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凸版印刷が、100年以上蓄積した「印刷テクノロジー」で目指すサステナブルな世界

今でこそ、当たり前の様にSDGsや脱炭素といった言葉が使われ、そうした取り組みが盛んに行われているが、今から20年以上前から環境保全に配慮した企業活動に積極的に取り組んできた企業があります。

印刷技術で国内外のものづくりを支えてきた凸版印刷株式会社。


「1990年代に、世界的に地球環境保全が叫ばれていた当時に地球環境保全活動の基本理念を定めました。「凸版印刷地球環境宣言」というもので、今は「トッパングループ地球環境宣言」として改定し、それをもとに環境保全活動を推進してきました。」と、凸版印刷でパッケージ製品の環境負荷削減を担うパッケージソリューション事業部サステナブルパッケージセンターの髙澤氏は歴史の深さを語ります。

今回の「脱炭素の今」では、凸版印刷が取り組む脱炭素活動の一つであるサステナブルパッケージからその価値を見つめます。

凸版印刷では、LCA (Life Cycle Assessment; ライフサイクルアセスメント)を用いて パッケージ製品の環境負荷を見える化する取り組みを行っています。

LCAとは
原材料(資源採取から原材料製造)から製品の製造・使用・リサイクル・廃棄など、製品のライフサイクル全体にわたって、投入する資源や排出する環境負荷を定量的に評価する仕組み。
凸版印刷では、パッケージのライフサイクルにおけるCO₂排出量を対象に定量評価を行う。

いかに、環境配慮型のパッケージを通してサステナブルと向き合おうとしているのか、前述のパッケージソリューション事業部サステナブルパッケージセンターSPC戦略チームの髙澤氏とパッケージソリューション事業部マーケティング戦略部DX戦略チームの福武氏に伺いました。

髙澤:「私たちは、「トッパングループ地球環境宣言」を基本理念として行う環境活動の一つとして、環境配慮型製品の開発などを推進する「エコクリエィティブ活動」を進めております。現在私が所属している部門で行っている、LCAによるパッケージのCO₂排出量の見える化もその一つです。
1998年にこの手法を確立して以降、LCAを用いて算出したCO₂排出量により、提供するパッケージ製品の環境負荷を定量的に評価し、根拠に基づいた環境配慮提案を行うことで、お客さまの事業のCO₂排出量削減に貢献してきました。」

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「取り組みを開始した当初と比較すると、現在は環境問題含めて持続可能な社会に向けた機運が比べ物にならないくらい高まっていると思います。その中でも、脱炭素は各国の目標として、定められていますし、企業としても喫緊の課題となっています。

そうした背景から、企業の取り組みは、自社の排出にとどまらず、Scope3を含めたサプライチェーン全体での排出量にも目が向けられるようになっています。
一方で、我々が提供しているパッケージは、どの業界でも、必ずと言っていいほど使われています。産業界にとって必需品であるパッケージを通して環境負荷削減につなげていくことは、世界的に機運が高まっている脱炭素社会の中での取り組みにおいても不可欠なものの一つであると考えていますし、LCAに取組むことは意義のあることだと思っています。」

ー食品から日用品、化粧品パッケージとあらゆる業界に対応し、環境負荷削減につながるサステナブルパッケージを開発されていますがその技術力の根幹はどこにあるのでしょうか?ー

福武:「根底には1900年の創業以来、120年以上にわたるパッケージ開発で培ってきた「印刷テクノロジー」が大きいと思います。
その上で、生活者にとって使いやすい、また内容物を生産されるメーカーさんにとっても使いやすいという視点、さらに昨今の環境負荷削減を加えたあらゆる視点で総合的に最適化されたパッケージという開発の指標があります。
そのような幅広い視点で市場を見る力というのも、開発力につながっていっているのだと思っています。」

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ー実際にどれくらいの削減効果があるのでしょうか?ー

髙澤:「弊社では、アルミ箔からの置き換えでCO₂排出量削減を実現する、透明蒸着バリアフィルムのトップブランド 「GL BARRIER」を活用したパッケージをグローバル市場へ展開していますが、その「GL BARRIER」によるCO₂排出量削減量を例にしますと、アルミ箔を用いたパッケージに比べ、レトルト食品パウチとモノマテリアル口栓付き食品パウチだけでも年間約6万3千トンにのぼるCO₂排出量の削減効果があります。
6万3千トンは1世帯が排出する年間のCO₂量の2万3千世帯分になるので、パッケージ製品一つをとっても非常に高い削減効果をもたらすことができていると思います。
これまでは、製品の機能そのものと比べて環境効果は、そこまで関心が高い項目ではなかったのですが、社会変化に伴って、我々も環境保全に寄与する製品をアピールするようになっています。」

