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真逆のスタート

私はいま、犬のしごとをしています。 


動物にかかわる仕事がしたいと思っていた幼少期。犬の殺処分の現状と捨てられてしまう理由を知って、数ある中からこのしごとを選びました。



そんな私が犬のことを何もしらなかった頃
初めて触れた「犬のしつけ」


『良いことをしたら褒めて、いけないことをしたら叱る』
そうやって『気持ちをぶつけ合いながら信頼関係を築いていく』


というものでした。




当時の犬たちに実際に教えていたことは


人より前を歩いてはいけない
人の隣について歩かなければいけない
人のモノを食べてはいけない
執着してはいけない
人と同じベッドで寝かせてはいけない
人の話を無視してはいけない
指示には従わなければいけない
勝手なことをしてはいけない
人の手に歯を当ててはいけない
反発抵抗してはいけない
吠えてはいけない
逃げてはいけない



というようなことです。





そしてそれを教えるために


故意に仰向けに抱えて暴れても押さえつづける
圧をかけながら詰め寄る
怒声をあびせる
口(マズル)をつかむ
目を見ながら叱る
大きな音をたてる
チョークカラーなどを使う
首にショックを与えるようにリードを引っ張る

それらよりも明白な"力"を向ける

ということをしていました。



たしかに犬たちはいうことをきいてくれました。
してはいけないこと、しなければいけないことを理解してくれたかのように見えました。

まるで信頼関係があるかのように、犬が想いに応えてくれたかのように感じていたのです。




でもそうじゃない。


そこにあるのは痛みや不安、恐怖によるただの支配です。



私にそれを気づかせてくれたのは
なによりも大切だったはずの愛犬です。



とても苦しかったし、苦しめていました。
後悔がないとはいえません。


時代の変化とともに、こういった考え方や"力"を使った方法というのは選ばれにくくなってきています。ですが、今でもあるのです。文化のように当たり前のごとく、私たちの身近に。



ここで取り上げているような「犬のしつけ」以外にも、犬を傷つけたり追い詰めたり苦しめるようなことというのはあります。

誰もが当事者になり得る可能性を持っています。知らず知らずに、必要なことだから、愛犬のためを想ってと、いつの間にか当事者になっているかもしれません。



今の私があるのは当時の未熟だった私に付き合ってくれた犬たちと支えてくれた先輩方、そして何よりも愛犬のおかげです。

こんな経験をしたからこそ、それによって引き起こされることを知っているからこそ
こんな経験をする人や犬を1人でも1頭でも減らせるように、発信していこうと思っています。




"力"を使う必要はありません。

上下関係を築いたり、あれこれいう必要もありません。それは決して、やりたい放題させていいとか、犬のいいなりになるということではなく。


今の考え方や方法を理解するまでは、私自身どこかで必要だと感じていました。でもそれは単純に私が未熟なだけ、知らなかっただけです。

実際にきちんと理解してからは、やっぱり必要だと感じたことはありません。犬と共生していく上で必要なのは犬を理解すること、相互のコミュニケーションをとることです。



今の私は、犬の言葉(ボディランゲージ)や感情、犬の選択や考える力、犬であることを大切にしながら、動物福祉・応用行動分析学・科学に基づく方法で犬とのより良い暮らしのお手伝いをしています。


そしてトレーニング以前に
豊かな日々の生活と心身の健康が基盤としてあることが大切だと考えています。


はじまりは真逆でした。


でも、これがいまの私です。
私のしごとの考え方であり、1人の愛犬家として大切にしていることです。

愛犬との穏やかな日々は何より私の幸せなのです。


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