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高校の中庭にプレハブ小屋がある。小屋と言っても優に100人は収容可能だから適切なもっと別の呼び方があるのかも知れない。そこがわたしのいる吹奏楽部の部室だった。 プレハブ小屋の屋根を覆うように植わっている大きな銀杏の木から落ちた黄色の葉っぱを避けるようにして、プレハブ小屋へ続く外のコンクリート通路を急ぎ渡った。 今日は三年生の引退式ともいうべきちょっとしたセレモニーがあるのだ。 部活の最大イベントである夏の定期演奏会が終わった後、先週の文化祭のステージをもって今年
高校三年の夏休み最後の日曜日、吹奏楽部の定期演奏会は、ヤバいくらい盛り上がって終わった。 うちらの部にとって年に一度の定演はめっちゃ熱いイベントだった。一週間前から恒例の合宿が始まっていて、終わった翌日に解散する。そして北国の短い夏も終わってしまう。 プレッシャーからの解放と終演間もない興奮がごちゃ混ぜになって今夜の高揚感は格別だ。誰が誰を好きだろうがそうではなかろうがそれを叫んでしまいたくなる魔法の夜だった。 同室のフルートの後輩、ピロコがそわそわしている。