髙澤:「また、そのような外部的な環境もあって、社内でもLCAマインドの浸透を図っています。
これまでLCAの考え方は、私たち専任部隊の専売特許だったのですが、これを開発・営業部門などに広げることで、製品開発活動や日々の提案活動にCO₂排出量の指標を取り入れられるよう体制を整えています。
そうすることによって、今まで訴求していた使いやすさや機能の高さに加えて、常に根拠を持った環境指標をご提示することで、お客さまの持続可能な事業の発展にどう貢献できるか、分かりやすい提案に繋げることができます。」

環境価値と利便性を同時に追求する


ー環境面だけでなく生活面も意識していて、利便性も追求したパッケージが沢山開発されていますが実際の売上にも貢献されているのでしょうか?ー

髙澤:「パッケージの変更は主としてお客様商品のリニューアルのタイミングで行うので、パッケージ自体の効果を抽出することは中々難しいのですが、貢献できていると信じています。

例えば、弊社の透明バリアフィルム「GL BARRIER」を使用することで、今まで湯煎で温めていたレトルト食品がレンジアップできるようになり、使いやすさが格段に向上して製品そのものの付加価値になっている事例もあります。」

髙澤:「また、今までパッケージに求められていたのは、主に機能面でしたが、最近はサステナビリティの視点が採用判断の一つの指標にもなっていると感じています。パッケージの素材一つとっても、これまでは石化由来のバージン材100%だったものを再生材に替えられないかとか、プラスチックを紙に替えられないかとか、CO₂排出量を削減できる素材に替えられないかとか、そういった問い合わせはここ数年で増えている印象です。

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パッケージの機能によってお客さまの商品価値を向上することはもちろんですが、これからはサステナビリティという視点が、より重要な価値になってくると考えます。
使用者にとっての価値、採用いただく企業にとっての価値、さらに、地球環境にとっての価値と、それら三つの価値をバランス良く備えるソリューションをこれからも目指していきます。」

ーパッケージでのDXの取り組みもされていますが、具体的にはどういったものでしょうか?ー

福武:「凸版印刷として培ってきたオペレーションノウハウとデジタルを掛け合わせていくことで事業にしていくというのが会社全体のコンセプトです。
例えば、パッケージ経由のデジタルキャンペーンの取り組みを一つご紹介すると、パッケージ上のコードを読み取って、ポイントを積み立てて応募できる仕組みにおいては、無数のパッケージの中で一つ“固有のものです”というのを決めてあげないといけません。
そうしないと、何回も何回も応募できてしまうので、何個あるかわからないパッケージに固有のコードを付与するために、個体識別技術の開発をおこなっています。

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具体的には、今あるやり方は、昔からの手法ですが、ナンバーを書いたり、ラベルの下にお客様で打ち込むためのナンバーを付けていったりという作業になりますが、そうではなくて印刷をした中で一見同じように見えて全部違う、「印刷指紋」という少しずつ違う部分を識別する技術を用いた、新たなデジタルの取り組みをお客さまとおこなっています。

他にもパッケージではないですが、包装資材をお届けするお客さまの製造現場に対し、直接物作りにおけるDXの支援もおこなっています。製造現場は、紙に溢れている環境が多々あるのでペーパーレスを目指して、デジタル化できるサービスを提供させていただいたり、効率的に生産するための問題点や課題を見つけて解決するコンサルテーションを含めて支援していたりします。」

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ーご一緒されたお客様からはどのようなお声をいただいているのですか?ー

福武:「サービスを導入したことで作業が効率的になった、出社しないでも仕事ができるようになった、などといった声を沢山いただいております。ただ、この先は事業の流れ全体に対しどう貢献できるのかが問われていくと思いますので、一つのペーパーレスで終わるのではなく包括的な貢献ができるようなご支援をしていきたいと思っております。

お客さまと接していく中で、ニーズを感じ取っていくというのが我々の会社の強みでもあるので、ご一緒していく中で、サービス化していくことを繰り返ししていくことだと思っています。」

パッケージを作る者の責任として、
使われた後をどうデザインしていくかが課題

ー今後目標とされる2030年に近づいていきますが、どの様な展望をお持ちでしょうか?ー

髙澤:「これからも、使いやすさや内容物の品質保持に配慮しながら、製品のライフサイクル全体での環境負荷を低減するパッケージを追求していく姿勢は変わらないと思います。
その姿勢をもちつつ、当社の中期経営計画で掲げる、2030年までに、当社パッケージのうちのサステナブルパッケージの比率を100%にする、という目標を目指していきます。

一方で、パッケージを作って世に送り出している企業の責任として、使い終えたパッケージの行方をどうデザインするか、具体的には、パッケージ廃棄物の資源循環の確立も、私たちの大きな課題の一つだと考えています。
LCAによる環境負荷の見える化も踏まえながら、今ある資源をどう有効活用していくか。いろいろな企業や自治体の皆さまと連携しながら、取り組みを推進してきたいと思っています。」

取材:株式会社グリッド
https://gridpredict.jp/

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