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【絆と新たな希望】母の愛を背に、重度の知的障害を持つ女性が見つけた新たな居場所

障がい者施設「清風の家」には、入所待ちの約120名がいました。その中から、選ばれたのは、突然母を失った46歳の女性、美沙子でした。

「ああ、お母さん、どうして…」

美沙子は、母親の死を受け入れられずにいました。彼女の母親は、美沙子を一人で育てながら、肺がんと闘い、最終的には病に倒れました。

「清風の家」は、重度の知的障害を持つ人々が共に生活する施設で、職員が24時間体制で支援しています。

「こうして支えられるのは、幸せだね」

と施設の一員が話します。
しかし、入所希望者が多く、選ばれし者は少ないのが現実です。

ある日、施設に住むある男性が亡くなり、新たに一人を受け入れることになりましたが、待機者は120人もいました。職員は集まり、厳しい選考を迫られます。

「どの家族も苦しんでいる。選ぶことがこんなに難しいとは…」

職員の一人がつぶやきます。

候補となったのは、施設が運営するショートステイに長期間滞在している4人です。中には、「ひろし」と呼ばれる男性がいました。彼は1年以上ショートステイに滞在しており、母親が重い心臓病で、もう家に帰れなくなりました。また、「哲夫」という男性は、3年以上の滞在で、自分や母親への危害を加えてしまうため、自宅での生活が困難になっていました。

施設の選考は、参加者全員にとって心が重いものでした。しかし、彼らは一人一人の事情を丁寧に検討し、最も支援が必要な人を選び出そうと努めていました。

長い悩みの末、清風の家は入所者を決めました。その選ばれた人物は、美沙子さん、46歳の女性でした。彼女は昨年8月から、清風の家が運営する短期滞在施設に滞在していました。美沙子さんは、最重度の知的障害を持ち、彼女のケアは極めて困難な挑戦でしたが、これが彼女を受け入れる決定的な理由の一つとなりました。

美沙子さんの受け入れのもう一つの理由は、彼女がたった一人の家族、母親を亡くしたことでした。美沙子さんと共に生活していた73歳の母親は、急な体調の悪化で救急車で病院に搬送され、その後、がんと診断されました。治療の余地がなく、わずか5日後に母親は亡くなりました。

母親との最後の会話は、筆談での交流となり、

「どこにお金があるか」

という情報とキャッシュカードの場所を伝えることだけでした。

相談支援事業所の担当者佐賀山さんは、2014年から美沙子さんの家族と関わってきました。母親が亡くなる前、佐賀山さんは母親に会い、残された美沙子さんの世話を託されました。

母親の願いは、

「自分の遺骨を残さずに焼却してほしい」
というものでした。

これ以上、誰にも迷惑をかけたくないという母親の最後の願い。

美沙子さんの母親は、緊急入院するまで多くの苦労を経験していました。
障害が重い娘を誰かに託すことができるのか、という不安を抱えつつ、適切な預け先を探すのが困難だったことや、多くの場所から断られた経験がありました。母親が去年8月に緊急入院した際、清風の家がショートステイとして美沙子さんを受け入れましたが、当初は職員に対して拒否反応を示していました。

職員たちは、美沙子さんの心情を理解しようと、じっと表情を観察して感情を読み取ろうと努めました。食事を拒否するなどの挑戦もありましたが、スタッフは一丸となってサポートを続け、美沙子さんも徐々に心を開いてきたようです。

「彼女が安心して過ごせる場所であり続けたい」
と職員は語ります。

美沙子さんを支えるのは清風の家の職員だけではなく、以前利用していた障害者の作業所の人々も彼女を応援しています。美沙子さんが清風の家での生活を始めてからは距離が遠くなり、通うことができなくなりましたが、先月、作業所で励ます会が開催されました。
27年間通った作業所での思い出を振り返りながら、「清風の家でも頑張ってね」と励ましの言葉を送りました。

美沙子さんは重度の知的障害を持ち、母親を亡くした悲しみを抱えていますが、清風の家での新しい生活が彼女にとって新たな一歩となります。
この施設では120人の待機者がいる中、美沙子さんが受け入れられたことは、職員にとっても「社会の中で不幸になった人を幸せに導く」という使命の一環です。

しかし、まだ多くの待機者がいる現状は、家族の切実な声と共に、国や行政による抜本的な解決が必要であることを示しています。

※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

最後に

最後までお読みいただき、心から感謝申し上げます。
私たちは兄弟で障害者グループホームを運営しており、皆様からのご質問やご相談をいつでも歓迎しています。
このホームが、障害を持つ方々にとっての温かい居場所であり続けることを願っています。お気軽にご連絡をお待ちしております!

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それでは次回の記事もお楽しみに!


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