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気候変動、現在志向バイアス(7/2/2023)

現在志向バイアスという行動経済学とかでしばしば言及される認知バイアスがある。これは、要するに人間は将来生じる価値を過小評価しがちな傾向があることを示すもので、息の長いプロジェクトではかなり厄介な存在となる。

気候変動は直ちに影響を感じられないものの、数十年スパンでみたら確実に全世界の人に何らかの悪影響を与えるとされている。近年少しは気候変動に目が向けられはじめているものの、いまだに気候変動に対して懐疑的に感じてしまう人は少なくない。その原因は色々あると思うのだけど、一つは現在志向バイアスだと思っている。

気候変動対策にはコストが伴う。化石燃料を使わないのであれば、別のエネルギー資源に頼る必要が生じる。再生エネルギーの普及のために補助金を用いるのに加えて電気代を上げる。真夏にもかかわらず節電の必要性からクーラーの設定温度を上げると不快になる。気候変動関連情報を開示するために膨大なデータ収集と資料作成を行う。直ちに悪影響が生じない問題に対して、なんで今を犠牲にする必要があるのか。そう思ってしまうのは認知バイアス的に当然であって、あまり強く非難することはできない。特に発展途上国に対して気候変動の対策のためにコストを負担させることは邪悪であるとも思うし、だからこそ気候変動が原因とみられる自然災害によって発展途上国が被った損失と損害の補償は、先進国が支払うべきだという「損失と損害」がテーマになった。

それでもこのような現状志向バイアスを乗り越えて、将来世代の抱える苦しみの種である気候変動という難問を解決しようとしている人たちはいて、彼らのことは全力で応援したいし、自分もその仲間に加わりたいと考えている。一方で、気候変動原理主義的な行動には違和感を感じているところもある。特に途上国に気候変動解決のためのコストを押し付けることは絶対に間違っているし、そこは欧米や日本をはじめとするいわゆる先進国がそのツケを払うべきであって、気候変動を理由に途上国の発展を阻害する権利はない。現在世代の内誰がそのコストを払うのが公正であるのかを考えながら将来世代のための行動を取るべきなのだろうけど、みんな自分がコストを払いたくはないし、やっぱり現在志向バイアスが働いて、なかなか気候変動対策は進みづらい。どうしたものか。

Dissertationは企業分析が27社完了して、残り73社。1日10社ペースであと1週間で終わる予定。その後は統計処理して結果を解釈する作業。7月末に1stドラフトが完成すれば、最高のスケジュールなんだけどうまくいくかな。



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