【ショートショート】『半分ろうそく』
それは多分我が家だけの言い伝えだった。
『半分ろうそくは幸せのしるし』
家族は皆、朝起きて仏壇のろうそくが半分になっている日は良いことがおこると信じていた。
母は毎夜新しいろうそくを立ててから寝る。
それがあくる朝、半分まで短くなっている日がある。
僕が小学校へ入学するその日も『半分ろうそく』だった。
遠足の日は毎年『半分ろうそく』だったし運動会の日もそうだった。
そんな朝、母は嬉しそうに僕を仏間まで手を引いていった。
おばあちゃんは、傍でにっこり顔で見守っていたものだ。