社用携帯の費用を給与から天引きするのは違法【判決】
皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、社用携帯費用の給料天引きに違法判決というお話をしたいと思います。
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京都地裁で違法判決
これは報道でもありましたが、住友生命の従業員、いわゆる保険外交員の方が社用携帯電話や訪問先に配る品などの費用をあらかじめ会社から天引きされていました。これを違法だとして従業員が住友生命に対して提訴したところ、京都地裁はこれを違法と認め、30万円ほどの天引き分の支払が命じられました。
給料支払いの原則
では、まず賃金、給料というのは法律上どのように決まっているのかというところからご説明したいと思います。賃金については、賃金支払の五原則というものがあります。賃金は必ず①通貨で②直接労働者に③その全額を④毎月1回以上⑤一定の期日で払うようにされています。これが五原則なので、通常の会社員であればこのようになっているはずです。例えば、「毎月25日に労働者に現金振込で支給」といった形になっているはずなので、これは守られていると思います。ここでのポイントは「全額」であり、基本的に天引きはできません。必ず全額を払わなければいけないわけです。
給料の天引きがOK
ただし、天引きが認められている場合もあります。その1つ目が、法令に別段の定めがある場合です。つまり、法律で天引きOKだとされている場合です。例えば、源泉徴収税や社会保険料などは天引きされていると思いますが、こういった法律で定められているものはOKです。そして2つ目が、労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合です。また、労働組合がある場合は労働組合側との同意がある場合です。つまり、労働者側と使用者側が合意をしている場合にはOKとされています。
合意があった場合でも、無効になる?
では、今回の住友生命のケースではこのような合意がなかったのかというと、実は合意がありました。合意があったのですが、無効とされたわけです。これはなぜかというと、京都地裁の判決では、この協定は労働者の自由意思に基づいて同意した場合に限り同意とされているが、今回の例では原告の従業員が天引きは認めないと明示的に意義を述べているため天引きは違法とされました。従業員は書面等で会社側に「私はこの協定を認めません」とはっきりと意思表示をしている事例なので、天引きは違法とされたわけです。この点が非常に新しいというか、今回認められたところかと思います。
会社側としては、法律上は労働者の過半数の代表者と合意しているため天引きはOKだと安心していたとします。しかし、明示的に「これには従いません」と言われた場合には、その従業員を説得するか、天引きしないという対応をとらなければ違法になる可能性があり、後から「返せ」と言われてしまうわけです。
もちろん、地裁判決なので住友生命が控訴する可能性もあり、今後どうなるかは分かりませんが、こういった判決が出ています。ですので、明示的に天引きを拒否した従業員に対しては、きちんと同意をとるなどの対応が会社側としては必要かと思います。
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