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PとTのAで作る信頼関係とは?

 「PとTでAするPTA」とは「保護者と教職員・保護者同士の信頼関係を作るPTA」だと考えています。(PとTでAするPTA
 「PとTでA」をして作りたい「信頼関係」とはどのようなものでしょうか。

どのような「信頼」を作るか

 「信頼」という概念はこれまでに多くの研究がされ、様々に定義がされていますが、いずれの定義も「他者・集団に対する期待感」に焦点を当てることで共通しています(2016a 露口 p.105)。
 また、「信頼」の分類もされていて、「一般的に人は信じられる」という「一般化信頼」と「この人・集団は信じられる」という「特定化信頼」。さらに、「特定化信頼」の中でも、「この人は信じられる」という「個別的信頼」と「この集団は信じられる」という「集団的信頼」に区分することができるとされています(2016a 露口 p.106)。
 「その学校」に通う子を持つ「保護者集団」と、「その学校」に従事する「教職員集団」で構成されるPTAですから、「集団的信頼」を作ることがPTAにとっての役割になるでしょう。また、個別の教職員と個別の保護者の「個別的信頼」もとても重要です。そのためにPTAにできることは、そのベースとなる「集団的信頼」を作ることになるでしょう。

関係的信頼(Relational Trust)

 Bryk & Schneider(2002)は、学校・教員と保護者との信頼関係を以下の三つに分類しています。

本質的信頼(Organic Trust)
学校(教員)の社会的地位が高く、保護者による教員の専門性への畏敬の念が強い状況下において成立するものであり、教育は専門家である教員に任せ、保護者は口出しすべきではないとする他者依存性の強い信頼関係

契約的信頼(Contractual Trust)
保護者の委託(期待)内容を学校が履行(応答)することで成立する信頼関係を意味する。この信頼概念にしたがえば、保護者は学校(教員)にとっての顧客であり、学校選択の権利をもち学校運営や授業を評価する主体として位置づけられる

関係的信頼(Relational Trust)
学校(教員)と保護者が共通の目標に向けて、互いに期待感をもつとともに、協力的態度で接する信頼関係

(2016b 露口 p.157)


 Bryk & Schneider(2002)は、「本質的信頼」と「契約的信頼」は現在の学校では機能しないため、「関係的信頼」が目指すべき理想的な姿と結論付けています(2016b 露口 p.157)。

PとTのAで作る信頼関係とは?

「PとTでA」をして作りたい「信頼関係」とは「関係的信頼」だと考えます。
「学校(教員)と保護者が共通の目標に向けて」というのは、「アソシエーション」の定義の「ある特定の関心を追求し、一定の目的を達成するためにつくられる社会組織」に重なります。(PとTでAするPTA
 また、「互いに期待感をもつとともに、協力的態度で接する」というのは、PTAの再定義の「保護者と教職員・保護者同士が、主体的に対等な関係で課題を共有し、その解決に向けて取り組む」に重なります。(PTAとは何か?=PTAの再定義

PTAとは
子どもたちのよりよい教育の実現を目的に、保護者と教職員・保護者同士が、主体的に対等な関係で課題を共有し、その解決に向けて取り組む団体

 保護者と教職員・保護者同士が対等に課題を共有し、その解決に向けた互いの努力を期待し合い、協力的に取り組むことで「関係的信頼」が構築されることが、「PとTのA」で作られる理想の信頼関係だと考えます。
 

参考文献

Bryk, Anthony; Schneider, Barbara. Trust in Schools (American Sociological Association's Rose Series) . Russell Sage Foundation. Kindle 版.

露口健司 「第6章 保護者による学校信頼」『ソーシャル・キャピタルと教育——つながりづくりにおける学校の役割』露口健司編著 2016a ミネルヴァ書房

露口健司 「第8章 信頼を構築する学級・学校の経営戦略」『「つながり」を深め子どもの成長を促す教育学——信頼関係を築きやすい学校組織・施策とは』露口健司編著 2016b ミネルヴァ書房

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