ペットボトルに水を持って行きましょう

 飲用ではないのですよ。

 春のこの時期、スキー場では雪を維持するために硫安という肥料が撒かれることかあります。硫安は硫化アンモニウムの事で、農業ではかなり重要な肥料の一つでもあります。

 硫安は水に溶ける際に、強力に熱を奪う性質があります。雪の硫安を撒いて混ぜ込んでおくことで、日中の高温でも雪が溶ける際に硫安が熱を奪うのでそれ以上溶けることを防ぐことができ、元々肥料なので比較的安全性が高く(環境には万全ではありませんが)、コストも安いのでスキー場ではしばしば使われます。特に雪がないと困るリフト乗り場付近や、パーク内で使われる事が多いですね。

 この硫安。それなりにメリットありますが、スキー板にはあまり良いものではありません。硫安は金属を錆びさせる作用があり、硫安が撒かれたゲレンデで1日すべってそのままにしておくとあっさりエッジが錆だらけになるだけでなく、錆びは徐々に進行して大変なことになります。エッジ全てが酷い錆なんてことも珍しくなく、この錆の除去はプロでないと手に負えない、なんて事もあります。

 GRでも毎年硫安によるものと思われる依頼が数件きます。中には買って三回しか使ってないのにエッジ全て錆びたなんて事も。

 それだけでなく、滑走面にも悪影響があります。硫安を撒いた直後の雪は急激に固まって強い氷の粒子になります。これが春だからと春用の柔らかいワックスしか塗っていないと保護されず、非常に滑走面が毛羽立って滑りが急激に悪くなります。これを防ぐためにGRでは春こそ保護の為に堅いワックスを併用するようにお伝えしていますが、それでも程度が抑えられるくらいです。

 毛羽立ってしまった滑走面には、その毛羽立ちの僅かな隙間に硫安が汚れや油と共に入り込んでしまい、簡単なメンテナンスでは除去できず、ワックスしても走らない板になってしまいます。これが乾くと化学性によって余計に酷い事にもなりかねません。

 ではどうするか?滑り終わったら真水で洗い流すのが一番です。硫安は水に溶けやすいので水で簡単に薄まります。薄まればそれだけ影響は軽くなるので、これが最も手軽です。

 ですが、水場を用意しているゲレンデはあまりないので、この時期は自前で水道水でよいので2リットルほど持っていって洗い流しに使いましょう。駐車場に戻ってきたらまず水をかけて洗い流し、タオルで拭き取ります。これだけのことでエッジや滑走面は硫安の影響を軽減する事が出来ます。
 かけにくいなら100均の小さなジョウロでの良いかもしれませんね。この、板が乾く前の一手間が後々に大きく影響します。

 コツは乾く前です。

 そしてもしも更に手間をかけられるなら、エッジの錆止め剤を塗布しておけばそうそう悪いことにはなりません。

 もしも水がなく、何とも出来ない場合は、出来るだけ硫安の影響の無さそうなきれいな雪を持ってきて擦り付ける事で代用出来ます。ですがこの方法は万全と言い難いので、忘れず水を持って行くのが一番手軽ですね。

 そうそう。帰宅したらシャワーなどで洗い流すのをお忘れなく!

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