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合同会社の社員権スキームの法律的な注意点【資金調達】

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、合同会社の社員権スキームで法律的な注意点という話をしたいと思います。これは意味の分からない人には何じゃこりゃ⁉という話なのですが、この合同会社の社員権スキームとは簡単にいうと、お金を集める手段の一つです。

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資金調達の手段

資金調達の手段として、例えば多数の人からお金を集めて事業をして、その利益を分配する時には、いわゆる金融商品取引法という法律があり、その業によって一種、二種など色々なものがあるのですが、登録が必要になります。皆さん聞いた事があると思いますが、いわゆるファンドです。
みんなからお金を集めて事業をやって、それを分配するという事をやりたいと思っても、当然ですが人からお金を預かるので、誰でもできるというわけではなく、金融庁・財務省からお墨付きを得た人しかできないという話になります。これは登録が必要になるのですが、この登録が非常に難しいです。もう新規の登録というのは、いわゆる大資本がある場合やかなりの信用力のある企業でないと無理です。
個人やベンチャー企業、スタートアップ企業がとれるかというと、ほぼほぼ今は無理だと思います。一方、この合同会社の社員権で募集するという事になると、これは登録が今のところ不要です。この社員権とは何かというと、いわゆる株式、株主、株券みたいなものです。株主としての権利の事を合同会社では社員権といったりします。これは登録が不要です。

合同会社の社員権~私募債との違い~

資金調達の手段ですが、1つのやり方としては少人数私募債といって、勧誘する人数が49人までというものです。50人を超えてはいけない。50人未満ですね。49人までであれば、先ほど言った様に金融商品取引法の業登録みたいなものが必要ありません。ただこれは、勧誘する人数です。勧誘する人数が49人までです。なので、大々的にセミナーをやって、こういう事をやりますと49人集まった時点でもう終わりという話になってしまいます。実際に1人、2人あ申し込んだだけでも、もう49人になってしまいます。勧誘する人数が49人までという話ですので、この少人数私募債というのは大規模にお金を集めるにはなかなか向かないという話になります。
ただ、この合同会社の社員権スキームについては499人までです。出資ベースで499人までという話ですので、結構大規模にセミナーをするという事も一応できるので使い勝手が良いねという話になるわけです。そうなると、合同会社を作って、社員権を売れば良いでしょうと。合同会社にお金が入ってくるので、チャンチャンという話ですが、ここからが注意点になります。

合同会社の社員権の募集スキームの注意点

この合同会社の社員権の募集スキームの問題点としては、社員権というのはいわゆる株式と同じイメージでいて下さい。株式会社は誰のものか?これは株主のものです。つまり、出資した人のものです。それが合同会社では社員という事になります。これは一般的にいう社員とは別です。一般的には会社の社員、従業員という意味だと思いますが、この社員権はこれとは全く別のもので、合同会社の持ち主である権利なので株式会社でいう株主、株券の事です。株主の権利だという事なので、経営に口を出す事ができます。
これと同じで合同会社の社員権これも社員となれば、経営に口出しができるわけです。でも、それは困りますよね。代表からすると、何でそんな素人に口出しされるのかという話になってきてしまいます。

その対処法としては、社員を完全無議決権にしてしまうことが考えられます。合同会社は社員総会を開かなければいけませんが、その時に議決権がない、つまり経営に口を出さない様にしようと思った時に、それは良いのかという話になるわけです。
これは明確な法律があるわけではないのですが、例えば国民生活センターが見解を出しています。それによると、定款で出資者の議決権を完全に排除して集めるという話になると、これは集団的投資スキーム、先ほど言ったファンドになりますよと。実際、お金を集めているだけだという話ですよね。経営に口を出させないで、お金だけ集めるというスキームは結局、多くの人からお金を集めているファンドと同じではないかという事を言っています。

金融庁としても完全無議決権、社員権としての性質がないのであれば、これは社員権としては認められず、集団的投資スキームだという見解も出しています。ここは議決権をどうするかの様な完全無議決権とした場合に、先ほど言った様に集団的投資スキームとして見られてしまう可能性もあるので、ここはちょっと注意が必要かなという風に思います。

特定商取引法の対象にはなる

社員権募集スキームについては金融商品取引法の適応はないのですが、特定商取引法の対象ではあります。なので、特商法のところでクーリングオフなどは認められる可能性があります。
クーリングオフは、どういう風に販売するかによって対象、非対象が分かれます。例えば、訪問販売。これは事業所以外で売る場合も該当するので、セミナーをバンとやってその場で申し込ませるというのも訪問販売になります。そういう場合については、書面の交付をして、そこから8日以内であればクーリングオフができます。
こういう特商法の定めというのは守らなければいけません。ただ、金融商品取引法の適応はないので、これは結構有利なスキームではありますが、先ほど言った様に完全無議決権として良いのかというところはきちんと設計をしてやる必要があると思います。

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