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考えよう ~グリーフとは~

1.グリーフ=家族との死別か?

 私は「あめのちはれ」が主催する「わかちあいの会」を通じて「グリーフケア」という言葉に初めて出会いました。
 その際、私が家族との死別を経験したときに感じた悲しみや喪失感、これを「グリーフ」と呼び、そのグリーフを癒すのが「グリーフケア」だと知りました。

 しかし、その後、少し調べると、死別以外の別れ(例えば、離婚)を経験した時も、同じように悲しみや喪失感が起きる場合があり、それも「グリーフ」だと知りました。

 一方で、仮に家族との死別だったとしても、例えば天命を全うし、それを遺族が穏やかに受け入れられた場合、それは「グリーフ」とは呼びづらいとも分かりました。

つまり「グリーフ=家族との死別」では無いようです。
では、グリーフとは何でしょうか?

2.改めてグリーフの定義は?

 Google先生に聞いてみましたが、簡潔な答えには、どうも辿り着けませんでした。原因の一つは、日本人はグリーフとの向き合い方を語らない国民性だから、というのがありそうです。

 長い歴史の中で、グリーフを感じながら生きてきた人々はたくさんいるはずです。だけど、その時に何を感じ、どう生活してきたのか、人に説明したり研究したりする取り組みは、少ないですよね。
 なので、言語化された情報が少ないのだと思います。

 ならばと思い、こちら↓の本を開いてみました。
著 宮林幸江、他「はじめて学ぶグリーフケア第2版」、日本看護協会出版社
 
 この本には以下のように書かれています。

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悲嘆(グリーフ)とは
 重要な愛着の対象を喪失する時、人は強い喪失感を抱き、衝撃、不安、孤独を伴う深い悲しみに見舞われます。特に死別とは、対象との絶対的な別離ですから、もう会えない喪失対象を思い出し恋しく思う「思慕」や、先だった人に「負い目」を感じつつ、もう一方では何とか現実を生き延びる覚悟を整えようとしています。この二者が併存する不安定な心身反応を「悲嘆(グリーフ)」と言います。
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私なりに解釈しますと、この文章には3つのポイントがあると思います。
(1)   愛着が強いほど、失った時の衝撃や負担が大きい
(2)   死別とは最も喪失感が大きくなる別れ方
(3)   喪失の過去と生きるべき現実への想いの揺れ動きがある

3.グリーフの正体を知る3つのポイント

1つずつ見て行きましょう。

(1)  愛着が強いほど、失った時の衝撃や負担が大きい
 この書籍の説明では、愛着を抱く対象が「人」なのか「ペット」なのか「モノ」なのかに言及されていません。つまり、人も、ペットも、モノもすべて含むのだろうと思います。愛着の対象が何かはともかく、その愛着の強さが重要なのでしょう。愛着が強い分、失ったときの衝撃が大きく、その落差が激しいほど、グリーフを感じるように思います。

(2)  死別とは最も喪失感が大きくなる別れ方
 仮に、愛着の対象と別れたとしても、その対象が元気で生きていると思えれば(そのモノが他の誰かに大切にされていると思えれば)、まだ救われるような気がします。しかし「死別」の場合は、本当にすっかり失ってしまい二度と戻ることは有りません。
 思慕とは「恋しく思うこと、思い慕うこと」の意味ですが、愛着が強かった分だけ、亡くした時の思慕は深いと思います。グリーフは、必ずしも死別から生まれるものでは無いけれど、死別が一番深い喪失感を抱きやすいのだろうと思います。

(3)  喪失の過去と生きるべき現実への想いの揺れ動きがある
 悲しみや喪失感のことだけを「グリーフ」と呼ぶのかと思っていましたが、この書籍の定義によると、違うようですね。
「何とか現実を生き延びる覚悟」を整えようとしているとも書かれています。ここ重要です。
 確かに私たち人間は、絶望の中でも立ち上がる力を持っています。「簡単には立ち上がれない。でも前を向いて立ち上がらなければ。いや、しかし、自分には無理だ。いやいや、いつまでも止まっていられない。」誰だって、こんな感じの揺れ動きが生じたりしますよね。この揺れ動きも含めて、グリーフなのですね。

4.揺れ動きのイメージはシーソーか?天秤か?

 書籍では、この相反するような動きをシーソーや天秤に例えています。片方に「喪失思考」もう片方に「現実志向」があり、絶えず揺れ動いて変化し、とらえどころがない、と書かれています。


 しかし、私が思うに、シーソーや天秤には安定感があり過ぎます。シーソーや天秤は、上下に動くだけで左右や回転の動きはありませんし、上下の揺れ幅も小さいですし、それに自ら動きをコントロールするイメージがあります。

 だけど、実際のグリーフは、もっと不規則で、不安定で、大きな動きではないでしょうか。例えるなら、天井から吊るされた「やじろべえ」のおもちゃかな、と思います。横の棒が長いほど安定感が無くなり、小さな風でもすぐにフラフラしますよね。放っておくと向きが変わるし、動き方にも規則性がありません。心の変化は、こんな感じかなと思います。

5.まとめ

 今回、書籍の記述を参考に、3つのポイントから、グリーフとは何かを考えました。
 個人的には、単なる悲しみや喪失感のことではなく、「過去と現実の揺れ動き」があるというのが新たな視点でした。また、この揺れ動きを天井から吊るされたやしろべえに例えることで、すごく理解が深まりました。

 確かに「わかちあいの会」に来る人は、皆、一歩前に進む力を持ちたいと思っている人が多いように思います。グリーフケアとは、そういう前向きな気持ちをサポートするという側面もあるように思います。

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