真横に座ってみました。
颯爽と現れたおばちゃんの真後ろ同じ歩幅で付いていき、ほぼ同時のタイミングで真横に着席。
ドラクエで言ったらおばちゃんと二人のパーティを疑うほどの連携の取れた着席。
ブチ破れソーシャルディスタンス。
二人で密な時間を過ごそうぜと言わんばかりの接近。
ぶつかり合う尻擦れる肩。
苛立つ日常にささやかな温もりを提供してみる遊び心のダンスフロア。ここが令和のディスコだぜ。
ゆるぎない急接近にて混み合ってない車内でこの二者間だけ乗車率150パーセントの混み合いを実現。
ここまで異様に近かったら今のご時世こちらの存在が気になりますよね。こいつはなんだ近すぎると思って貰えりゃ好都合。
システムオールグリーン!
そういうわけで第一声、出ます!
「めっちゃ買いもんしてるやん、晩飯何作るんカレーか?」
この距離感、話しかけられているのが確実に自分だとわかる内容。
一発目から「さっき抜かしましたよね!?」だと
キレてるみたいになって、目的が果たせないんで
ちゃんと浅めのジャブから撃っていくのが大切です。
晩飯に何を作るかだけ聞くと返事に時間がかかるので
この場合カレーかどうか適当に置いて否定か肯定をさせるとタイムが縮まります。
「カレー違うよ、今日は鶏肉煮るんや。」
「電車乗るときっていっつも順番抜かすんか?」
「え?」
普通の会話が始まった瞬間に聞きたいことを聞いてしまうと相手が冷静さを欠いて良いですね。
また、一回会話してしまったので無視するという選択肢が消え返答をしてしまいます。
ここからはおばちゃんの返答を雑誌の謎特集風に解説しながら続けていきたいと思います。
「病院とか役所とか飯屋とかでも全部順番抜かしてんの?」
「でも今日乗るとき抜かしたよな?理由あるんか?」
「それって相手がデカくてめっちゃ強そうなオッサンとかやったらやらんやろ?」
「人様のことナメ腐って生きとるから、相手みて選んで抜かすか抜かさんか決めてやってんねんな?」
「相手抜かすんってやっぱ気分ええんか?」
などと会話に花を咲かせながら、言ってる間に終着駅。
せっかく出会ったことだしこの機会をくれたことに、
恩を返しておくか〜と思ったんで
「おっ、着いたで、ほら降ろしたるわ。」
「え?」
「すいませーん!!!!!この人一番に出してあげてくださーい!!!!すいませーん!!!!通りまーす!!」
おばちゃんが人に飲まれていくのを見ながら感じる一日一善。
まあこう話してみるとね、
電車で順番抜かす人にも家族が居て、
その人のために買い物をして、その人のために鶏肉を煮込むわけですよ。
泣ける話じゃあないですか。人間の営みじゃんつって。
その帰りに急に変な奴に話しかけられた日になったなら
「電車で順番抜かす人の家族」の団欒の一助になるわけで、クゥーいいね。
煮物をつつきながら、穏やかに流れる時間。
その時間に流されうやむやになる罪悪感。
その時は是非自分のやったことを無かったことにして、
急に変な奴に話しかけられたと改変して話してほしい所存っすよね。
普段考えもしない事ですが、自分の家族も外ではこういう感じで違う顔を持っているわけっすね。
誰しも被害者、加害者になり得る。
今のインターネット、特にツイッターなんかはなんだか被害者が飽和してて変な感じがしますわな。
目向けてないだけで、きっと順番抜かしたおばちゃんも目の前で子供とかが転んだら助けてくれますよ。
もっと全体にライト当ててちゃんと陰影を読み取りてえというか、
目先の出来事1つだけで人間ごと判断する風潮ってなんか寂しいなって思いますよ。
そういうのの良さを噛み締めて、忘れず生きていきてえ。
今日は鶏の揚げ物でも食おうかな〜。