僕の BAR としての原風景(2)
それにしても、
毎回「砂糖水」ではどうにも限界がある(当たり前だって(笑。)
意を決して、
親に抗議をしてみる健吾君。
さすがに不憫に思ったのか、
とある夏の終わりの秋口に、
母親が自ら葡萄を絞って、それを瓶に入れて用意してくれました。
こっちは本物の「自家製ジュース」です。
やった。
これでなんとか格好がつく。
早速、当時よく遊んでもらっていた、ご近所の一年歳上の「シロカワ君(仮名)」を呼び出し、
(ちなみにこのシロカワ君。体力一本やりの僕と違って、頭脳明晰、成績優秀で、よく宿題などをみてもらっていました。ただ、運動神経はいまひとつ・・・。)
キャッチボールもそこそこに切り上げ、
「今日は特別な飲み物があるんだ。」
と、自慢げにその「自家製葡萄ジュース」を振る舞うのでした。
「へえ、美味しいね!!」
この声が聞きたかったのだ。
体裁作りではない、心の底からの賞賛。
嬉しい。
ところが、
飲んでいるうちに、シロカワ君の顔色がだんだん変わっていくのがわかった。
「あれ?何だかおかしいな??フラフラしてきた。」
「大丈夫??風邪でもひいてるんじゃない??」
「いや、そんなことはないんだけど・・・。」
「キャッチボールすれば治るかもよ。おもてへ出よう。」
「う〜ん。」
渋るシロカワ君を無理やり連れ出し、キャッチボールを始める僕。
何球目かを投げた球が、地面すれすれのワンバウンドに。
「あ痛!!」
地面とボールの間に見事に指を挟んだシロカワ君。
野球チームで常にレギュラーの僕からすると、一体何がどうなったらそんな補給方法になるのかさっぱり分からないが、相当痛そうな様子。
あまりに気の毒なので、キャッチボールはそこで中断して、いったん家へ戻り、またまた「自家製葡萄ジュース」を振る舞うことにしました。
「やっぱりおかしいよ。だってさっきもフラフラだったし。」
己の運動神経のなさを棚に上げて、何を言ってるんだこいつはと思いつつ、
「大丈夫だよ。これ飲めば治るよ。」
無理強いする強引なマスター。
みるみる赤く膨れ上がる指先。
「駄目だ。やっぱ、今日俺帰るわ・・・。」
もう、お判りの方も多いと思います。
「自家製葡萄ジュース」??
それ、お酒に変わりますよね(笑。
母親も知識が浅かったと思います。
子供には(大人にも?)飲んではならないものを振る舞っていたわけです。
そんなこんなで、
初めての本格的な BAR のお客さんを、ベロベロにして帰してしまった店主。
後日、そこのお母さんからは「二度と健吾君と遊んではいけません!!」
とお怒りを買ってしまうのでした。
当たり前ですよね。
酔っ払った上に、骨折までさせられて息子が帰ってきたんですから。
本当にすみませんでした。
でも、この時、僕は若輩バーテンダーとして早々に学んだのでした。
「お酒には強い人と、弱い人がいる。」ということを。
だって、僕は何ともなかったんだもの(笑。
年末ですね。
宴会なども増えると思います。
飲み慣れてない方はくれぐれも気をつけて。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
年内最終投稿です。皆様良いお年を!!
お待ちしております。
High and dry (Cover) / RF Relation
Timeless
2011
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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