見出し画像

第109回歴博フォーラム「死者と生者の共同性 -葬送墓制の再構築を目指してー」二日目の感想です(誤記修正あり)

※一部の登壇者の方、および発表内で取り上げられた方のお名前に当初誤記がありましたこと、心よりお詫び申し上げます

■はじめに

今日は、所用で午前のセッションのみの参加でした

午後の「縁なき方向へすすむ墓」のセッションも、質疑応答も。後ろ髪を引かれる思いで会場を後にしました。無事これらのセッションも含めて、フォーラムが終わったのなら何よりです

関係者の皆さま&会場に行かれた皆さま
本当にお疲れさまでした

ということで昨日に続いて二日目午前のセッション「縁なき人々の追悼」についての感想とコメントになります。わたしなりに感じたこのセッションのキーワードは

〇個人化
〇貧困
〇無縁化の質

3つ。昨日よりも、より、無縁化について考えさせられることの多い内容でした

■各発表について

①無縁社会の3つの方向と共同性のゆくえ(関西大学・槇村久子さん)

槇村さんはもとともお墓の研究を長年されてきたそうです。その槇村さんのキーワードは「共同性」

これまでイエやムラを単位としていたお墓(墓制)が変容しつつあり。その変容をお墓を生前に自ら準備する形態の「共同墓(共同の納骨堂や樹木葬など)」と無縁者の遺骨を行政が関与して納めるタイプの「共同墓」の二つの例を引き合いに、社会の共同性が変質しているという観点よりお話をして下さいました

もちろん、行政が関与する無縁墓はまだまだ納められる遺骨も全体から観れば少数。しかしながら核家族化や高齢化の進展。未婚や子供を作らないことを通じたシングル世帯の増加などから、無縁を含めて行政が葬送や墓制、また個人のエンディングに関わる流れは無視し得ないものであるとのご指摘は、この後の方々の発表ともリンクする、とても興味深いものでした

②近親者なき人の埋葬と助葬(国立歴史民俗博物館・山田慎也さん)

①に続いてシングル世帯など、近親者なき人の埋葬(墓制)をより掘り下げてお話をして下さったのが山田さんです

行政が関与する葬送のケースを引き合いに、近親者がいるいないに関わらず、身元不明の死亡人として扱われるケースの増加やそこへの各自治体の対応事例。また民間の立場でこうした方々の葬送を助ける「助葬」について、その過去を紐解きながら解説をして下さいました

なおこうした行政による葬送に繋がるケースはやはり孤立、貧困、そして困窮と結びつきがあり。これらの人々の葬送や死を社会としてどのように扱っていくか。その議論の中で生まれる認識をどう社会の中で共有していくかは、確かにこれからの課題であり。特にグリーフサポートに関わるものとしても無視できない点であると思いました

③送骨と寺院(大正大学・村上興匡さん)

最後の村上さんは僧籍、つまりお坊さまでもある方

その村上さんが主に取り上げたのが「送骨」のお話でした。送骨とは遺骨を寺に送って埋葬、つまり永代供養をしてもらうシステムのことです。元々は無縁者の遺骨を受け入れるために始まったものですが、現在はその枠を超えた利用がなされており。すでにいくつかのお寺さんがこれを受け入れるようになってきています

村上さんがご指摘されたのはそうしたシステムの善し悪しではなく。これが「死の個人化」と密接な関係にあること。つまり死が個人の課題や問題となることで、お墓や弔いが持っていた役割が急速に失われつつあることでした。こうしたことは当然ながらお寺の存続にも影響を与え、墓じまい、寺じまいなどはその目に見えて現れた現実と言えます

もう一つ村上さんと司会をされた森謙二(茨城キリスト教大学)さんのご指摘から自分がハっとさせられたのは、こうした継承が薄れることにより、年忌法要や祖先崇拝といったシステムや思想が、いずれ日本人の中から消えて無くるであろうということでした。特に年忌法要の消滅は、このシステムが持つグリーフサポートとしての機能の消失をも意味しており。ではそうなったときに、遺された方々の死の喪失に伴う苦しみや悲しみなどの様々な想いはどこで癒され。そして死者はどのように生者の中で受容されていくのかという、非常に重い課題を投げかけられたように感じました

■二日目のまとめ

このセッションの最後で森さんが、無縁化の質も多様であるというお話をされていました

たとえば近親者がいても無縁を選ぶ方もいれば、さまざまな事情から無縁を選ばざるを得ない方もいる。無縁を選び埋葬方法をも自分で選べる方もいれば、そうした選択と関係なく行政による葬送に繋がらざるを得ない方もいる。よって「無縁」の一言で事情や状況を語ることに、もはや意味は無いのかもしれません

その一方で、無縁となる方は現に増えているし。今後はより一層増えていくのも明らかです

そうした中で、葬送や墓制。お寺さん。そしてグリーフサポートはどうなっていくのか。なにが求められ、応えていかなくてはいけないのかを考え、そhして実践してことは、なかなか壮大なチャレンジであると感じさせられました

そしてこうした実態や展開は、こういうイベントに出ないと得られない気付きでもあって。その点は本当に今回このフォーラムに参加をして良かったなと感じている点です

ですので次回は、もっとたくさんの周りの方々に、一緒に行こうよ!と声を掛けてみたいと思っています。この感想を読んで、興味や関心を持って行ってみようと思って下さる方がいたら、本当に嬉しいです

そしてなによりも…
今日の午後のセッション、参加したかっぞぉぉぉぉ!!!

以上です。長文お付き合いいただき、ありがとうございました

デス・カフェ@東京主催。ヒトやペットの区別をしない、死別・喪失のサポート、グリーフケアのお話をしています