見出し画像

サブスク時代におけるリミックスの可能性 (後編)


グリッジ株式会社のDaiです。前回は「サブスク時代におけるリミックスの可能性 (前編)」と題して、過去にYouTubeでLo-Fiチャンネルを運営していた時に、世界中から楽曲をサブミット (投稿) してもらうという手法が確立され、結果、数百のさながら「トラックメイカーバンク」のようなものが形成されたというお話をしました (ぜひ前編も読んでくださいね!)。その時はこの「トラックメイカーバンク」が新しい業務においても非常に役立つ財産になって行くとは思ってもいませんでした。今回は「トラックメイカーバンク」を現在いかに活用しているかについても話して行きたいと思います。


リミックスの効用

前編では、「音楽には鮮度があり、リリースして時間が経つと自ずと聴かれる回数は減って行くが、サブスク時代の今、元曲とリミックスされた楽曲とを組み合わせてEPなどの形態で再度リリースする事で、元曲が再度聴かれるチャンスを得られる」というお話をしました。

実際に、アニメ系の楽曲を主に手がけるとあるアーティストの、元曲とリミックス楽曲を組み合わせてリリースさせるという案件の機会に恵まれました。現在この手法はシリーズ化してリリースを続けていますが、最初はリミキサーについては主に紹介という形で海外・国内から参加してもらっていました。

元曲とリミックス楽曲を組み合わせてリリースする事で見えて来たのは、旧曲でもプレイリストインするのが可能だという事です。サブスク時代の今、再生数を伸ばすにはプレイリストインする事が必須と言えるでしょう。しかし一度リリースされた楽曲が時間を経てプレイリストインするというのは、余程の事がない限り簡単には起きない事だと思います。

もう一つの発見は、元曲のアーティストとは異なるジャンル内で活動している、リミキサー側のカルチャーへの訴求が可能になったという事です。これは新規リスナー獲得、そしてそれによる再生数アップへと繋がります。元アーティストの活動ではなかなか考えられなかった、クラブでのDJプレイという実例もありました。そういった現場を通しての新規リスナー獲得の可能性も、ゼロではないのではと考えます。

リミックス楽曲の海外でのクラブDJプレイ

彼らがSNSでシェアしてくれるというのも、この動きの大きなポイントになると思います。新規リスナーの面を押さえるという意味においては、異なるカルチャーへのSNS訴求は非常に有効な手段と言えるでしょう。

「トラックメイカーバンク」について

我々の「トラックメイカーバンク」には、世界各国300名以上のトラックメイカーが属しています。「何かあれば彼らにすぐに声をかけられる」という束があるのは、一からリミキサーにアタックしていく労力を考えれば、非常に心強い資産だと言えます。

とあるリミックス企画で、多ければ多いほどよいという感じで複数のリミキサーが必要となり、「トラックメイカーバンク」のリミキサーに興味ないかの打診のメールを一斉に送りました。そこから地道にやり取りを重ね、原曲のステムを渡し、複数名のリミキサーを確保する事が出来ました。

音楽をリーチさせるための課題

日本は特に権利に厳しい国だなぁと思っています。例えばYouTubeやSNSにアーティストの楽曲をアップロードするのはもちろん本来いけない事ですが、そのことにより見えてくる効用もあるように思えます (決してアップロードを助長する意見ではありません) 。そのアップロードをきっかけに新しくファンになる人も絶対数、と言いいますかかなりの数でいるのではないでしょうか。韓国のBTSはアップロードを逆手に取った策を取っており、それが膨大なファンベースの造成に繋がって行ったように思います。具体的には、彼らの動画や画像が (勝手に) アップロードされた、彼らの「ファンアカウント」がその震源になっているようです。それを良しとし、容認しているBTS側は、かなりの時代の先読みが出来ていたのではないでしょうか。

「アーティストがステムを渡す」という行為は、日本で考えるとなかなかハードルが高くインパクトのある事だと思います。しかし世界を見ると、公開した音源をフリーダウンロードにしその音を使ってで遊んでもらうという行為は、SoundCloudなどでも見かける光景です。このような流れはアーティストとアマチュアのトラックメイカーの距離を縮め、そのやり取り上でファンとはまた違う「コミュニティの形成」が予測されます。アーティストにとってファンはもちろん大事ですが、クリエイター同士の繋がりというものも非常に嬉しいものです。コミュニティの中から将来の大物アーティストが出て来たりしたら、そんな楽しい事はないのではないでしょうか。

SoundCloudの可能性

SoundCloudに関しては、なにもアマチュアの人が音をアップロードして終わりという場ではありません。そこからメジャーデビューに繋がったアーティストも複数います。例えばビリー・アイリッシュが良い例でしょう。その他にもポスト・マローン、カリード、XXXTentacionなど錚々たるメンツがデビュー前にSoundCloudに音を投稿し活用していました。また、プロのアーティストのアカウントもあり、それが活用されているのも特徴で、アマチュアからプロまでがそこを行き来しているというのは見逃せない事実です。常にヒントがたくさん隠された場所だと考えており、SoundCloud発信で何か出来ないか日々考えています。

ビリー・アイリッシュ
ポスト・マローン
カリード

音楽の聴かれ方の変容

音楽は、「聴くもの」から「使ってもらうもの」に変容して来ています。使う先は主にSNS上ですが、それで新規のリーチが広がるのであればどんどん使われるべきです。完成音源でなくとも、リミックス用にデモなどの音源をフリーダウンロード可能にして「使ってもらう」のも、この先を考えると非常に有効な手段だと考えています。そのような意味も含めて、リミックスというものにはとても未来を感じています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?