スキーとスキーボードとスキーワックス(その3 食パンとバターとクリーニング)

この記事は連載です。

前回まではこちらから

 これまでの話で、どう例えればスキーワックスってイメージしやすいかを改めて考えてみました。

 食パンでした。

 食パンにバターを塗って食べる方は多いと思います。そのまま食べても美味しいですが、バターを塗った方がより美味しくなりますよね。
 ですが何もせずに袋から食パンを取り出して冷蔵庫からバターを出して塗ろうとすると…バターが硬くてうまく塗れません。均一に塗るのもとても難しいです。
 そんなときは食パンをトーストするとキレイに塗れます。キツネ色に焼いた食パンにバターをたっぷり塗り付けて食べるとおいしさも一塩です!

 このイメージ、かなりスキーワックスのイメージに近いです。バターを食パンに染み込ませようとイメージしたとき、バターを溶かして塗ればキレイに染み込ませられますが、バターが溶けないと塗ることが難しく浸透しません。

 また、たっぷりしみこませようとしても限界があり、パンの上に浮きますよね。それがワックスを塗りすぎているのとイメージが近くなります。

 じゃあパンを温めれば塗りやすくなる!とよく焼くとパンは黒こげ…そう言う状態だと塗ってもバターは染み込みません。焦げた部分を削り落とせばなんとか塗れますが、勿体ないですし、本来のおいしさでは無いですよね。

 この食パンイメージはだいぶスキーワックスとイメージが近いと思います。いかにバターであるワックスを使いやすく溶かして塗るかがポイントですね。

 そんなイメージを得つつ続きです。

 前回までで滑走面のことは随分ご理解頂けたかと思います。そしてその中で「クリーニング」と言うものが出てきました。

 スキーやスキーボードのクリーニングと言うと、タオルで拭ってリムーバーで汚れを浮かしてさらに拭き取り、クリーニングワックスを塗って剥がしてブラッシング!と言うのが流れです。でもこれ、どこまでやればいいのか判らないですよね。

 ワックスは滑るために使いますが、実は滑らない原因でもあります。食パンイメージで、バターを塗らずにパンの表面をなでると、細かく削れてパン粉になっちゃいますよね。それがバターを染み込ませてあると削れなくなる。
 なんですが、染み込みきれなかったバターが乗っかってると、それもそれで抵抗になります。

 スキーワックスが厄介なのがこの染み込んでいないワックスで、このワックスは殆どの場合で邪魔なものです。なのでチューンではワックスを塗ったあとのブラッシングが凄く大事で、これをしっかりやると滑りはよく汚れにくい板になりますが、出来ていないと滑りもイマイチで汚れやすい板になります。
 そう言う理由からか、ワックスを一切しない方が滑る!とおっしゃる方も居ますね。汚れる原因が無ければ滑りは良くなるのですから。※ただし劣化と言う別問題が発生します。

 ワックスで沼に陥る理由の多くがこのブラッシング不足で、何塗っても違いが無いと感じているなら、なおのことブラッシングが大事かと思います。

 とは言え経験あればわかりますが、ブラッシングって大変なんですよね。

 それを楽にしてくれるのが『スクレーピング』で、プラスチックの板で滑走面のワックスを削りとってしまう工程です。ブラッシング前にしっかりやると、ブラッシングが凄く楽になります。

 しかし、スクレーピングは実は難しく作業で、ワックスが硬いほど大変になります。柔らかいワックスならば軽い力でスーッと削れるのですが、硬いワックスはゾリゾリバリバリ、あまりにも大変でブラッシングも大変です。

 こうした経験者向きな硬いワックスを初心者が使おうとすれば、暖めてない食パンとバターのとおり、ちゃんと美味しい状態にできません。

 クリーニングワックスはクリーニングといいながら実は優秀なベースワックスで、イメージとして『クリーニングでも使えるワックス』と思って貰った方が良いものです。柔らかく使いやすく削りやすくブラッシングも簡単。しかもワックス原理から、柔らかいワックスを先に染み込ませておくのは重要なので、この作業は本当にオススメします。

 ぶっちゃけますと、クリーニングワックスが出来ていれば普段はリキッドワックスだけで十分滑ります。GRの試乗板はこれですし、製品の板も仕上げはリキッドワックスです。

 と言うわけで次回はこのあたりのやり方など解説しましょう!明日は連載スキボ小説の更新日なので次回は来週ですね!



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