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私と山

人はなぜ山に登るのか

「なぜ、山にのぼるのか。そこに、山があるからだ。」
 イギリス登山家 ジョージ・マロリー


自分も夏から秋の間1か月に1~2回のペースで山登りをしている
職場の人に何度も

『何時間も歩いて、大きな荷物背負って、あんなに大変なのに。
 なんで山登るの?』

と聞かれた
そしていつも私は

「登ってみたいから」

と答える

そう答えるたびに変わってんなこいつと思われ
ちゃんと生きて帰ってくるんだよと温かく見送られる


苦痛だった山歩き

高校時代登山部だった私の両親は
大人になり夏休みの旅行で一人娘を連れて低山やハイキングを楽しんでいた
そしてそれに連れていかれた子供は私だった
当時の私はハイキングすら嫌だった
木道ならまだマシだったかもしれない

歩かされたのは整っていない土の道
でこぼこ道に濁った水たまり
鬱蒼と茂る草木は皮膚の弱い私には天敵
草でかぶれたりO型の血を求めて蚊にたくさん喰われたり
日差しも嫌だった
暑い 眩しい
子供の視線からは永遠と続くゴールの見えない道でしかなかった
嫌々文句吐きながらイライラして走っては高山病で頭痛に苦しみ更に怒りが増した
どこを歩いたかは覚えてはいないが歩いた目の前の感覚と感情だけは今でもよく覚えている


大人という余裕と軽い気持ち

「富士山に登ろうよ」

ある日同僚が私に声を掛けてきた
きっと今後富士山に登ろうと考えることはない
折角の機会だ
それに日本人なら富士山くらいは登っておくのも悪くない

子供の頃に山歩きの経験はあれど富士山となると本格的な装備が必要
まず山登りに必要なものが買えるお店を調べることから始まった

近所のアウトレットで手あたり次第お店を探す
なんだかこのお店、山のお店っぽい
入ったのがmont-bellだった
兎に角何かしら揃えなければ
無知だった私は店員のお兄さんに頼った

トレッキングシューズ
靴なんてサイズで決めて履き心地確認して購入していたが
山歩きの基本ともなるトレッキングシューズは足を守るために
慎重に選ばなければならなかった
足のサイズを測り、目的に合わせた靴を選び、段差や上り下り坂を歩く
足首を固定され、足を覆われた慣れないその靴は
試し歩きすら苦労させられた
そして紐の結び方も

ザック
いろんな色や形、大きさがあり何を選べばいいのか分からなかった
店員さんに富士山ならこの位の容量で価格を抑えたいならこれ
と選んでもらった

そしてレインウェア、衣類など必要最低限のものをここで全て購入した


登山日富士山は雨だったので行先を変更し木曽駒ケ岳になった
深夜同僚の車で菅の台バスセンターまで移動
朝一の路線バスでは道路に猿が居て同僚と朝からはしゃいだ
しらび平からロープウェイで千畳敷カールへ
天気は生憎曇り空だったが
ここがよく写真で見るあの千畳敷カールか
と実感したと共に
この先に登る山なんてあったんだと驚いた

山歩きに慣れている同僚のペースは速く
着いていくのがやっとだった
特に段差の大きい石は膝に痛みを与えてきた
石段を登りきるとその先には開けた景色と山小屋が見えた
そこからは目に見える目的の道の先をひたすら目指した
再び上へと登る

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ほんの一時、灰色の雲が開け緑肌の山々と青い空、白い雲が見えた
振り返ると自分が今まで歩いた道に自分の頑張りが目に見えた


心を奪われた青空

「地球は、青かった」 
 世界初の宇宙飛行士 ガガーリン

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空がこんなにも透き通った深い青だったことにとても感動した
今にも届きそうな真っ青な空
一部雲がかかっててくっきりと一望はできなかったが、私は真上に広がる
空の青さだけで満足した

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ずっとこの景色を眺めていたい

同僚は2956m達成に心躍らせていたが、私は青空と緑の山肌に夢中だった

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下山の時はさらに雲が開け何度も足を止めては目に映る景色を
足元を悪くさせていた岩場の色さえも美しく
名残惜しく別れを告げた


またあの青空に

その後同僚は地方へ引っ越し
私の周りに山登りをする人はいなくなった
折角買った山道具一式
手元にはデジタルカメラもある
またあの青い空に出会いたい
他の山の上からはどんな景色が見えるのだろうか

ここから私の山登りが本格的に始まった

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