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薬局薬剤師のお仕事③ 調剤

「薬局薬剤師のお仕事」シリーズ。第三回は「調剤」です。



第一回はコチラ。



ついに来ました。
患者さんが考える、「薬剤師と言えばこの業務」堂々の第一位。

調剤。

医師の発行した処方せんの通りに、薬を取り揃える業務です。



でも実は、薬剤師はいま、ほとんど調剤をしていません



えっ?


衝撃的ですよね。

その原因には、決して逆らうことのできない「社会の流れ」があるのです。


いろいろな「調剤」


処方せんの指示通りに薬を取り揃える調剤業務ですが、
一口に「調剤」と言っても様々あります。

一番わかりやすく、また頻度も多いのが「錠剤」の調剤です。
処方せんに書いてある名前の薬を、棚や引き出しから取り出すだけ。
簡単です。小学生でもできます。

また小児科や精神科の近くだと目立つのが「散剤(粉薬)」の調剤です。
これは粉を計って、自動分包機という機械で作成します。
少しテクニックが必要です。

粉薬を作るための自動分包機


皮膚科の近くだと「外用塗布剤(塗り薬)」の調剤が発生します。
保湿剤と痒み止めを混合して使う医師が多く、チューブから薬を出して混ぜ、それを軟膏ツボに詰める作業には、慣れが必要です。

その他にも「水剤(シロップ剤)」「点眼剤」「点鼻薬」など多種多様な薬を、指示に従ってお渡し出来る形にする作業が調剤です。

また調剤において忘れてはならないのが「一包化」です。
これは主に高齢の方や、手が不自由な方のために、予め薬を「朝」「昼」「夕」といった袋に全て入れてお渡しすることです。

かなりの頻度で発生するこの業務、結構時間が掛かります。
一人の患者さんで30分掛かるケースもザラです。
薬をシートから何百錠も一気にプチプチし続けるので、指から血が出ます。

「俺の前に待っているのが婆さんひとりだけなのに、何でこんなに待たされるんだ!?」

というときの薬剤師は大抵、調剤室の中で黙々と一包化しています。


「モノ」から「ヒト」へ


しかし冒頭に書きましたように、現在薬剤師はほぼ調剤をしていません

調剤業務の多くを占める「錠剤の取り揃え」や「軟膏チューブの取り揃え」は、事務員さんがしていいことになったためです。


これが言われるようになったのは比較的最近で、平成31年のこと。
以下の条件に該当すれば、薬剤師以外の者が調剤を行うことができます。

薬生総発 0402 第1号(厚生労働省)より抜粋

簡単に言えば、「医薬品を取り揃える行為に限れば、今後は事務員さんがやっていいですよ」ということです。

もちろん、事務員さんが調剤したとしても、その責任は薬剤師が負いますので、ご安心を。
患者さんにお渡しする前に必ず薬剤師による内容の確認は入ります。

また、塗り薬を混ぜる行為や、粉薬、シロップ剤の調製などは、現在も薬剤師が行わなくてはなりません。


この調剤の業務効率化の流れは、

棚から出してくるだけの作業をしている暇があるなら、もっと患者さんの困りごとを解決しなさい

という国からのお達しを意味します。


この頃から「対物業務から対人業務へ」というスローガンが、薬剤師業界にてお題目のように繰り返されて現在に至ります。


でも薬剤師は調剤がお好き


とはいえ、薬剤師の多くが「調剤が好き」です。

やっぱり医薬品に何らかの面白さを感じるから薬剤師になっている部分はあって、医薬品に直接的に関わることのできる調剤は面白いですよ。

患者さんと直接やり取りする「服薬指導」は緊張しますし、トラブルになることも無いとは言えず。

そんなとき、何も言わない医薬品と対峙する時間がちょっとした癒やしになりますね。


ちなみに「薬剤師はほぼ調剤をしていない」と書きましたが、厳密に言えば薬局によりその濃淡は異なります
私の所属する薬局は小児科の近くで、粉薬ばかりが処方されますので、未だに薬剤師が調剤しているケースが多いです。

ただ内科や泌尿器科、整形外科などは、ほとんど全ての調剤が事務員さんに置き換わっているのではないでしょうか。


まとめ


今回は「薬剤師と言えばこの業務」でありながら現在はもうその役目を終えつつある、「調剤」について書きました。

ただ途中で出てきた「対物業務から対人業務へ」というスローガンはまさしくそうあるべきで、薬剤師は「薬 "を" 作る人」ではなく「薬 "で" 患者を救ける人」でなければなりません。

今後も医療の一端を担う存在として、その役割を全うしていきます。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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