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東京はオリンピックによって作られた?

川辺兼一(2018)『東京オリンピックと東京改造 交通インフラから読み解く』 光文社新書



 

 本書は、2020年(新型コロナウイルス感染症の拡大 の影響で2021年に延期)に行われる東京オリンピックによってどのように東京を改造していくのか、過去に行われた1964年の東京オリンピックによって変化した東京を例にどのようなことが行われたかを論じている。
 皆さんは2020年と聞いて何を想像するだろうか。多くの人は、東京でオリンピックが開催される年であると回答するだろう。多くの人々が考える通り、2020年は、56年ぶり に日本の首都東京でオリンピックが開催される。
 今でこそ、鉄道網、道路(一般道や高速道路)、そして空港などのインフラが非常に整備されている が、1964年のオリンピックが開催される以前は、地下鉄も現在と比較して少なく都電ばかり走っており 、高速道路や新幹線は開通していなかった。オリンピックが開催されることによって、東京は大規模なインフラの整備が必要となった。その理由として全国、特に東京は人口が爆発的に増加し都市機能の維持が難しくなりオリンピックを開催することによる受け皿が不足したことがあげられると筆者は論じている(本書P81 R7-9)。 
 また、人口が急激に増加したことにより自動車の所有率が上昇し、地上には都電と多くの自動車が交差することにより、交通渋滞が頻発するようになった。このことにより、都電を廃止し廃止の区間の地下に地下鉄を新たに敷設。道路の拡張と道路の交わりを少なくするために、道路をオーバーパス・アンダーパスさせることで、渋滞を解消し移動を楽にしようとしたのである。
 筆者は、第1章で1964年にオリンピックが開催されるまでに行われた大規模なインフラ整備。第2章でオリンピックとレガシー(遺産)、ここでは、近年行われたオリンピックによってできた負の遺産。第3章で、本来であれば最初の東京開催であったが、開催する場所が正式に決定していないことと戦争による影響で開催することができず幻と化した1940年のこと。第4章で初開催となる1964年大会のこと。第5、6章で、2020年の東京オリンピックとこれからの東京について論じている。 
 1964年に東京オリンピックによって、交通インフラが整備され、上記でも述べた通り、現在の東京は交通インフラが整備されており、交通網が発達しているが、都市基盤や個通インフラの整備状況などをみると、「アンバランス」で「歪み」があると筆者は論じている(P95 R7-8)。
 なぜそう言えるか、代表例として交通インフラがあげられる。
 筆者は、「電車で移動するにはすこぶる便利なのに、自動車で移動するにはあまりにも不便だ」と述べている(P99 R12-13)
 この本を読むまでは、東京は一番発達しているのではないかと私は考えていた。
 最後に、結果論になってしまうが2020年に開催される予定だったオリンピックは、新型コロナウイルスの影響もあり、1年の延期を強いられ、新国立競技場も負の遺産になってしまうのではないかと私は考える。例として、2008年に開催された北京オリンピックのメインスタジアムが、開催以降使用されておらず、廃墟と化しているからだ。絶対に負の遺産になるかと言われれば、そうではないが、今後どのようにして維持していくのかが問題になると私は考えた。
 1964年のオリンピックは、比較的成功したといわれているが、今回オリンピックはどうだろうか。少なくとも成功とは言えなかっただろう。当初は観客動員数を制限しながら有観客で開催する予定であったが、国民の批判もあり、開催が危ぶまれた。結局のところ無観客で開催されたが、損失は計り知れないだろう。新たに整備されるはずであった交通インフラも、大打撃を受けたに違いないと私は考える。 
(ビックボス)

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