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3つの観点から捉える、日本人の宗教の特徴とは

【紹介文献】
宗教と日本人-葬式仏教からスピルチュアル文化まで- 岡村亮輔著

  本書は、日本人の宗教やその特殊な価値観について、信仰・実践・所属の3つのキーワードから紐解いていくというものである。日本人の大半は信仰を持たないとしているが、仏教や神道などが身近にある。それでは日本人は本当に無宗教と言えるのだろうか。また、信仰を持たないのか。こうした問いを手掛かりとして、日本人の宗教の特徴がまとめられている。
第一章では、この本で重要なキーワードである信仰・実践・所属が登場する。宗教をこれら3つの要素に分けることによって、日本人の宗教の形が見えてくる。従来の宗教は、信仰が核であり、それに実践と所属が付随していると考えられていた。しかし、実践と所属は必ずしも信仰の中に含まれているというわけではなく、信仰なき宗教という言葉が登場する。この言葉が日本人の宗教観はどのようなものかを明らかにする際のポイントになっている。
 このキーワードの意味を理解するために第二章では、葬式仏教が取り上げられている。この章では、葬式仏教に焦点をあて、宗教には必ずしも信仰が伴わないということが説明されている。第三章では、日本の仏教では檀家制度の下、多くの人が何かしらの宗派に所属しているということなどを例に、信仰が伴わない所属について説明がなされている。
 このように、序盤の章で3つのキーワードについて検討されており、この本を読み始めて早い段階で、日本と他の国の宗教とどこが違うのかがはっきりするため、じれったさがない。その上で続く章では細かい事象にも例を挙げて取り上げていく、という構成になっている。例えば、生活に身近に存在するパワースポットを例にあげて、日本の新宗教の特徴を他の宗教の特徴と比べて分析するなど、宗教に特別詳しくなかったとしても理解しやすい話が多い。タイトルこそ宗教と日本人とあるが、序盤ではイスラムやアメリカの協会離れについても言及されており、広く宗教について知ることができる一冊でもあると思う。一見共通点がなさそうな外国の宗教と日本の新宗教の共通点についても述べてあった。
 本書は、日本の宗教について興味があった私にとって考え方が非常に参考になった。漠然と日本の宗教は他の国と性質が異なる気はするが、何が違うのだろうという疑問を持っていた私にとって、どのような点が異なるかが分かりやすく書かれてあった。日常生活と関わることについても触れており、宗教に興味がない人にとっても読みやすいものとなっている。

執筆 H・T


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