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「イエス」と言わせる交渉術!「条件」ではなく、「利益」に着目せよ 【明日から使える実践的交渉術】

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今回のテーマは交渉術になります。

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相手の条件ではなく「利益」に着目


相手の条件ではなく「利益」に着目しましょうというお話です。これはハーバード流交渉術でも言われています。ちょっと言葉は違いますが、私が分かりやすく変えたものになります。相手の条件ではなく利益に着目しましょうという事です。1つ事例を見ていきたいと思います。若手の弁護士Nさんと夫に浮気されて離婚したいという有美さん(仮名)がいました。法律事務所での打合せの会話です。
N「夫側の弁護士は慰謝料400万円払うと言っています。裁判になると浮気の慰謝料は300万円ぐらいが相場ですよ。これはかなりの好条件です。この条件で相手と合意しましょう。」
有美さん「納得できません。私は慰謝料は最低でも500万円は欲しいと言ったはずです。夫が500万円払うと言うまで納得しません。」
あなたがN弁護士だったらどう対応しますか?ちなみに浮気の慰謝料ですが、大体は300万円くらいで、500万円までいくことはあまりないです。400万円払うというのは、裁判をすると長いからです。やはり1年くらいはかかります。離婚裁判は、結構ドロドロのぐちゃぐちゃになって長くなる可能性があるので、ここの400万円払うというのはかなり客観的に見ると良い条件です。人間はなかなか経済的合理性だけでは動かないという部分があります。経済的合理性はあるけれども、納得しないという場合です。この際、何がポイントなのか、何をしなければいけないのかというと、やはり把握しなければいけないのは本当に望んでいるものは何なのかというところです。このためには条件ではなく、利益に着目しましょう。

利益とは何か

条件と利益とは何かというと、先ほどの例では慰謝料をいくらにするのか、これが正に条件です。どういう条件にしますか?300万円?400万円?500万円?というところです。どういう条件にするかにこだわり過ぎるとどうなるかというと、「慰謝料は400万円が限界なんですよね」「いや、500万円欲しいよね」「じゃあ間を取って450万円ではどうですか?」間を取ってという方法です。これはビジネスのシーンでも「間を取って、どうですか?」の様な事はよく言われています。良く考えると「間を取って」って何だ?という感じではありますが、これはこれで有効な場合もあります。しかし、「400万円が限界」「いや500万円は欲しい」これは値段交渉も同様ですが、この様な時にここにこだわってしまうと解決しなくなります。そこで大事なのは相手の真意がなんなのかということです。

相手の真意は知るためには

つまり、真意というのは相手が何を望んでいるのかという事です。これが利益です。相手が何を望んでいるのか、本当に望んでいるものを利益だとすると、そこに着目するという事が必要ではないかと思います。相手が何を望んでいるのかを知るためには、やはり質問が非常に大事になります。何を考えているのか、心の内は何なのかというところを聞いてみましょう。弁護士の仕事というと、論破するや話す仕事という風に皆さん思われているかと思いますが、実は逆で質問をする仕事です。必要な情報を聞くという事が非常に大事です。その聞くためには、やはり質問をするという事が非常に重要になってきます。
 例えば「そもそも、なぜ慰謝料は500万円にこだわっているのですか?」と聞いてしまうという方法があるかと思います。「500万円、500万円と言っていますが、なぜ500万円なのですか?何かあるのでしょうか?お金が欲しいという事ですか?」という感じです。もし、お金が欲しいだけなのであれば、ここで400万円を受け取った方が得です。裁判をして判決が出た場合300万円になってしまう可能性が高いわけですし、1年、2年かかってしまいます。今400万円受け取った方が良くないですか?という話になるわけですから。
では、なぜ500万円にこだわっているのかという事です。実際に似たような場面では、「私は今まで主人に尽くしてきました。なのに主人は若い女と不倫をしていたんです。私の結婚が否定された気がしています。この事について、主人は謝るどころか開き直る態度で…。私はそんな主人が許せないんです!」という風に言ったわけです。つまり、慰謝料500万円という事に関しては慰謝料500万円が欲しいというよりも、「私の否定されたこの気持ち、どうするの!」という話だったわけです。その心のわだかまりが500万円という数字に出てきた、つまり「主人が謝るどころか開き直る態度だった。不倫しているのに。」というところに納得ができなかったという話でした。説得と納得の違いについてはお話しましたが、「いや、分かります。裁判で400万円、300万円になるのは分かっていますが、やはり500万円じゃないと。謝らないから、あいつが!」という気持ちがあって、納得ができないわけです。これが本音の部分、つまり有美さんが本当に望んでいる部分で、これが利益の部分です。

相手の真意を引き出した後は

次に、ここが引き出せたらどうするかというと、これは実際の事例で私が行ったのは、相手の弁護士に話をして「謝らない、開き直る態度がどうしても許せないと言っています。だから、例えば謝罪文なりを書いてはいただけませんか?」という事を伝えました。法廷で直接謝って貰う事が1番良いのですが、それが難しいのであれば謝罪文などの形で「悪かった」という事を一筆入れてくれませんか?という事を伝えました。その結果、相手方に謝罪の言葉を書いてもらい、それを見た依頼者の有美さんは「分かりました。」と言って最終的には納得していただけました。これも正に500万円、400万円というところにこだわっていたら、恐らくこういう結果にはならず裁判になっていたと思います。有美さんとしては「納得がいきません。」という事で長い裁判をして、300万円を受け取るという誰も得をしない事になっていたかもしれません。なので、やはり相手の求めるものを聞き出すという事が非常に大事かなと思います。

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