【産業医講話】聞く人のことを考えていない話は時間の無駄だよね
病院勤務の医者とは異なる仕事を色々としている産業医ですが、
今回はその中で、産業医講話についてお話しします。
この記事では、聞く人にとって意味のない時間にならないよう産業医がやるべきことについて解説しています。
安全衛生委員会の場で行われる機会が多い産業医講話
産業医は主に安全衛生委員会という場で産業医講話の実施を依頼されます。産業医講話は産業医の業務として法令で定められている健康教育の一つと捉えられ、健康の保持増進を図るために行われます。
安全衛生委員会(会社によっては衛生委員会)とはその名の通り、労働者の安全面や健康面に関する計画を立てたり、その実施状況を管理したりするために毎月開催される会議です。
医者はたくさん知っている、だけど…
医者は医学の知識をたくさん持っているため(当たり前ですが)、働く人達に教えられることは色々とあります(病院の産業医であれば少し異なるでしょうが)。しかし、委員会の中でその産業医が得意な分野の病気について、発症のメカニズムや治療方法などの話を詳しくされても「???」って感じですよね。それは産業医講話として意味があるんでしょうか?
何が言いたいかというと、その会社で働く人に役立つ情報かどうかを考えずに講話を行う産業医が結構いるということです。
上の例で言えば、市民医療講座など「その病気について知りたい!」と思っている人(患者さんとかその家族とか)が集まる場であれば、もちろん意味がありますが、委員会の場で話すのは適切か?ということです。
働く人達の健康保持増進につながるかを考えて話しましょう
産業医が委員会の場で話す対象は働く人達(目の前にいるのは委員会参加メンバーですが、委員会の決定事項などを職場へ共有されます)で、目的は働く人達の健康保持増進につなげるためとなります。
なので「どうなれば健康保持増進につながるか、そのためにどんな情報が必要か」をしっかり考えて内容を作っていく必要があります。
自戒の意味も込めて言いますが、聞いている人達にとって意味があるかどうかを吟味せずに話をすることは単なる自己満足ですよね、気をつけなければいけません。
正直、医者がプレゼンを行う機会って症例発表のように、「対象は同じ医者で知識レベルもそう変わらない+自分が言いたいこと=相手も聞きたいこと」であることが多いので、知識量に差があり背景の違う人達に教える・伝えることに慣れていないんだと思います。もちろんプレゼン上手で役立つ話をされる先生もいらっしゃいますが。
働く人のためになる教育を行うためにすべきこと
では、委員会で意味のある産業医講話を行うにはどうすればよいのか、
それは対象者分析とニーズの把握を行うことだと考えています。
そこで働く人はどんな人達かを分析する
何を伝えればその会社で働く人達の健康増進につながるか、またどんな点で健康面の課題があるか。それを探るためには働く人達について知る必要があります。具体的には
・どんな仕事をしているか(作業内容や残業時間、勤務形態など)
・男女構成や年齢層
・健康診断結果など健康状態
・どのような知識や経験を持っているのか
などが挙げられます。
これらは普段の産業医活動の中で得られる情報が多いです。どのような知識や経験を持っているか理解していれば、既に知っていること・できることを改めて説明してしまう、なんてことを防げます。
働く人達、そしてその集団である会社に必要な情報を探る
もう一つ、ニーズの把握に関しては、例えば、健康診断結果で有所見者割合が高い会社であれば、健康診断結果の見方やその後の対応について教えることは健康保持増進のため、働く人達と会社「に」必要な産業医講話と言えそうですよね。
また、暑い日が続いており会社側が熱中症について心配していれば、働く人達と会社「が」必要とする教育として熱中症予防対策について教えるのもよいでしょう。
このように産業医がここで働く人達はどのような人たちで、どのようなことを知りたいのか・知ってもらいたいのかについて検討してから内容を作り上げていくと産業医講話はとても有意義な時間になると思います。
最後に
産業医講話は会社からお願いされて実施するものですが、産業医は参加者の時間をいただいているという意識を持たなければいけないと思います。
「委員会参加者人数×業務時間中に産業医講話を聞く時間」ってお金に換算すると結構高くないですか?それで働く人達にとって意味のない情報だけ喋られても困りますよね。
もし、会社で産業医講話に参加する機会があったら「自分たちのこと考えて作ってるか?」と思いながら聞いてみてください。そして、「意味がない!」と感じたら、どんなことを知りたいのか産業医(もしくは担当者)に伝えてみてはいかがでしょうか?
より良い産業医講話が聞けるようになるかもしれません(テーマに困っている産業医も喜ぶかも!?)。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
少しずつ産業医の仕事についても触れられていけばと思います。
次回をお楽しみ(?)に!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?