2022/01/28(金)

米原万里の書評集。毎度の事ながら著者の博覧強記ぶりに脱帽。解説にて井上ひさしが

賛成するかどうかは読者の自由であるが、とにかくすぐれた書評家というものは、いま読み進めている書物と自分の思想や知識をたえず混ぜ合わせ爆発させて、その末にこれまでになかった知恵を産み出す勤勉な創作家なのだ。

打ちのめされるようなすごい本:解説より

と書いていたけれど、本当にその通りだと思う。

小説でも評論でもエッセイでもなんでも、「背景に関する知識が私にもっとあれば、きっともっとこの本を楽しめるのに」「この本の面白さをまだ分かりきれてない自分が情けない」と思うことがしばしば。時代を現代と異にするものや、海外の作品に関しては特にそう。もちろん、何の前知識も無しに楽しめる作品もあって、そういう作品も素晴らしいと思うし、あえて何も知識を入れずに触れようと思うこともあるけれど、でも、絵画でも音楽でも映画でも本でも、ある程度のベースとなる知識がある方が楽しめるものが圧倒的に多いように思う。
米原万里はその最たるお手本。打てば響く、ならぬ、読めば響く? 著者が評する本自体もさる事ながら、これだけの本をここまで楽しみ尽くせることに、ただただ尊敬の念を抱くのである。

と、同時に。
こうしてお手本としたい人物が面白いと言う本を追いかけることはもちろん楽しいけれど、己自身の思考を育てねばとも思う。地図を書いて作戦を練っただけで満足しているようでは冒険家とは言えない。とにかく、思想の海に漕ぎ出せねばとせき立てられる。波に翻弄されて船酔いしてげーげー吐いて、それでも流れ着いた島には新たな発見があるだろう。兎にも角にも、広大な海に立ち向かうことが必要。

思想の海では命までは取られんだろう、と思ったけれど。わからん。取られるかも知れん。

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