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  • ATC Journal

    • 26本

    龍谷大学社会学部・椿原ゼミによる読書案内とエッセイ。

最近の記事

黒人の身体能力は生まれつきなのか。

紹介書籍 『人種とスポーツ 黒人は本当に速く強いのか』 川島浩平(2012) 中公新書 多くの人は黒人について運動能力が高く、走りやジャンプ力があると思っているのではないでしょうか。最近では東京オリンピックがあり、陸上やバスケなどでの黒人選手の活躍が記憶に新しいと思います。しかし、水泳と言うとどうでしょう。あまり黒人選手が水泳で活躍しているところや出場しているところを見たことないはずです。本書は黒人の身体能力は生まれつき優れている」という主張を次の二つの点から再検討すること

    • スポーツ都市戦略

      紹介書籍 『スポーツ都市戦略』 学芸出版社 原田宗彦 本書では、都市戦略という視点から、エンターテインメント装置としてのプロスポーツの存在や、大規模スポーツイベントが誘致できる施設を持つことの重要性を指摘するとともに、住民の健康的な生活習慣を誘発するまちづくりや、地域の隠れた資源であるアウトドアスポーツを活用した地域の活性化について論じている。(p4) 第1章ではスポーツが「アマチュアイズム」から「ビジネスイズム」に変化した点に着目しスポーツが都市との関係に大きな影響を及

      • 東京はオリンピックによって作られた?

        川辺兼一(2018)『東京オリンピックと東京改造 交通インフラから読み解く』 光文社新書   本書は、2020年(新型コロナウイルス感染症の拡大 の影響で2021年に延期)に行われる東京オリンピックによってどのように東京を改造していくのか、過去に行われた1964年の東京オリンピックによって変化した東京を例にどのようなことが行われたかを論じている。 皆さんは2020年と聞いて何を想像するだろうか。多くの人は、東京でオリンピックが開催される年であると回答するだろう。多くの

        • 寛容をめぐる一人の清教徒の生き様

          〔紹介書籍〕森本あんり(2020)『不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学』新潮選書.  本稿で紹介する書籍(以下、本書)は、アメリカにおける異文化との共存の実現にはいかなる背景が存在するのか、そして寛容はいかにして可能なのかという議題を、ロジャー・ウィリアムズという一人の清教徒の人生に焦点を当てて論じている。  そもそも、〈寛容〉がどのような概念なのか?一般的に日本語においては、他者の言動を広い心で受け入れる、欠点や過失を厳しく責めない、という意味で用いられる[1]。し

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          流言とデマとは何なのか

          広井脩(2001)『流言とデマの社会学』文藝春秋 流言とは、辞書的には噂とかデマと同義とされる。人から人へと伝えられる話の中で、無根拠性や無責任性の目立つものが流言とされてきた。造言飛語など明らかなデマを意味する言葉もある。 本書では、流言の特徴として5つの特徴があげられている。1つは、人から人へと伝えられる情報であること。2つ目は、正々堂々と表明されるというより秘密の色彩を帯びていること。3つ目は、事実の確認なしに語られること。4つ目は、その情報の内容が次第にゆがめら

          流言とデマとは何なのか

          ライシテは、フランス独自の概念にあらず

          〔紹介書籍〕ボベロ、ジャン(2009)『フランスにおける脱宗教性の歴史』三浦信孝・伊達聖伸 訳、白水社文庫クセジュ.  〈ライシテ〉とは何なのか?それについて、しばしばムスリマのスカーフ問題と絡めて、信教の自由の抑圧という観点から批判的な論調で語られ、あるいは「フランス独特の厳格な政教分離」と形容される場合がある[1]。しかし本書によれば、ライシテは本来、教会と国家が協力関係になることを防止し、市民の自由と権利を保障すること、宗教についていえばむしろ信教の自由を確立すること

          ライシテは、フランス独自の概念にあらず