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映画宣伝における広告の役割

映画宣伝という特異性

以前の記事でも書きましたが、映画宣伝とはいわば、劇場公開に向けての短期決戦であり、劇場公開自体が作品の宣伝であり(公開ではトータルでネットプロフィットは出せない、出さなくていい・・・いや、出したいけど、到底無理)、宣伝予算は配給会社が負担し、チケットは劇場のアプリやチケットアプリ、実際の劇場で発生するので、宣言における広告の直接購買の効果は結局わからないので、ゲームや他のデジタルコンテンツでやるようなデジタルマーケティングの最適は半ば、諦めていることの方が多いと思います。

要はメーカーと流通の関係ですね。そうなると、配給会社はメーカー立場でブランド目的の広告に専念し、流通が実際の興味・関心層からの刈り取りを担うのかいうとこれまたスーパーやコンビニがそうそう、個別の商品を毎回自腹で宣伝などしないのと同じで、劇場が個別の作品の為に予算を割いてマーケティングをする(全くない訳ではない)ことはあまりないのが実情です。購買までのタッチポイントが複数あり、意思決定まで時間もかかる自動車や不動産とも購買までの尺が違いますし、コンビニのお菓子とも違う。

最近では、メーカーのD2Cもあり、ますます各企業がユーザーとのつながりやその為の手掛かりとしてのデーター活用を加速させてますが、なんとなく、映画業界はこれと言った打ち手がないまま悪くいうとのうのう?と過ごしてきました。

配信プラットフォームの急激な成長も、劇場公開作品のウインドウ戦略というグローバルな紳士協定の元、それはそれ、これはこれ的に距離を置いて過ごしてこれました。

コロナ禍までは・・・

コロナ禍で変容が迫られる映画の劇場公開については、上記の二つの記事にも掲載しております。

劇場を目指してきた作品がコロナ禍で劇場で公開できない。既に、映画館が再開している国、地域もありますが、ソーシャルディスタンスを考慮したオペレーションへ移行し、座席数もこれまでの25%から半分での運営が必須となっております。

延期になった大型作品は宣伝のやり直しもあるでしょうし、まさに、「いつ」公開するか各社、頭を悩ませているところです。

中規模作品や独立系の作品は大型作品の延期でチャンスも増える反面、人気作品の上映期間が長くなったり、これまで中規模作品を上映している劇場も商業大型作品などを上映する頻度が上がるかもしれません。

規模に関わらず、劇場キャパがフルポテンシャルでないので、改めて、劇場→配信のウインドウ戦略を見直し、配信をメインとする製作、配給会社も現れてきております。

一気に全てのビジネススキームが変容しないまでもコロナ禍は間違いなく映画業界の構造や宣伝を超えたマーケティング方法の見直しなどを迫られることになるでしょう。

映画宣伝におけるデジタル広告の役割(おさらい兼ねて)

映画産業全体のDXは今後、様々なバリューチェーンにおいて、日本でも進んで行くのではないでしょうか。そうなって欲しいですね。

範囲を少し狭くしまして、宣伝活動におけるデジタル広告の活用について、現在、そして、今後、配信も劇場と同じように戦略的に映画コンテンツのチャネルとしてその存在が大きくなっていく過程で、着目すべき点などを考えてみたいと思います。

下記のブログにあるように、宣伝活動において、デジタル広告の古くから?の利点を活用した行動ベースでより、作品を鑑賞しそうな観客に絞ってターゲティングしていくことは費用対効果でも高いことがわかっています。

予告編を観て、実際の上映時間を検索したユーザー(但し、劇場サイトには遷移しなかった)は、単にメディアベースの興味関心ユーザーより4倍程度、費用対効果が高い結果となっております。

当然と言えば、当然ですが、この予告編に接触し、興味を持っていそうなユーザーだけに予算を絞って運用するというのはゲームや消費財のECでは珍しくない手法ですが、映画宣伝においてはまだ、活用が進んでいないのが現状です。

Gruviでは、ソーシャル広告プレーヤーを活用して、興味・関心を示したユーザーへのリターゲティングを支援しております。

ここで広告の役割を超ざっくりおさらい。

広告の役割:
認知→TVCMなどで広く広める(360度のメディア施策含む)
興味喚起・訴求→タイアップや動画広告などで、興味喚起
関心拡大・購買意向→ソーシャルメディア広告、オーガニックなどを活用に関心拡大を図る、並行して、行動ベースのリターゲティングを実施して、予算の最適化(無駄打ちを防ぐ)
刈り取り:劇場と連携した広告商品でチケット購入へのラストマイルを強化

関心拡大および刈り取り施策を進めるには、その効果が可視化されることおよび、精緻なターゲティングが必要になります。配給会社メインで映画マーケティング進める場合、この最後の二つの工程はこれまでは簡単には実現しませんでした。

現在は、上記のソーシャル広告プレーヤーや劇場データと連携した広告商品(次回紹介します!)もいくつか出てきているので、以前より、他の業界で実施しているような広告活用や評価ができるようになりました。

配給会社、劇場、VODがお互いに手を取ると・・・

更に、映画の消費場所として、VOD、配信プラットフォームがより重要になりますと、宣伝の効果を検証し、最適化するゴールがVODでの販売になってきます。AmazonやNetflixのような巨大プラットフォームはもちろんのこと、個別ジャンルに特化したVODや広告モデルのVODなど、こちらも日々、新しいサービスが登場してますが、そもそもが配信なので、視聴履歴も購入のデータも全てがデジタルで管理されているので、広告効果検証環境は既に整っています。

昨日のカンヌネクストのワークショップでは、配信、劇場公開、そして配信というエコシステムがあながち妄想でない中、配給会社、VOD(配信)、劇場がそれぞれのタッチポイントのデータを共有することで、個別作品の宣伝にとどまらないユーザーの価値を見据えた投資ができるという話も出てきました。

VOD側が配給会社にデータを提供する見返りとして、より優位な条件でコンテンツの契約を取り付けるとか、VOD上の広告収益を分配するとか、特定配給会社の作品群を継続的にVODの視聴データを活用して宣伝するとか、お互いが手を取ることで、経済効率が上がるのではないかなと感じました。

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コロナ禍を経験し、映画やコンテンツ業界は共創の道を選ぶことができるのでしょうか。

配信、劇場公開に限らず、映画を効果的に宣伝することに興味があれば、是非、お声がけください。